日誌 2015〜   07〜08年の日誌 、09〜10年の日誌 、10〜12年の日誌13〜14年の日誌

 

青木歯科TOP

 

2020/01/04 土曜日 晴れ

 

2019/10/18 金曜日 雨

 イスムスはもともと長細い一つの根管が年齢とともに二つに分かれていく過程で取り残されてできるとされています。拡大鏡ではなさそうに見えていても顕微鏡で見つかるケースがあります。今日も下顎第二大臼歯の樋状根と近心舌側根の間に残髄があり痛みがあったため#20のKファイルをセック101につけイスムスを拡大して除去したケースと第一小臼歯大きな根尖病巣があり破折の可能性があり、確認のために歯肉をあけてみると根充された二つの根管の間に髪の毛よりも細い線が染め出されていました。破折線かとも思われましたが小さなダイヤモンドチップでなぞるとイスムスだったという二つの症例がありました。根管治療の予後にイスムスが関与している確率が高いと感じた一日でした。

2019/10/13 日曜日 晴れ

 HPは専用ソフトではなく、ワードを使っています。外付けハードディスクのアイコンが出なくなったため、PCに問題あるかもとWindowsを初期化したところ、ワードでHPのデータが開かなくなってしまいました。ワードを開くと右上に出ていた「実行したい作業を入れてください」のところに「html文書を開く」と入力すると読めるようになりました。ITの世界は実に微妙。

2019/10/11 金曜日 晴れ

 日誌を更新しようとするとアップできなくなっていました。5年ごとにサービスが終了し工事が行われたためでした。やっとアップできたと思ったら、今度は検索エンジンから入れなくなってしまいました。いろいろ試したあげく、一つのファイルを除去することで復帰しました。

2019/10/08 火曜日 晴れ

 根の治療に顕微鏡を使うようになって気づいたことが二つあります。一つはすでに治療がなされている根の中に残ったガッタパーチャがなかなか取り除けないこと、二つ目は扁平な歯根には根管と根管の間にイスムスがあり、かなり奥まで連なっていることがあることです。二つとも根の中の細菌を含む汚染物質を取り残すことになり、予後不良の原因になりかねません。扁平な歯根には上顎第一大臼歯近心頬側根、下顎第一大臼歯近心根、上顎小臼歯、下顎側切歯などがあり、これらの歯根の予後不良症例には二根管とそれをつなぐイスムスの存在がありそうです。

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赤いガッタパーチャが残っています。小さな器具で掻き出しています

ほぼ取れました

イスムス上部を拡大し、薬液を入れたところ

マイクロに付属するソニーのハイビジョンカメラで撮影

赤く残っています。マイクロに後付したアイホンのカメラで撮影

イスムスがあります

 

 橘玲著『もっと言ってはいけない』に「ヒトの脳は、直感的には因果律しか理解できないようにつくられているため、あらゆる出来事に無意識のうちに原因と結果の関係を探す。これが、自分にとって不愉快な統計的事実を定義と混同し、それを否定するために経験的事実をブラックスワンとして持ち出す一番の理由だろう」とあります。歯科臨床は統計処理が難しいため定義と混同して因果関係を云々しているケースが少なくないので、ヒトの脳の癖について常に自覚的でなければと思います。

2019/09/15 日曜日 晴れ

 最近若い人に酸蝕症が時々見かけるようになりました。酸蝕症はその名の通り酸によって歯が溶け出している状態ですが、酸味のある食品はすべて歯を溶かすといって過言ではありません。最近出会った中に、梅干し入りのガムを噛みながら仕事をしていたケースがありました。奥歯のかみ合わせのエナメル質が溶け、本来1.5ミリ程度あるエナメル質が0.5ミリ程度になり象牙質の黄色い色が透けて見えるようになっていました。かんきつ類やジュースの類も歯を溶かすに十分な酸度ですので、これらを食べたときには水で洗い流したほうが良いと思います。エナメル質は虫歯に対する鎧の役目を果たしていますが、鎧が薄くなると虫歯はすぐに象牙質→歯髄に達して神経を取る必要が生じます。

2019/08/26 月曜日 曇り

 脳神経外科医の福島孝徳先生が顕微鏡を使って脳外科手術をしている動画をYouTubeで見ることができます。米国から年二回帰国し、2週間毎日23回の手術をしているのだという。5時間から10時間かけて神経や血管に癒着した腫瘍をはがして除去しているのを見ると驚嘆するほかない。たとえ重要なところだけを執刀しているとしても、根管治療や根尖切除術で顕微鏡をのぞく時間に比べると遥かに長い時間顕微鏡を見続けている。今年も愛宕病院で2例の手術をしたようで、今は78歳だと考えると信じられない体力と気力。しかも、手術の後でその日の手術についての反省点などをノートに書き留めている。それだけはまねできるので、1日の仕事で気づいたことを手帳に書き留めるようにしてきた内容をもう少し詳細に書き残そうと思っています。

2019/08/24 土曜日 曇りのち雨

 根の治療に使う薬(根管貼薬剤)をFC(フォルマリンクレゾール)から水酸化カルシウムに変えてから20年ほどになります。たぶん1999年に出版された『歯界展望別冊 NEWエンドドンティックス』を読んでからだと思います。当時、水酸化カルシウムを根の治療に使うブームを作った北欧の歯科医Tronstadと岐阜歯科大の岩山幸雄教授(記憶違いかも)との対談があり、岩山教授の「根管内に残ってしまう水酸化カルシウムは根管の封鎖の邪魔にならないか」との問いに、「問題ない」と答えていたので、少量の水酸化カルシウムが残存していても気にすることなく使ってきました。ところが顕微鏡で根管をのぞいてみると、かなりの水酸化カルシウムが残っているのがわかり気になり始めました。そこで最近では次亜塩素酸を少し残したまま封鎖するようにして水酸化カルシウムを使わないときもあります。やり直しの根管の場合では、詰まっていたガッタパーチャが除去できたかどうかも分かりやすいという利点があります。ただ、嫌気性菌が根の中に残っていると水酸化カルシウムは漆喰のようなにおいを発するようになります。その臭いが無くなることを根充の目安にしてきたので、根管が壊疽臭を発している場合は水酸化カルシウムが象牙細管の中まで殺菌することを期待して貼薬することにしています。

2019/07/28 日曜日 晴れ

「理系の人は薬指が人差し指より長い」、「テンネンパーマはIQが低い」の二つの話を題材に、「サイエンス、特に実験科学が証明できることは相関関係だけだ、因果関係は絶対に証明できない」実験科学では、データを統計処理して相関の強さを示す。相関関係が強いと因果関係があると脳が勝手に解釈するので、そういう意味では、因果関係は私たちの心の中にしかない。「科学の現場では因果関係を妄信しすぎると大変な誤解を生みかねない」と警告しています。『単純な脳、複雑な私』池谷裕二。逆に相関関係が弱くても、あるいはなくても因果関係があると脳が解釈する場合があるのはなぜだろう。思い込み?イデオロギー?宗教?洗脳?すべては脳の中で起きていることは確かだと思います。

 話は全く違いますが、吉本興業の騒ぎの中で、最も驚いたのは年末の恒例番組「絶対に笑ってはいけない」で進行役を務めているおじさんは吉本の下っ端社員だと思っていたのに、副社長だと分かったこと。それにつけても、年末には副社長のみならず、役員総出の「笑ってはいけない」が放映されるのを観たいものです。

2019/06/16 日曜日 晴れ

 歯科治療による下歯槽神経・舌神経損傷の診断とその治療に関するガイドライン』について、この領域における第一人者である和歌山医科大学藤田教授からのメールをいただいた。ガイドラインを読むといずれの治療法も弱く推奨するとなっています。重度の損傷の場合には日本では藤田教授ら3名のみが行うことのできる顕微鏡下での縫合手術が決め手ですが、ガイドラインでは「CQ2. 6 三叉神経損傷後の初期における感覚障害の治療に、外科的療法を用いることが推奨されるか?

 結論:感覚の回復にために外科的治療を用いることを弱く提案する。しかしその実施にあたっては慎重に適応を検討することが必要である」となっています。

 

2019/06/13 木曜日 晴れ

 認知症のことを英語でlong goodbyeというそうだ。映画『長いお別れ』の公開記念の舞台あいさつで、蒼井優が「演技を習っていないので、山崎努の『俳優のノート』に線を引いて勉強してきた」と話すのを聞き、『俳優のノート』を読む。大変面白く、ついでに『ながいお別れ』も見たくなり、今朝9時半から東宝シネマに行ってきました。面白いというより、じっくり感動させられる映画でした。映画の最後で,米国で不登校になっている孫が校長に呼び出され、祖父が亡くなった、認知症であったことを告げる場面で、米国人校長の口から出たのがlong goodbye=認知症。 蒼井優が大先生と仰ぐ山崎努と絡む場面も多く、見所たっぷり。

 因みに、山里亮太は高知の大ファンで、結婚会見で指輪がないことの理由を聞かれた蒼井優が「高知が好きなので高知に行きたいといっている」というところを会見の始めから28分ごろに見ることができます。

2019/06/07 金曜日 雨のち晴れ

 根の治療の失敗原因で多いのは根管の見逃しだと考えるようになりました。扁平な歯根には2つの根管があると考えて治療に当たるようにするひつようがありそうです。その代表例は上顎第一大臼歯近心頬側根(出現率50%以上)、下顎第一小臼歯(20%程度)、下顎側切歯(30%程度)。また下顎第一大臼歯遠心舌側根(20%程度)は強い湾曲があり、治療が困難です。さらには下顎第二大臼歯の樋状根(Cの字状根)は巻貝のような根管で予後不良になりやすい根管です。私が卒業した1978年ころは上顎第一大臼歯にまれに4根管があるという程度の認識だったと思います。歯科用CTの開発で、見逃されていた根管は少なくなり、根の治療の成功率も向上すると思います。ただし、日本の根管治療の費用は欧米の1/10程度だといわれていますので、発見した根管の治療を容易にするニッケルチタンファイルやマイクロスコープの普及の遅れが治療成績の向上の障害になるかもしれません。

※出現率の数値は木ノ本喜史著『臨床根管解剖』評論社2013と 吉岡隆知クインテッセンス2018『臨床に生かす根管解剖』による

2019/05/25 土曜日 晴れ

 恩師の小佐々晴夫先生が九州歯科大学15期生の同窓会で高知においでになっているので、ホテルに面会に行く。フロントから問い合わせてもらって、ロビーで待っているとすぐに降りてこられて38年ぶりにお会いすることができた。相変わらずお元気で、80歳になられた現在でも週40時間フルに診療されているとのこと。予防矯正学会の会長もなさり、年三回予防矯正のコースも開いているとのことであった。私が勤務していたころから登山にはまっておられて、ヒマラヤのトラッキングに出かけたりされていたが、今も愛宕山に登られるとのこと。さらに自転車や神輿担ぎと体を動かすことが大好きなことがスリムな体形を保っておられる秘訣であろう。こうやってお互い元気に歯科臨床に携わることができるのもビーチ先生のホームポジション診療が基本にあるおかげだと話がはずみました。

 25日にもう一度新阪急を訪れ、奥様ともお目にかかり、自転車や登山、神輿担ぎにまつわるエピソードを聞き楽しい時間を過ごしました。お互い元気で頑張ろうと励ましていただき、奥様と二人に見送っていただいて新阪急ホテルを後にしました。

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5/24クラウンパレス新阪急ホテルのロビーで

スリムな恩師に比べメタボ体形のわたし。

5/25日新阪急ホテル3

頭髪の少なさと体重が恩師を越えてしまいました

 

 

2029/05/17 金曜日 晴れ

 上顎大臼歯の4根管ほど頻度は高くありませんが、下顎第一大臼歯の遠心舌側根も根の治療の難しい根管です。恥ずかしながらCTを導入するまでこの根が頬側に大きく湾曲している場合があることに気づきませんでした。モンゴロイドでは出現頻度が高く欧米人の出現率の10倍ほどの20%以上出現する(吉岡2018、木ノ本)といわれています。出現率が低いためか、欧米でのエンドの本では難しい根管治療として取り扱われているのを見たことがありません。そこで、当院で埋伏抜歯や上顎のエンドなどのために撮影したCTに写っている下顎第一大臼歯170本を調べたところ、36本(21%)に遠心舌側根があり、そのうち21本がバイタル、根管治療の不備が12本、良好な根管治療は3本でした。遠心舌側根のエンドの成功率は2割でした。ただし根充は不十分でも根尖病変のある遠心舌側根は少ないのが意外です。私見では根管が小さいため起炎物質も少ないためだと考えています。母集団には下顎第一大臼歯が片側しかないものは含まれていますが両側の欠損の場合は含まれませんので、根尖病巣のできた遠心舌側根のあった歯は抜歯されているのかもしれません。遠心舌側根の根管治療をする場合には感染しないようにラバーダムをすること、CBCTを撮影して、湾曲の程度を把握しておくことが大切だと考えます。

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2018年にクインテッセンスに連載された吉岡の論文と並ぶ根管解剖に関する名著

遠心舌側根の湾曲部分に穿孔がありました

再植のために一旦抜歯、逆根充しました。左のケース。

頬側に向かって強く湾曲しています。この歯は抜歯して智歯を移植しました。

湾曲が強くないためもあり、根尖まで充填できています

 

2019/05/08 水曜日 晴れ

 「ためしてガッテン」でイエテボリテクニックが取り上げられていた。フッ素入り歯磨剤をたっぷり(2センチ程度)使って食後に歯磨きをした後、ほとんど(すす)がないこと。歯磨き後2時間は飲食を控えること。要するにフッ素を口の中に残して歯質を強化するという歯磨き法である。フロスはしないのかと出演者からの質問に、フロスもすると専門家が答えていたが、番組を見ていた人にはフロスはあまり印象に残らなかったのではないだろうか?フロスなしでは、歯と歯の間から始まる歯周病は予防できない。当院はまずフロスをしてからイエテボリテクニックで歯を磨くのがむし歯と歯周病両方の予防に効果的であると考えています。

2019/04/30(平成31430日) 火曜日 雨

 1993年(平成5年)11月に天皇・皇后両陛下が高知においでになったとき、皇后陛下は週刊文春などのマスコミによるバッシングがもとで声を失っておられた。高知市内の行事を終え、電車通りを南国市に向かう両陛下を、当時開業していた本町二丁目のビルの前で見送った。その時、車窓から手を振り会釈をされる美智子皇后の寂しそうな、哀しそうな表情を目にして、涙があふれてしまった。その年の暮れ、歯科医師会の恒例行事の後、当時の西野会長、A先生、Y先生と追手筋に向かうタクシーに同乗した折、そのことを口にすると、西野会長は「わしらあ、オイオイ号泣よね」といわれた。西野会長は元オリンピック選手1952年ヘルシンキ)でもあったため、団塊世代の私に比べると別次元の思いがあったのだろうと想像する。最近では、美智子皇后に対するバッシングは無くなったが、代わりに雅子皇后が強いストレスにさらされているように見受ける。政治権力と一線を引いた天皇が存在することによる国の安定のありがたさを昨今痛感している。明日は令和元年51日。

2019/04/03 水曜日 晴れ

 松山のF君から、『手仕事の医療』を読んで、咬合についてのばらばらの知識がすっきりと一つになったと電話をもらった。F君は勤務していたT先生のところで、全運動軸を発見した河野先生の話を直接聞いたこともあり、『手仕事の医療』の中では咬合に関する部分に興味をひかれたようであった。一方私は2017/04/12の日誌に記したように、バンド冠から鋳造冠に変わった経緯や、中心感染論の部分が一番面白かった。そもそも私が『手仕事の医療』を発売されるとすぐに読もうとしたのはなぜだったのだろう。それは1980年の森克栄先生の講演会で、『臨床家のためのオクルージョン』にまつわる話を聞いていたからに他ならない。ほぼ同じ時期に九州歯科に在籍し、交友があったにもかかわらず、同じ本を読んでも、関心のあり方が異なるのは、それぞれのたどってきた歯科臨床経験の違いであろう。世代、学校、臨床経験、立場が異なれば、全く別の感想を抱くことがあることは当然であろうし、むしろこの本に全く関心がない歯科医も少なくないだろう。歯科臨床では、卒業直後に勤めたところの影響が生涯続くが、時代の変化に対する対処の仕方が少しずつ違い、それが積み重なって40年もすると同じケースであったとしても全く違う治療方針、治療法、治療結果になってしまうだろう。たとえ治療のガイドラインがあっても、それを実現するのは、なおしばらくの間、手仕事であり続けるのはまちがいないからだ。ただし、技工部門にはCAD/CAMが導入されており、手仕事の占める位置が大きく低下し、2030年後には金属鋳造冠は無くなっているだろうと考えられる。

 

2019/03/27 水曜日 晴れ

 九州歯科大学の同級生で、埼玉で開業している友人の片岡英男先生から『小説 中原市五郎』をいただいた。彼の父君が昭和52年(1977年)にデンタルダイヤモンドに連載したものを本にしたものである。中原の友人に高知出身の高橋逸馬なる人物が出てくる場面から急に親しみがわき一気に読み終えた。中原と高橋の交流をよみながら、鹿島茂が『吉本隆明 1968で、東京の名門高校出身者と地方(特に農村部)出身の学生にとって文化的社会心理的な隔たりがいかに巨大であったかを強調していたことを連想した。高橋逸馬をネットで調べると明治38年に「牛乳中毒論」を書いた高橋逸馬がヒットする。『四国遍路の栞』も書いているのでそれらしいが、正確なところはわからない。

2019/03/24 日曜日 晴れ

 小林一三は阪急と宝塚を作った人ぐらいの知識しかありませんでしたが、夕刊フジに連載されている花田紀凱「天下の暴論」で、仕事への意欲わく小林一三の「心得」とあるのを知り、鹿島茂の『日本が生んだ偉大なる経営イノベーター小林一三』をよむ。昭和15年(1940年)に商工大臣に就任するまでは事業家として大成功を収めていたが、1941年に近衛内閣で商工大臣として入閣してからは、政治(戦争)に巻き込まれ、満州から帰国した岸信介次官と対立していく。この辺りは日本の産業史と、大戦前後の歴史を知るうえで大変貴重な本になっています。戦時の統制経済政策を「アカの思想」といわれて対立した岸信介の証言録にはこの辺りの事情について「確かに小林一三さんと喧嘩したときには、役人としてのあり方から逸脱していたと思うんだ、私自身がね」とある。戦後の混乱期については、昭和21年の東宝の労働争議についての記述が興味深い。1948年(昭和23年)には「東西対立が激しくなり、GHQと共産党の蜜月は終わりを告げ、GHQは日本における共産革命を真剣に憂慮し始めていた」とある。著者の鹿島茂や私の生まれた1949年に、毛沢東率いる中国共産党が蒋介石を台湾に追いやり、19506月には朝鮮戦争が始まっている。

2019/03/17 日曜日 晴れ

 抗菌剤についての大阪市立大学掛屋弘先生の講演会。歯科における第一選択はペニシリン系のサワシリン、ペニシリンにアレルギーのある場合はアジスロマイシン(ジスロマック)。重症の感染症にはキノロン系(クラビットなど)。第三世代のセファロスポリン系は生体利用率が低いため、Daitai Unkoになってしまうという内容で特に目新しいことはありませんでした。Line90円で買えるバイキンズのスタンプの紹介があり楽しい講演会でしたが、パソコンとプロジェクターの解像度のずれプレゼンソフトの設定の問題かわかりませんが、映し出された画像や文字が横長になっており、大門美知子が太ってしまっていたのにはげんなりでした。昨年の看護学校の講義に使ったスライドが正しく映っていただろうかと気になってしまいました。

2019/03/03日曜日 雨

 尾崎知事が登場して歯周病の予防を訴えているテレビCMを見ました。知事自ら歯科検診を呼び掛けているのは全国的にもたぶん初めてではないでしょうか。歯科疾患の予防が県民の健康増進に寄与するのみならず、医療費の節減にも貢献するとの認識が高知県にあっての知事の出陣だとおもいます。YouTubeにも載せてほしいものです。ところで、2/27日の記事に関連で、池波志乃さんが、むし歯から骨髄炎になり苦しんだとの記事がありました。たかがむし歯と放置していると、とんでもないことになることもあるという事例だと思います。

2019/02/27 水曜日 雨

 ヤフーニュースに根管治療の成功率の低さについての記事が出ていると副院長からのメール。どうやら2014年にハンドピースの滅菌がほとんどされていないという記事を書き、厚労省を動かして、ハンドピースを滅菌する歯科医院が増えるきっかけを作った記者による記事。今回は根の治療の際、ラバーダムの使用がほとんどなされていないのが一番の問題だと指摘。保険診療の治療費の安さにも触れられているが、歯の神経をとる根管治療の半数は再発との見出し。「なんちゃって歯内療法」と言われてしまっています。しかし、さらに重要なのは、神経をとらなくて済むようにデンタルフロスを含む家庭療法だと考えます。

※ヤフーニュースからはすぐに消えましたので、元ネタの読売新聞の記事にリンクしました。

2019/02/24 日曜日 晴れ

 近所のNさんに教えていただいた室内音楽を聴きに行く。一番前の席に座って演奏者の手もをとみることができました。中英仁(クラリネット)、植村太郎(バイオリン)、安田結衣子(ピアノ)さんでしたが、その指の動きの速さと正確さはまさにプロ中のプロ。歯科医の手の動きは器楽奏者の指のように早く動かすわけではありませんが、子供のころからの鍛錬を目の当たりにすると、プロとして見習わなければと思わざるをえませんでした。トークで中さんが歯が大切なので、一日5回ぐらい磨くとおっしゃっていました。歯ブラシだけでなくデンタルフロスも使っているだろうとおもいましたが、聞きそびれてしまいました。

2019/02/17 月曜日 晴れ

 この時期になると、風邪から上顎洞炎になり、上顎の歯の痛みを訴えておいでになる患者さんがおられます。上顎の小臼歯や犬歯の痛みを伝える上顎神経は上顎洞の一部の痛みも伝えるため歯や歯茎に痛みと間違えてしまうようです。風邪をひいているわけではない場合は歯性上顎洞炎が考えられます。上の奥歯の神経をとっている場合はその可能性が高くなります。

2019/01/07 月曜日 晴れ

 和田精密の広報誌に阪大の池邉先生と和田精密社長の対談が載っています。その中で池邉先生の以下の発言に大いに納得しました。

現在、QOLの確保及び生活習慣病の重症化予防の観点から、後期高齢者歯科検診が展開されていますが、受診率は高くないと聞いています。実際に、要介護者では、やはり口腔内の状態は良くない方が多く、重度のう蝕や歯周病の歯がたくさん残っている場合も少なくありません。訪問歯科診療をおこなう場合、診療所に比べると設備が不十分で技術的にも困難です。訪問診療に過度の期待を持たせることは禁物です。そして要介護者は当然全身状態が低下しています。ほぼ全員が、認知機能が低下し、複数の疾患を有しているという現実の直視と覚悟が我々も患者も必要です。備えあれば憂いなし。私はいつも患者さんに「あと何年歯科医院に来ていただけるかわかりません、だから、その時に困らないように今から備えておきましょう」と話しています。75歳になったとき必ず歯科検診を受け、悪いとことはきちんと治療しておく。要介護になる前に、抜歯や麻酔の必要な治療は終えておき、そこに良い義歯を入れておく。一本一本の歯を残すことに固執するのではなく、口腔全体と今後の全身の変化を見据え,要介護期にはメインテナンスのみに移行するような備えが必要だと思っています。お口にも終活が必要というのは言い過ぎでしょうか?

二十数年ぶりにおいでになった90歳の患者さん、ブラブラの歯を抜く必要がありましたが、血圧が200を越えており、生体モニターがアラームを鳴らす状態。アダラート5ミリグラムを飲んでもらい血圧130台になるのを待って麻酔抜歯しましたが、池邉先生のおっしゃるようにしておけばお互いよかっただろうと思いました。

2019/01/02 水曜日 晴れ

 BSの「クールジャパン」でロシアの青年が「日本の技術力は高くない。10年すればはっきりするだろう」と言っていた。その夜の「ホモ デウス」はバイオテクノロジーと情報テクノロジーが世界を大きく変えつつあるという番組だったが、ロシアの青年の言ったことが当たっているのではと考えさせられてしまった。DNAの分子構造の発見者の一人J.ワトソンは「アフリカ黒人の知性は低い」といった意味のことを口にしたせいで研究所を辞めざるをえなくなり、今は中国深圳にいるのだという。90歳のワトソンが生命科学の分野で新しい発見ができるかどうかはわからないが、中国がなりふり構わずこの二つの分野に膨大な資金をつぎ込み、科学技術の世界で覇権を狙っていることの表れであろう。自由のない共産主義の世界などごめんだが、科学技術の進歩は後戻りしないので、狙いを決めて人材、資金を集中すれば、技術世界での覇権を握ることはありうるだろう。ホモ デウスの著者はイスラエル(ユダヤ)人だが、ユダヤ人の頭の良さ、既成の考え方にとらわれずゼロから理論を組み立て、世界を変える能力は抜きんでているなあと感心してしまう。

2018/12/08 土曜日 晴れ

 3週間前から、口があかなくなったという高校生が来院。自力では2.5p程度しか口が開けられない。以前には音がしていたとのこと。うつむきに寝ているとのことなので、上向きに寝ること。舌に圧痕があり、かみしめTCHがありそうなので、歯を離すこと。さらに、術者の力で開けると左顎のクリック音とともにほぼ4センチ開口できる(end feelは軟性)が、右顎関節に痛みがあるので鎮痛剤を服用して開口訓練をするよう指導した。右はClosed lockではなく筋性の開口障害。左はReciprocal click(復位を伴う関節円板前方転移)であろうと診断。ちなみに、先にみてもらったという整形外科では様子を見ましょうとのことで鎮痛剤を処方されたとのこと。

2018/11/05 月曜日 晴れ

 歯と歯の間の清掃ゴム製の歯間ブラシのCMをしてきた小林製薬が「ブラシだけでは40%が取り残しになる」と、歯間ブラシを糸ようじ(デンタルフロス)に変えたようだ。当院ではデンタルフロスの有効性をうったえてきましたが、テレビのCMの力に及ばず忸怩たる思いをしていましたので、この小林製薬の変化は大歓迎。しばらく様子を見てみたいと思っています。デンタルフロスで気が付きにくい歯と歯の間の虫歯を予防しましょう。

歯間ブラシ に対する画像結果

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dental fross に対する画像結果

dental fross に対する画像結果

歯冠部ブラシ

ブリッジや連結冠など上から入らないときは歯間ブラシが有効です

デンタルフロス。最初はこのタイプが使いやすいかもしれません。

のこぎりで引くように歯と歯の間に入れるのがポイントです。

 

 

2018/10/05 金曜日 雨

 『現代の歯性上顎洞炎』をよむと、耳鼻科医である著者は、根管治療は難しいので、ほぼ完治は不可能であると思っているようだ。確かに大臼歯の根管治療は難しく、現実に上顎大臼歯の根管治療の成功率は高くはないし、CBCTで評価すればさらに成功率は低下するといわれている。では、訴訟社会の米国で、根管治療が歯性上顎洞炎の原因として問題になっていないのはなぜか?米国では、根管治療は日本の10倍以上(10万円程度)で専門医が治療を行っているため、根管治療の質が高いからだと推測する。歯性上顎洞炎の原因になっている不完全な根管治療がやがて問題になる日が来るかもしれない。歯性上顎洞炎の原因歯で多いのは上顎第一大臼歯ですが、通常3根管と思われている根管が50%以上の確率で4根管であるため、治療されていない根管があることが一番の問題です。この根管を探すにはのぞき込んでは不可能であり、ミラーに写し、できれば顕微鏡で拡大して探す必要がある。そして、治療に当たっては、唾液中の億単位の細菌が根管に入らないように、ラバーダムをする必要があります。遠い昔、陸軍士官学校を首席で卒業したとうわさされていた阪初彦先生が「自分はラバーダムきちがいだといわれている」「ラバーダムなしでは根管治療は殺菌ではなく植菌だ」と日本歯科評論に書いていた。阪先生の先見の明に今更ながら感心している。根管治療の精度を上げることも大切だが、それ以上に根管治療が必要になる隣接面齲蝕(歯と歯の間の虫歯)の予防が大切である。そのためにはブラシだけの口腔衛生指導では不十分で、デンタルフロスの普及が大切だと考えています。歯性上顎洞炎にどれくらいの医療費が使われているのかわかりませんが、デンタルフロスの普及が歯性上顎洞炎のみならず、齲蝕と歯周病の予防に絶大な効果があるのは間違いありません。

 

デンタルフロス に対する画像結果

佐藤公則 著

3,996(税込)

デンタルフロス

近心頬側根の2根管 50%以上あるといわれています。耳鼻科で一年以上、上顎洞炎の治療を受けていました。

近心頬側根のに根管と上顎洞にできた大きな病変

第二大臼歯が4根管のこともあります

12%程度

 

2018/09/24 月曜日 晴れ

 一年半前に買ったパソコンが異常に遅くなったため、ヤマダ電機でみてもらった。するとWindowsのアップデートの途中で電源を切って起動させることを繰り返していたため、アップデートが途中で止まっているのが原因だといわれた。Windows10からシャットダウン→起動と再起動は同じことではなく、再起動しなければアップデートが完了しなくなっているという。昔からの習慣で再起動ではなく、後でシャットダウン→起動すればいいと思っていたのが間違いであった。しかし、このことはほとんど知られておらず、再起動をすると調子が良くなるケースが多いという。餅は餅屋。専門家に見てもらうことの重要さを痛感。

 しかし、それでもハードディスク版では起動もシャットダウンも時間がかかるので、フラッシュメモリーのものに変えると圧倒的に早くなり快適。

2018/09/12

昨日の産経新聞夕刊(iPadで読む電子版)に、東京医科歯科大学付属病院が根管治療を自費治療に切り替えた(奥村歯科医院 奥村秀樹)と書いてあるのを見てびっくり。医科歯科も保険医療機関なのでそんなことできないはずだが?と思って調べてみると、どうも先端歯科診療センターでの話のようだ。マイクロスコープと歯科用CTを使って根管治療をしているようである。

2018/09/08

 すっかり図書館づき、借りてきた会田雄次の『たどり来し道』と細谷雄一の『自主独立とは何か』を読み終えた。前者は戦前生まれの著者の自伝だが、最下層の兵士として旧日本軍を見てきた知識人の経験が実に重たい。後者は1971年生まれの著者による戦後史。私の生まれた1949年頃から対日占領政策が変わったが、その政策転換を促したのが、アメリカの外交官ジョージ・ケナンの長文の電報であったという。彼がいなければ現在の日本は全く違った国になっていたのかもしれない。会田雄次は歴史学者であり、歴史と日本社会の観察者であったが、ケナンは外交官として世界の歴史を作りだしたといえる。日本の現在の憲法はケナンによる占領政策の転換前に成立したものであるため、現実との齟齬が生じていることは否めない事実であろう。

2018/08/27 月曜日 晴れ

 新しくできた図書館に行きました。著者別にあいうえお順にならんでいましたが、どうやら市民図書館にあったものをそのまま並べてあるようで、古い本がほとんど。読みたい本が見つからないと思っていたが、一番奥にあった吉本隆明の『開店休業』を借り出した。 吉本隆明は高知大学の図書館で借りた『擬制の終焉』を読んで以来、全著作集を揃えたほどよく読み、最も影響を受けた著者の一人。『開店休業』によれば、最晩年は、糖尿病でインシュリン注射をしており、最後は誤嚥性肺炎で亡くなったようだ。日曜日には『開店休業』を返却ボックスに入れ、新しい図書館ができれば探して読みたいと思っていた会田雄次の『日本文化の条件』を借りてきました。須崎高校二年か三年の時に図書館で借りて読み、大変面白かった記憶がありました。しかし読んでみると、内容は全くと言ってよいほど記憶に残っていないことがわかりました。東日本と西日本の対立の歴史については子供の中学受験の参考書で知ったのですが、すでにこの本に書いてあります。またヨーロッパと日本の歴史の類似性は、梅棹忠夫が『文明の生態史観序説』で最初に指摘したと思ってきましたが、歴史研究者の中では、当時常識であったという。二人は同じ京都大学人文科学研究所に所属していたので、共有の知識であったのかもしれない。貸し出しの記録を見ると昭和42年から443月に4回の借り出しがあったようです。

2018/08/21 火曜日 曇り

 お釈迦様かイエス・キリストか?他人のために無償でそこまでやれるものなのか?尾畠春夫さんの言動を見て、この人に匹敵するのは、この二人ぐらいしかいないのではとさえ思ってしまう。「ボランティアをやらせていただく」といいう謙虚な姿勢、「私はあまり声が大きいほうじゃないけど」などと時折キャグを交える話しっぷり。情の深さを窺がわせる涙もろさ。「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」などの自宅に掲げてある標語。などなど、こんなにできた人間が現実にいることが信じられないほどだ。脱帽し、頭を下げるしかない。せめて少しは見習って、仕事をしようと思わされた一週間でした。

 ひとつ気がかりなことは、東日本大震災のころに比べると別人のように細くなっていること。食事の内容がどう見てもたんぱく質不足のように見える。イワシやサバの缶詰でたんぱく質を摂取したらとおもってしまう。

2018/07/25 水曜日 晴れ

 19874月、ピーター・ドーソンによる咬合(かみ合わせ)についてのセミナーが京都と東京で4日間開催された。東京での講演の休息時間に、私の立っているすぐ傍で、クラウンブリッジの世界的権威F先生が、ドーソンと話をしていた。どうやら噛んだ時の歯の接触のあり方、すなわち3点接触とTip to Fossa(歯の咬頭頂を対抗する歯のくぼみに当てる)についての話題だったようで、再開された講演で、ドーソンはテーブルの脚の先に三本の棒をつけた絵をかき、三点接触とはこれと同じことだと説明したと記憶する。ところで、ドーソンと話をしていたF先生の左下小臼歯に白金加金のワイヤークラスプが覗いていた。クラウンブリッジの大権威(英語で書かれた大部の教科書は版を重ねて第5版まで出版され、世界の大学で最も多く採用されているといわれている)が自分の口にはワイヤークラスプを使っていることは少し意外であった。しかし、それまでI-barやテレスコープなど迷っていた部分義歯の維持装置として、近心レストとワイヤーのコンビネーションクラスプを用いることの根拠を得た気がした。保険では白金加金は使用できず、代用合金のワイヤーになり、使用しているうちに緩くなる欠点はあるが、ワイヤーのかかる歯(鉤歯)を長持ちさせるには大変優れた維持装置だと実感している。この装置を最初に知ったのは、久保慶浩先生のビーチアタッチメントについてのセミナーであった。鉤歯が天然歯の場合はコンビネーションクラスプ、冠で補綴する場合はビーチアタッチメントにすると聞いたと記憶する。場所は都市センターであったが、当日は東京サミットと重なっており、朝会場に向かう時には厳重な警戒が敷かれていた。しかし、セミナーが終わって帰るときには、すっかり日常の東京の風景に戻っていた。1979629日。京都で小佐々歯科に勤務していた時のことで、たぶん和歌山で開業している丸山先生と一緒だったと記憶する。

2018/07/17 火曜日 晴れ

 「脳は一回性の記憶装置。古いインプットほど強い。加齢とともに、むしろ古層の記憶が脳内で優勢になってしまう。」(兵頭二十八)。歯科医療も日々進歩している。新しい情報を常にインプットしなければ、時代の要請に答えることができなくなる。なかなか厳しい世界である。

2018/06/29 金曜日 雨

 筒井康隆『誰にもわかるハイデガー』を読む。20世紀最高の哲学書といわれる『存在と時間』を筒井康隆流に読み解いた講演に加筆した本。一言でいえば、現存在=人間がよりよく生きるためには、明日にも死ぬかもしれないということを自覚して生きること。そうすれば、周囲の人や物に対して気を使うようになると。わかった気がするのは、昨日、従兄の葬儀があったためであろうか?37歳の著作であること、第一次世界大戦後の雰囲気の中で書かれたことを初めて知った。

2018/06/05 水曜日 雨

 HPの広告規制では、誇大ではなく、事実であることが証明できれば問題ないようですので、リンクを戻しました。

2018/04/28 土曜日 晴れ

 61からHPへの写真の掲載が規制されるようですので、いったん写真を含むページへのリンクを外しました。

2018/03/17 日曜日 晴れ

 東海大学付属病院の坂本春生先生による抗菌剤についての講演会。耐性菌を作り出さないために抗菌剤の使い方が変わってきています。当院では昨年8月の日本歯科医師会雑誌に掲載された金子明寛先生の「歯科における耐性菌を増加させない抗菌療法」を読み、主としてサワシリンを処方するようにしています。坂本先生のお話では、日本の抗菌薬のガイドラインは裁判の判例に引きずられているとのこと。下記のリバスクラリゼーションに使用されることのあるメトロニダゾールは、胃がんの原因になるといわれているピロリ菌除去に使用される抗菌剤ですので、歯の治療に使って耐性菌ができてはまずいのでは?とお聞きしたところ、歯の中に少量使用するのでは耐性菌ができることはないだろうとのことでした。

 最近テレビが全く面白くないので、アマゾンで買ったFire TV Stickをテレビにつないでみています。プリズン・ブレイク、孤独のグルメ、釣りバカ日誌テレビ版とみて、いまは映画釣りバカ日誌を見ている最中。将棋はニコニコやAbema TVで見ることができる。将棋名人戦など、1時間の放送中一手も進まないことがあるので、テレビ放送向きではない。米国トイザラスはアマゾンに負けて店舗の閉鎖に追い込まれたとのこと。アマゾンをはじめとするネットビジネスが世界を変えるスピードに驚くばかり。

2018/03/04 日曜日 晴れ

 東京歯科大学名誉教授下野正基先生のRevascularizationについての講演会。中央突起の破折で根が未完成で歯髄壊死になった場合など、若年者で根管治療の必要になった歯に、徹底的な殺菌消毒と無菌処置でセメント質の添加で根管を細くし、歯根を丈夫にする手法が最近の歯内療法のトピックスだとのこと。大臼歯でも若年者の場合には歯冠部の歯髄のみ除去し、根の神経を生かす歯髄断髄法が将来の歯根破折を防ぐためにも良いのではないかと示唆された。根の完成した歯には根の先まできれいにして、詰めることが大事だという概念が大転換をするところにいるのかもしれません。根の先まできちんと詰めないと下手だと思われるという歯科医の思考を変える必要があるかもしれません。もっとも、日本の根管治療の成功率は4割といわれている現状では、その前に隔壁やラバーダムなどの無菌処置の徹底が先だといわれそうですが。講演の後、皮膚病と歯科疾患の関係Focal infectionについてどう考えられるのかとお尋ねしたところ、同じ東京歯科大学の名誉教授奥田克爾先生がたくさん論文を発表しているとご教示いただいた。下野先生にご著書にサインをいただいた。

2018/03/01 木曜日 晴れ

 イーストウッドの新作1517分、パリ行き』を観に行く。主人公は俳優ではなく本人だというが、俳優と区別がつかない自然な演技。(英語の聞き取れる人にはセリフの棒読みだといわれているようです)3人はパリ行きの列車に乗る前にイタリア、ドイツ、オランダと観光で巡るが、キリスト教圏の人たちの共通の価値観が背景にあるためであろうか、どの国でも違和感なく溶け込んでいるのに改めて軽いショックを受けた。なるほど近代化とは西欧化、欧米化何だと再認識させられる。映画そのものはさすがイーストウッドである。感動的。

2018/02/10 土曜日 雨のち曇り

 年の所為でしょうか、昔話が多くなってきました。40年ほど前小佐々先生の代理で鶴見大学の大森郁夫教授のセミナーに参加したとき、フッソの効果について「フッ素は平滑面う蝕(隣接面や、歯頚部の齲蝕)には効果が高いが、小窩裂溝齲蝕(かみ合わせ面の溝など)にはあまり効果がない。そのため小窩裂溝填塞齲蝕の予防にはシーラントが良い」と伺ったと記憶している。その記憶があるため、隣接面齲蝕の予防にはフッ素とフロス、小窩裂溝齲蝕の予防にはシーラントをお勧めしてきました。根の治療で根管充填をするとき、根管から出たガッタパーチャを切断するたびに思い出すのは、学生実習の時の津覇実先生の「真っ赤になるまで焼いてスパッとかっとする」という言葉。このように、ちょっとした行為にも昔の記憶が結びついている。

2018/02/03 日曜日 晴れ

 50年ほど前読んだ、西堀栄三郎の人物評で記憶に残っているエピソードがあります。「紡績糸が切れて困っていた紡績工場から、原因を調べてもらいたいとの依頼を受けた西堀が、雨の降った日と糸が切れることに関係があることに気づき、そこから、工場で使っていた水の成分(ケイ素だったと記憶する)が雨水で変化するためだとつきとめた」といった内容であった。疫学的な手法の有効性を知り、大いに感動した。藤田保健衛生大学の松永佳世子教授による医療安全の講習会で、免疫抑制剤などの治療で治らなかった、小児膿疱性乾癬が歯の治療をし、ほかの治療はしなかったにもかかわらず、わずか20日で治ったという写真を見せていただいた時頭に浮かんだのは、この西堀栄三郎のエピソードでした。根尖病巣が皮膚疾患の原因であるとすれば、日本人の根尖病巣は米国人のそれの少なくとも数倍、下手すると10倍程度あるので、掌蹠膿疱症などの皮膚疾患もそれに比例して多くなりそうです。人種的な違いもありますので、単純には比較できませんが、データがあれば、根尖病巣と皮膚疾患に因果関係があることの疫学的証拠になるのではないかと考えます。もちろん根尖病巣が必ず皮膚疾患を引き起こすということはないので、免疫応答の個人差など、何らかのメカニズムが働いていると考えられますが、いずれにしても歯科治療と皮膚病の関係は今後大きな問題になってきそうな予感を抱かされる講演でした。歯科疾患が皮膚病などのほかの臓器の疾患の原因になっているという説は100年前の病巣感染論を思い出します。一度は否定された病巣感染論 Focal infection theoryが再度注目され始めています。なお、Focal infection theoryを中心感染論と訳すこともあります。

※同じ文章の中で、戦後の食糧難のとき、だれも食べないザリガニを取って食べて元気だったというエピソードも記憶に残っている。

2018/01/25 木曜日 晴れ

 今年4月に予定されている診療報酬改定で、上顎第一大臼歯のCAD/CAM(白い固いプラスチック)冠が保険診療に導入されるという噂があります。昨年10月に、第二大臼歯が全部そろっているという条件付きで下顎第一大臼歯にCAD/CAMが認められましたが、日本の保険診療もようやく脱金属に向かい始めたようです。金属アレルギーのリスクがあるうえに見た目が悪い銀歯はやがて日本人の口から消えることになるとおもいます。ただCAD/CAMは金属ほどの強度はないため対合する歯との隙間(クリアランス)が最低1.5o、できれば2ミリぐらい必要であるため生活歯(神経を取っていない歯)には不向きなことが多い材料です。強度のあるジルコニア冠が生活歯には向いていますが、いまのところ保険に入ることはなさそうです。比較的小さな虫歯の治療も今は削除量の多い銀歯(インレー)が主流ですが、やがて削除量の少ないコンポジットレジン充填に変わるだろうと考えます。

2017/12/19 火曜日 晴れ

 眠れないぐらい痛いという患者さんが3人来院された。その中のお一人は熱いものを含むと上の奥歯に強い痛みがあるとの訴え。明らかに化膿性歯髄炎(歯の神経が膿んでいる)の症状だが、上下のレントゲンでは大きなむし歯は見当たらない。怪しいのはクラウンの装着された上顎第一大臼歯と大きなインレーの装着された下顎第二大臼歯である。患者さんは上の歯が痛いと訴えているが、下の奥歯の歯髄炎の痛みを上が痛いと訴えられることはよくあることなので、まず、温めたストッピングでテストをしてみたが反応はない。歯をコツコツたたく打診にも反応がない。そこでお湯を含んでいただいて強い痛みがあるのを確かめ、次に下の歯の周囲に麻酔をしてからお湯を含んでいただいた。すると痛みが消えたので、下顎第二大臼歯の化膿性歯髄炎と診断。インレーを外したところひびが入っているのを発見した。根尖切除時に根尖に破折のないことの確認に使う色素で染め出すとかなり底まで破折線が走っている。(虫歯を染め出すカリエスディテクターは溶剤の分子が大きいので破折の確認には不向き)この破折線から細菌が歯髄に入って化膿したのであろう。ラバーダムをして歯髄を除去し。水酸化カルシウムを入れてお帰りいただいた。根まで破折したなら抜歯になるが、さもなければクラウンで外から覆えば持つだろうと考えている。この例のように、インレーがクサビになって歯が破折するケースがあとをたちません。当院ができるだけインレーをしない理由です。

2017/12/17 日曜日 晴れ

 この秋、縁あって看護師養成学校で口腔ケアについての授業をする機会をいただいた。学園短大で教えた経験はありましたが、大勢の前で話をするのは久しぶりで大いに緊張した。病院では手術前や入院中の患者さんに対する口腔ケアの需要が高まっていることを知るよいきっかけになった。歯周病や虫歯の継発症である根の先の骨の中にできた病巣などの細菌感染が、病院での治療時に様々な形で問題になっていることを再認識した。中でも高齢者の入院患者の誤嚥性肺炎が大きな問題で、口の中の細菌を唾液と一緒に誤嚥することを予防するために口腔ケアが注目されているという。現実には、病気になってからでは遅く、若いときから歯を大切にする習慣が大切であり、歯科医療に携わる私たちも、口腔衛生思想の定着による予防に力をいれると同時に、根管治療などの治療の成功率(現在は3050%と言われている)を高くすることが求められていると実感しました。

2017/12/10 日曜日晴れのち雨

 医療にAIを活用する計画が進んでいます。国民の健康確保のためのビッグデータ活用推進に関するデータヘルス改革推進計画」、「支払基金業務効率化・高度化計画」について を読むと、すでに工程表ができています。 医療の分野で、将棋や囲碁でみられた、AIの有能さが発揮されるとどうなっていくのか未知の部分もありますが、レセプトデータが蓄積されてくると、成功率の低い治療法は保険では認められなくなることも予測されます。歯科分野では、今以上に治療精度を上げる努力が求められるようになると考えます。

2017/12/09 土曜日晴れ

 糸こんにゃくなどが噛めず、誤嚥するという10歳の患者さんが来院した。聞くと大学病院の耳鼻咽喉科でレントゲンによる嚥下テストまでしたのだという。永久歯に交換したばかりで萌出仕切っていないうえ、かみ合わせがよくないのは確かだが、それにしても誤嚥するというのは考えにくい。噛めないのは咀嚼筋の筋力が不足している可能性もあると考え、とりあえず一口30回噛むフレッチャーイズムを紹介した。フレッチャーイズムは30回噛むことだけが記憶に残っていたが、ほかにも守るべきことがある。さて、今日から私も噛む回数を増やすことにしよう。

2017/12/05 晴れ

 Abema TVやニコニコ動画では羽生永世7冠誕生に沸いています。人間同士の将棋は不安や恐れを知らない人工知能と違った面白さがあります。渡辺前竜王の今年の不調は昨年の三浦事件の余波があると思われる。羽生新竜王も今年は2冠を失い、竜王戦で負ければ羽生1冠、渡辺2冠となるところだった。羽生時代の終焉が来るのを撥ね退けた勝負度胸は見事だというしかない。4月から始まる名人戦第1局は山縣有朋の別荘だったという椿山荘で始まる慣わしで、その風情ある風景がNHK BSで放送されるのを楽しみにしていたが、2年ぐらい前から放送されなくなってしまった。1時間の放送時間中1手も進まないこともある将棋のタイトル戦はテレビ向きではなかったということだろう。

2017/11/30 曇り

F君、先日は数年ぶりに話をすることができて実に楽しかった。先生が小泉今日子の件で話していた愛光の同級生が大相撲の理事に名を連ねているのをみて思い出しこれを書いています。前縦靭帯骨化症で背中が痛たかったのがオパルモンで治ったという話をしましたが、11月の初めごろから寒くなって血流が悪くなったのか痛みがぶり返してしまいました。そこで血流をよくするために背中にカイロを貼ってみたところ3日ほどですっかり改善しました。貴君の重症の腰痛に効果があるのか分かりませんが、整形外科領域の痛みには血流をよくすることが大切だと感じています。

 先生が評価していた野口悠紀雄の『世界史を創ったビジネスモデル』を読みました。週刊新潮に連載されていた時読んではいたのですが、こうしてまとまったものを読むと野口さんの蓄積の量に圧倒されてしまいます。特に終章の、失敗するのは簡単で、成功するのは難しい。これをトルストイの『アンナカレーニナ』の冒頭「幸せな家庭はどれも似ているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸だ」につなげ、さらにその理由を解説しているところにはなるほどと感心しました。

「今の日本では、分権的な制度が機能しておらず、官僚機構が肥大化している。古いビジネスモデルに固執して新しい技術の導入を怠っている。日本は歴史に学ぶことができるだろうか」との締めくくりの言葉は歯科医院のような零細な個人事業主にも考えさせられてしまいます。今日、BSフジのプライムニュースに元日銀と元大蔵省の二人がゲストで出演、日本経済について議論しています。元日銀は前歯のレジン前装冠が破折して下地の金属が見えており、元大蔵省は上顎中切歯がむし歯で真っ黒。絶望的な気分になってしまいました。社会のトップレベルの人々の歯科に対する意識は、30年ぐらい前、有名なバレリーナが小臼歯にパラ冠を光らせてローレックスのCMに出ていたころからあまり変わらないのは歯科医の責任でしょうか?また電話します。

2017/11/23 晴れ

こんな記事がありました。

歯科医にはこまめにかかったほうがいい

では、どうすればNNKを避け、PPKを実現できるのでしょうか。それはなんといっても医師に頼りすぎず、自分の健康は自分で保つのだという気概が持てるような支援環境を公的に整備することです。そのうえで各種の情報を調べ、納得のいく治療を受けるようにしましょう。

一方で、歯医者さんにはこまめにかかったほうがいいようです。私たちの調査では、「かかりつけの歯科医師がいる」と答えた人が長生きでした。どんなメカニズムが働いているのか明確なところはわかりませんが、私は次のような仮説を立てて追跡調査をしています。

まず、歯科医の支援を受けることで望ましい口腔ケアの知識が得られ、高齢になっても歯と口の健康を保つことができる。食は生きることの基本ですから、歯や口が健康であることには大きな意味があります。また、定期的なケアを受けるため、歯医者さんへ「お出かけ」していることも健康長寿には望ましいのです。

▼これがピンピンコロリの条件だ!

・かかりつけの歯科医師を持つ

・口腔をケアし良好な状態を保つ

・やや太めの体形である

・総コレステロール値が高い

・お出かけが好き

・断熱に優れ土壁を使った健康住宅に住む

首都大学東京名誉教授 放送大学客員教授 旦二

1950年、福島県生まれ。福島県立医科大学卒業。医学博士(東京大学)。東京都衛生局、厚生省、英ロンドン大学留学などを経て現職。著書に『ピンピンコロリの法則』『新しい保健医療福祉制度論』など。 

2017/11/19 月曜日 晴れ

 Cognitive dissonance 認知的不協和という用語を最初に知ったのは森克栄先生の「根管充填の諸状態とその予後との関連」(日本歯科評論4461979年)を読んだ時である。「Cognitive dissonance というものが自然の中にあることを認識して治療する態度がひつようだとおもいます」とある。藤原かずえさんのツイートに「人間は、矛盾が生じた場合に【認知的不協和 cognitive dissonance】に陥り、それを解消するために都合よく認知を変更する傾向があります。支持者の心理は盲目です。」とあるのを人間は、矛盾が生じた場合に【認知的不協和 cognitive dissonance】に陥り、それを解消するために都合よく認知を変更する傾向があります。支持者の心理は盲目です。発見し、調べてみると本来社会心理学の用語であり、今までの考え方と矛盾する新たな事実が現れた時ストレスを感じ、矛盾する二つを解消しようとする。つまり、自分の選択した道が“良いはずだ”と思いたいというメカニズムを持っているのだという。いわゆる自己正当化といえる。なるほどと思い当たることがある。

都知事選挙から始まった小池劇場はほぼ終息した。このトラジコメディを仕切ってきたテレビ、とりわけワイドショーの狂態を最も的確に分析しているのは藤原かずえさんである。最初アゴラで知ったが、一連のブログは社会学者そこのけの鋭さで、とても地質学が専門とはおもえない。その頭の良さは感動すら覚える。ためしに、大メディアに裏切られ大衆に飽きられた「小池劇場」を読まれたし。大いに笑い、うなずけること間違いない。

※1965年頃Cognitive dissonanceは一種のブームになっていたようです。Cognitive DissonanceIts Use in Science, Cognitive Dissonance in Endodontics などの論文がある。

2017/11/04 土曜日 晴れ

 「総義歯臨床において、東の横綱は咬合、西の横綱は印象」。京都で勤務していた1980年に大阪のデンタルショーに出かけた時、当時東京医科歯科大学の講師であった早川巌先生から聞いた言葉である。総入れ歯はかみ合わせがわるいと噛めないということですが、現実にはかみ合わせの記録が正確にできていても、重合した義歯を模型から外すとき変形が起きるため、装着前に再度かみ合わせを修正する必要があります。そのさい、固定式のクラウンやブリッジのように口の中で咬合紙をかませて当たるところを調整するやり方では正確にできないので、あごの位置と動きをシミュレーションする咬合器に義歯をつけて調整する必要があります。日本ではこの最後の最も重要なところを強調している本がすくないのですが、米国のバウチャーの流れをくむ教科書では咬合器の上でかみ合わせを調整することの重要性が強調されています。また、多くの場合に片側に歯が残っていたりすることで、噛み癖がついていて、正しい位置(中心位)の記録が難しいケースも少なくありません。その場合装着後も再度咬合器上でかみ合わせの調整が必要になります。バウチャーの本では「咬合のエラーがないのだということが確定するまでは、義歯の床内面を削りたいという誘惑に負けてはならない」とあります。この作業には少なくとも30分以上かかりますが、保険診療では評価がなく再診料のみの負担になるため気の毒がってくれる患者さんもおられます。

2017/06/22 木曜日 曇り時々雨

 根の治療は年間1500万本なされているといいます。根の治療の成否は根の中の無菌化にかかっています。そのためには唾液(1ml中に10億個の細菌が存在する)の侵入を防ぐための隔壁とラバーダムの使用が必須です。昨年の診療報酬改定で、根の治療に顕微鏡を使用した場合の一部に加算点数が導入されました。顕微鏡を使っても成功率が大きく上がるわけでもないのにどうしてと疑問を抱きましたが、実際に顕微鏡を使ってみると、ラバーダムなしでは口唇が邪魔になって根管の中を見ることができません。なるほど、直接ラバーダムの使用に点数をつけるのではなく、顕微鏡を使うにはラバーダムが必須になることを見越していたのかと厚労省の深慮遠謀に感心してしまった。また、根管治療の失敗のもう一つの原因に上顎大臼歯の近心頬側根の2つ目の根管の見逃しがあります。これはミラーを使って入口を探すことが肝要ですが、顕微鏡を使うと必然的にミラーに歯の中を映すことになるため、この失敗原因も防げることになります。CTやニッケルチタンファイルの普及も進んでいますので、あと5年もすれば日本の根管治療の成功率があがることは確実だと思います。

 もっとも、さらに大切なことは神経を取る原因である歯と歯の間の虫歯(隣接面齲蝕)の予防です。歯と歯の間の虫歯は自分では気づかないため、痛くなったときはすでに歯髄(いわゆる神経)にまでたっしていることがほとんどです。デンタルフロスの使用と定期的なレントゲンチェックが隣接面齲蝕の予防、発見に欠かせません。

2017/04/29 土曜日 晴れ

 九州歯科で生化学を担当していた中山宏明教授の授業は、板書の間違い一つない見事なものであったが、記憶しているのは「死亡診断書が書ける歯科医になれ」という最後の言葉と、ビタミンC(中山教授はバイタミンCと発音された)の生化学的な役割についてのふたつだけである。Vitamin Cはコラーゲンの合成に関わっていることしかわかっていないと言われ、ライナス・ポーリング(ノーベル化学賞と平和賞を受賞)が提唱していたVitamin C大量摂取の根拠について「ポーリングは天才的な発想をする人で、ヒトがすべての食物を生でとっていた時に摂取しただろうVitamin Cの量を計算して大量摂取を提唱している」とおっしゃられた。

 この発想を歯科領域にあてはめると、歯の修復物にはエナメル質と同じような性質のものが最良ということになる。歯より柔らかい材料ではすり減ってしまい、歯より硬ければ天然の歯をすり減らしてしまう。歯はすり減るとその分伸びだすという性質があるが、入れ歯やインプラントは伸びださないため、かみ合わせの部分がすり減り、対合の天然歯が伸びだしたり、インプラントどうしだと当たらなくなったりするのを経験した。そのため、入れ歯には陶歯、インプラントの上部構造には、すり減らない、割れないジルコニアが最適であろうと考えている。

 数年前、中四国の補綴学会で、演者が「ジルコニアは歯周組織に好ましくない影響を与える可能性がある」と発表した。私が「歯周組織に悪影響を与えるメカニズムをどう考えておられるのでしょうか?咬耗しないため咬頭干渉が生じるからでしょうか、それとも固いため歯周組織に衝撃を与えるためでしょうか?」と質問すると、演者はその両方だとお答えになった。私はさらに「ではインプラントの場合はどうでしょう、ブローネマルクのプロトコールでは人工歯はレジンがよいと言っていたが、いつの間にかポーセレンでも問題ないとなっているが」と聞くと、演者ではなく大阪歯科大学?の教授がレジンのCAD/CAMがよいと言って終わってしまった。帰り際、徳島大学のH先生が話しかけてきて「ジルコニアは固すぎるので、金属がよい」とおっしゃられた。

野球場の人工芝と天然芝のグラウンドを比べると、下がコンクリートの人工芝が足腰を痛めやすいといわれる。これは本当かもしれない。しかし、土はコンクリートと比べると明らかに柔らかいが、セラミックや硬質レジンとジルコニアに土とコンクリートほどの違いはない。歯周組織やインプラントに衝撃が伝わるのがよくないというのは概念的な思い込みにすぎないと考えている。私の臨床でジルコニアを使用し始めてから6年になるが、歯周組織に問題がでたことはない。セラミックのように割れないし金属アレルギーの心配もないため安全安心感がある。欠点であった色も初期のものに比べると改善されてきている。

2017/04/18 火曜日 晴れ

 先週の土曜日、同窓会の会議で北九州市の小倉歯科医師会を訪れた。早く着きすぎたので、ロビーにあった日本歯科新聞をめくっていると、「俺様クリニックの終焉」というコラムが目に留まった。20年ぐらい前までは、歯科臨床のすべての分野を一人でこなして、素晴らしい臨床を実践している歯科医が理想だと思ってきたが・・・、という内容である。俺様クリニックの終焉で検索すると全文を読むことができるので、同業の諸兄はご一読ください。因みにコラムのタイトルから連想したのは吉本隆明の『擬制の終焉』である。筆者の金子先生はもしかすると吉本隆明の愛読者なのではないかと思った。

同期の三谷君や服部君から聞いた話も面白かった。また、新たに内科教授に就任した福原先生は、九州大学第二内科の出身で、私が昔家庭教師をした藤島君の奥さんと卓球のダブルスでコンビを組んでいたとのこと。世間は狭いと実感。

懇親会のあと小倉ステーションホテルまで中野充先生のタクシーに同乗させていただいた。一度ご講演に来ていただいたことがあり、小倉の中心部で開業されている。中野先生との会話の中で私の右下第一大臼歯の根の治療をしていただいたのが魚町で開業されていた松永先生だということが分かった。高知大を卒業して浪人していたとき、高知で神経を取っていたところを再治療してもらった。その歯は、冠こそやり直しているが、今でも健全である。松永先生に治療をしてもらってから40年以上経過している。松永歯科には金田の上村歯科の奥さんの兄だとのことで、紹介されて行ったと記憶している。息子さんが院長を引き継いでいる上村歯科を訪ねてみると土曜日で休診であった。

 2017/04/12 水曜日 晴れ

 『手仕事の医療』で興味深かった話題は、バンド冠から鋳造冠に変わった経緯と、ハンターの中心感染説(focal infection theory)と根管治療や歯周病治療との関係だ。中心感染説とは、およそ100年前から数十年間、米国の医療界を席巻した「リュウマチや腎臓病など原因不明の病気の原因は根の治療をした歯であるから、神経を取らなければならないような虫歯は速やかに抜歯すべし」という学説である。1973年(昭和48年)、九州歯科大学2年生のとき、学長の平川教授の歯学概論の授業で耳にしたことがあった。しかし、それは現在では否定されているということだったので、特に気に留めることもなく卒業した。しかし、開業して間もないころ、高知市民病院の心臓外科医から心臓の手術をする患者さんの治療を依頼されたとき、根の先の病巣を治しておいてもらいたいといわれ、医科では中心感染説が残っているのか、と思ったことがあった。最近、順天堂の天野教授が週刊新潮のコラムで、「歯周病や虫歯などで口腔内の状態がよくないと、心臓の病気が起こったり、悪化したりしやすいのです」と書いている。もっとも天野教授は「医学の教科書には書かれていません。・・・7200例以上の心臓手術をしてきた外科医の実感であり、発見といってよいかもしれません」とも述べている。

 近年、歯周病菌が糖尿病や動脈硬化、心臓病、早産などの原因になっているといわれている。まるで100年前の中心感染説が復活しているように思える。神経のない歯はすべて抜歯していた時代とは科学的根拠が異なるとはいえ、日本の根管治療の成功率の低さが問題になる時が来る可能性があるのではなかろうか。すべての世界史的事実は二度現れるという。日本の歯科臨床が、みじめな笑劇にならないよう根管治療の成功率を上げる努力をしなくてはならないだろう。そのためには、根の中に細菌が入り込まないようにする隔壁(壁)とラバーダムが一番大切であると考えている。

2017/04/03 月曜日 晴れ

 九州歯科大学を卒業し、京都の小佐々歯科診療所にお世話になったのは1978年。小佐々先生の弓道部の後輩であった保存学教室の故津覇先生のご紹介で就職した。小佐々先生はビーチ先生の弟子であり、診療姿勢を崩さず、ミラーを使って見えない部分にアプローチする診療を叩き込まれたことは誠に幸運であった。その後大きな影響を受けることになった森克栄先生の講演会に参加させていただいたことも幸いなことだった。ビーチ先生の「Noバンド冠、N0アルゼン,No ワイヤークラスプ」という口癖も小佐々歯科で初めて聞いた。石原先生の評伝を読むと、日本で最初にキャストクラウン(鋳造冠)を取り入れたのは昭和33年(長嶋茂雄が巨人に入団した年)にビーチを教授に迎えた日大歯学部だったという。九州歯科大3年生の時(1974年)、クラウンブリッジの松浦教授の授業で、末次先生の「縫製冠とその反論」という論文が紹介され読んだ記憶がある。開業医の発表した縫製冠の新しい作り方の論文に末次教授が反論したものであったと記憶している。九州歯科ではすでにバンド冠は教育されなくなっていたが、1981年に開業した時には、いわゆるバンド冠と綿栓根充と言われるやり方が患者さんの口の中にかなり残っていた。

平成17年(2005年)の暮れであったか、日本歯科医師会の不祥事があり、新しく日本歯科医師会の会長に選ばれた兵庫県の井堂先生が来高されたことがあった。雪の中、恒石会長と懇談されている席に呼ばれ「井堂会長に何か要望はないか」と言われたので、「レセプトにいまだにバンド冠の点数が載っているのを外してもらいたい」と申し上げた。井堂会長は「陳旧化した技術は外すつもりです」とおっしゃられた。そのためであったかどうか、平成18年の改定でバンド冠は保険診療からなくなった。もっとも、不祥事に対する懲罰的だとの声があるほど厳しい改定であったので、バンド冠が外れたことはほとんど話題に上らなかった。バンド冠が保険診療から正式に外されたのは、鋳造冠が日本に導入されてから40年以上経過していたのであった。

2017/04/02 日曜日 曇りのち雨

シエン社から『手仕事の医療 評伝 石原寿郎』が届いた。読み始めるとすぐに、歯科医師としてスタートしたころ強い影響を受けたダリル・ビーチ先生や森克栄先生らの名前が出てくる。戦後日本の歯科医療史を知るうえで最良の一冊であろう。1969年(昭和44年)8月の九州歯科医学会の録音テープに基づく『臨床家のためのオクルージョン』は、1976に購入したものが手元にあります。1980年の大博多ホールの講演で、森克栄先生がこの本に出ている歯肉に線維性の炎症のある全顎補綴のケースに触れて「控室に飛んで行って石原先生に抗議した。私は涙が出てきました。しかし、金替先生らが東京の人の話は東京でしてください、宴会がありますのでと酒に流してしまった。そのせいでナソロジーなどというものが流行って日本の歯科は10年遅れてしまった」と言われたと記憶している。

『手仕事の医療』によれば、その顛末は次のようであったという。「八月の終わりに、石原は博多に出かけたが、そこで一つの事件が起こった。九州地区の歯科医師会合同の九州歯科医学会の講演中に、聴衆の一人がやにわに舞台に上がってきて、石原のネクタイをつかんで講演が一時中断するという事件が起こった・・・」 。そのおよそ3週間後、石原教授はこの世を去った。時は70年安保の前年、全共闘運動で大学は荒れに荒れていた。私は高知大学の3回生で、生物学を専攻しており、川那部浩哉京大教授の『川と湖の魚たち』の影響を受け、岡村収教授のもとで、動物生態学を卒論テーマにしようとしていた。4年生の時、同じ教室で卒論を書いていた北九州市出身の高森道雄君の提案で医学部に入りなおそうということになり、1972年に九州歯科大に入学した。

2017/03/29 水曜日 晴れ

 奇跡の逆転優勝をはたした稀勢の里の出身地牛久は、歯科関係者の間で、1988年日本歯科大学の岡本先生らがおこなった歯周病の疫学調査の対象地として知られています。以下は1980年頃から世界の歯周病治療をリードしてきたスエーデンのリンデLindhe1994年の講演記録からの引用です。

「…8%未満の人たちは、口腔清掃状態が悪いと、ほとんどの歯を失ってしまうのです。そのことは日本の調査でも明らかです。岡本浩先生と協力者が牛久で行った研究をご紹介します。患者さんは20歳から70歳で、約300人近くを対象として行いました。その300人のプラーク、歯周炎、ポケットの深さ、それから付着の喪失について調べてみました。(略)そしてここに非常におもしろい現象があります。日本の人たちも歯に汚れがたくさんついているというデータが出ているわけですが、日本国内の歯ブラシの売れ行きを見ていくと一人あたりスエーデンの3倍から4倍も買っていることになっています。にもかかわらずプラークのパーセンテージは非常に高いのです。プロービング時の出血の見られる部位は、頬側、舌側面と比較して隣接面で年齢が上がるにしたがってだんだん頻度があがってきています。5070代の人は75%近くの隣接面に出血が見られます。別の表現をすると、隣接面のほとんどの場所は適切に歯周組織を支える歯肉そのものが破壊過程にあることを意味します。」(デンタルハイジーン19951月号、医歯薬出版)

 私の臨床でも、頬側(歯の表側)は磨きすぎて楔状欠損、知覚過敏になっているにもかかわらず、隣接面の清掃不足で歯周病や隣接面齲蝕になっている患者さんの多いことを実感しています。日本の口腔衛生教育が、ブラシの使用に終始してしまった結果だと思います。当院がデンタルフロスの重要さを強調するゆえんです。

2017/03/26 日曜日 雨のち曇り

 地上波でもやっと早く築地に移転すべしとの意見が出始めた。テレ朝「TVタックル」の亀井静香、TBS「サンデージャポン」のテリー伊藤など。いまだ小池支持派もいるにはいるが次第に説得力がないことに気づき始めたのか反論が弱い。「安心が〜」と言っているが、舛添前知事が、飲み水の安全基準から環境基準に変更し、安心宣言をしたはず。舛添前知事も都市外交などの国政(総理大臣)を意識したパフォーマンスをしなければ引きずり降ろされることもなかったろうに。画像で見る限り築地は汚い。ネズミや鳥が沢山入ってくくるようなところにマグロを並べているのだから。鳥インフルエンザウイルスやネズミの媒介する細菌は安全なのか?築地が安心だというのは幻想、神話の類に過ぎない。オリンピックの選手村にはHACCPを満たしていない現在の築地の食材は提供できないという「ニュースの深層」

2017/03/20 月曜日 曇りのち雨

 地上波は相変わらずだがフジプライムニュース、ニュースの深層などBS放送では、早く豊洲に移転すべしという意見が有力になり始めた。今になっては、ヒトラーやスターリンがとんでもない政治家であったことを誰もが知っているが、当時ヒトラーはドイツ女性のあこがれの的であり、(女性に投票権が認められて間もなくであり、ヒトラーはそこに目を付け、演説の仕方を工夫したのだという)、高名な哲学者のハイデガ−もナチス党員だったという歴史を知れば、時代の大きな流れの中で、歴史の審判にたえうる判断をすることの難しさを考えざるを得ない。ヨシフ・スターリンの名をもらった政治家がいるが、彼の親はスターリンを崇拝していたのだろう。また当時、スターリンが素晴らしい指導者だと思っていた人が多くいたと考えられる。なぜ自分はそう考えるようになったのか、なぜそう感じるのかを常に自問していないと、判断を間違えてしまうことを自省する昨今。

 2017/03/15 水曜日 晴れ

 豊洲か築地かで揉めている。地下水のごく一部のデータで豊洲は汚染されているという報道ばかりであきれていたら、カンニング竹山が「豊洲で何の問題があるのか、築地がダメだから豊洲に決まって建物もできている。地下水だって飲むわけじゃなし…」と正論を述べていた。それに対してMCの安藤優子は「築地と聞くとわくわくするだとか、心の問題が・・・」などと反論していた。おいおい、ほかの問題も「心の問題」で報道していると白状しているのかとあきれてしまった。自分たちで豊洲の風評被害をまき散らしながら、自己暗示にかかっているのか?はっきり言おう。安藤優子は現地を見ることもなく、自分のイメージでコメントしている点でジャーナリスト失格。ただの電波芸人。ネットの時代に、あなたたちに騙されるような間抜けはいませんよ、と言ってやりたい。

※前日には環境基準の73倍というデータは0.4%の地点のものだと、元市場長がきて同じ番組でしゃべっていたにもかかわらず、相変わらずベンゼン73倍という数字ばかり取り上げている。印象操作していることがバレバレ。どの局が最初に豊洲移転すべきと方向転換するかが見もの。

2017/02/21 火曜日 晴れ

 テレビ朝日系のグッドモーニングで「虫歯菌が脳出血の原因になる。虫歯の予防にはフッ素入り歯磨剤を使うこととフロスが有効」と言っていました。マスコミでフロスが大切だとの指摘を初めて聞きました。しかしながら、フロスの話は話題の中の最後に一瞬触れただけで、フッ素入り歯磨剤の使用法についての眉唾物の話が長くちょっと残念でした。12歳で日本人の虫歯の数はスエーデンの二倍2本程度だとのことでしたが、12歳では永久歯が放出してから16年ですので歯と歯の間の虫歯はまだ初期で学校検診では見つからない。これを18歳で比べると、フロスを使わない日本人の虫歯の数はとんでもないことになっていると考えられます。

2017/02/07金曜日 曇り

「歯を磨いているのに虫歯になると」よく聞きます。昔は歯ブラシの使い方がよくないのだろうと思っていましたが、いまではフロス抜きでは虫歯も歯周病も予防できないし、治したとことも長持ちしないと考えています。あと一つは年配の人たちに見られる根の虫歯。これは質が悪く,歯の長くなった人専用の研磨剤の入っていないフッ素入りの歯磨剤はと歯茎の境目をタフトブラシで磨くぐらいしかいい方法がないのが現状です。ただし、ブラシと歯間ブラシは使いすぎて歯が摩耗している人を時々見かけます。フロスは使用が難しいため使い過ぎによる弊害は見たことがありません。今日もフロスのお勧めになってしまいました。

2016/12/22 木曜日

 「就寝前のブラッシング、毎日のデンタルフロスを使ったケアと死亡率との関係を調べた興味深いデータがあります。5611人の高齢者を平均9年間にわたって調査した結果ですが、これによれば、就寝前に歯磨きをする人に比べ、全くしない人は2035%も死亡リスクが上昇したといいます。」

2016/12/05 月曜日 晴れ

 店舗や病院に車が突っ込む事件が連日のように起きています。ほとんどがブレーキとアクセルの踏み間違いだと考えられる。不思議なのは自動ブレーキをすべての新車に義務付けようとの話が出てこないこと。自動ブレーキの技術は未熟なのだろうか?CMでやっているのを見ると人や建物にフルスピードで突っ込む事故は無くなるのではと思う。シートベルトやエアバッグは運転者を守るが、相手を守る装置が義務付けられていないのはおかしい。博多の事故でも運転手は無傷だ。いったい何回事故が起きれば義務付けられるのだろうか?

2016/11/27 日曜日 雨のち曇り

 医療安全の講習会。骨粗しょう症による骨折予防のために服用しているビスフォスフォネートの休薬はしないことになってきているとのこと。感染した歯をそのままにする方がよりもんだいで、抗菌剤を術前に服用すること、骨の露出をさせないことが大切だとのこと。

2016/11/26 土曜日 晴れのち曇り

 歯をちゃんと磨いているのに虫歯になったという話を時々耳にします。テレビや雑誌にも時々歯磨きの話が載りますが、歯ブラシの使い方で終わることがほとんどです。歯を磨いているのに虫歯になるのは、歯と歯の間の清掃をするデンタルフロスがなされていないからといって間違いありません。最近テレビで、歯ブラシで磨けるのは60%だというサンスターのCMが流れているのが、唯一歯の間の清掃の重要性に触れているぐらいです。しかし、あのCMで使っている歯間ブラシは歯と歯の接触しているところの下に入るため、歯茎がやせてブラックトライアングルとよばれる隙間ができるリスクがあるため、前歯に使うのは問題があります。また接触点から始まる虫歯の予防もできないので、当院ではデンタルフロスをお勧めしています。フロスは難しいという方が多いのですが、慣れれば奥歯でも簡単です。神経の治療が必要になる大きな齲蝕は大半が隣接面から始まります。米国並みにフロスが普及すれば、年間1500万本といわれている根の治療が激減することは間違いないと思います。また根の治療が少なくなれば、一本の歯の治療に十分な時間をかけることができるので、根の治療の不備から抜歯になるケースも半減すること必定です。それでも日本でデンタルフロスが普及しないのはなぜでしょう?

2016/11/17 木曜日 晴れ

 根の治療に使うガッタパーチャポイントの大きさにバラツキがあることがあります。レシプロック専用のポイントをゲージに入れたところ、頭の黄色い#50のポイントだけがゲージの穴に入りません。赤#25、黒#40は少し出ていますが黄色#50は通常のポイント緑色#70の穴と同径のところでやっと同じぐらい出ています。レシプロックファイル#50で形成した根管には#50のポイントは先端まで入らないことになります。一番大切な先端に隙間が残り、そこが細菌のすみかになることになりますので当院は#50で拡大した根管には、従来からのポイントをつかうことにしました。輸入商社の茂久田に問い合わせたところ、基準の範囲内であるので問題ない。当院以外から問い合わせはないという。

2016/10/26 水曜日 曇りのち小雨

 人はそれまで知っていたことと違うことを見聞きすると長く記憶に残るように思う。上分小学校3,4年生の担任であった梅原公子先生が昼食(昭和33年ごろ給食はなく、弁当を先生も一緒に食べていた)の時、「朝起きたとき歯を磨いたほうが良い」とおっしゃった。子供たちは「食べた後にみがくのがよい」と言ったのだが、先生は「朝起きてすぐみがかないと気持ちが悪いでしょう」とおっしゃられた。英国の生理学者ジェンキンスが大阪での講演会で、「虫歯予防には食事の前に歯を磨くのが効果的」というのを聞いたのは、それから20年ぐらいたっていた。

 中学三年の時の担任だった梶原誠一先生が「裕次郎は、歯がガタガタだったが治している。ガタガタの歯は治したほうが良い」とおっしゃられたのはどういう文脈であったか忘れたが、これも記憶に残っている。拙文を読んでくださっている方は、アメリカではFloss or Dieといわれていることを知って、朝晩のデンタルフロスを習慣化してもらえれば幸いである。

2016/10/20 木曜日 晴れ

 九州歯科の6年生の時のことである。口腔外科に厳しいことで有名なO先生がおられた。そのO先生からレポート提出せよと言われて、数日後レポートをもって部屋に伺うと、レポートは一瞥しただけで、机の引き出しから新聞の切り抜きを数枚とりだし、「一般のひとも、こういった記事でかなりの医学的な知識を持つ時代になっている、歯科医も広く勉強しておく必要がある」とおっしゃられた。学生にはいろいろ言われていたO先生であったが、ありがたいアドバイスであったと感謝している。『歯はみがいてはいけない』を本屋で見つけて読みながらO先生のアドバイスを思い出しました。

この本にはフロスの重要性、食べてすぐの歯磨きの弊害、歯肉の退縮したケースでの歯磨剤の弊害のことなど一般的な常識と違うことがいろいろ載っています。朝水を飲むことに関するところは異論がありますが、一日3回、食後3分以内に、3分間磨くというドグマの見直しには大賛成です。

2016/08/23 火曜日 晴れ一時雨

 当院では小さな虫歯にインレー(銀歯)をほとんど行わず、白い材料(コンポジットレジン)を詰めるやり方をしています。その理由は、まず学生時代の臨床実習のおり、故津覇実先生に「アメリカではインレーInlayはほとんどしない、咬合面を覆うオンレーOnlayが行われている」と聞いたこと。勤務した小佐々歯科がDr.ビーチの方針を守って、小さな虫歯はアマルガムを詰めていたこと。1987年に有楽町マリオンでモートン・アムステルダムがインレーは嫌いだというのを聞いたことである。要するに米国の歯科治療の影響を受けているせいだろう。自分の臨床経験でも、大臼歯では、インレー周囲の歯の破折やセメント流出による脱離をしばしば経験するので、これからもインレーはよほどのことがない限り行わないつもり。とくに神経をとった大臼歯は、咬合面を覆わないと必ずと言っていいほど覆っていない部分が破折してしまいます。破折が深いと抜歯になってしまうため、神経をとった大臼歯は原則クラウンにしています。オンレーやクラウンは歯の削除量が多くなりますが、長い目で見ると歯の破折を予防し、歯が長持ちします。

2016/07/19 火曜日 晴れ

『とと姉ちゃん』のモチーフになった大橋鎭子さんが、歯の大切さについて書いていたことを、ドラマを見ていて思い出し、『すてきなあなたに』をアマゾンで取り寄せた。初版は昭和50310日となっている。多分新聞の書評を読んで買ったのだろうから、九州歯科の4年生のことだったと思う。大橋さんが若い女性に向けて歯が大切だと忠告していたと記憶していたが、それは間違っていて、カナダ在住の下高原さんという80歳の男性に、大橋さんが言われたことでした。以下引用

「女の人はいくら目鼻立ちがよくて、美人に見えたって、化粧がどんなにうまくても、駄目だな。一番は歯だな」といって私の歯を見ながら、「歯をみていると、その人の生活までわかるし、健康状態までわかる、ときには性質までわかる、だからあなたも歯は大切にしなければいけない。特に前歯は顔にとってほんとに大事だから、大切にしなさい、大切にしなさい」とくり返し、くり返し言われたのです。

40年以上前のこの忠告が、最先端の歯科の治療基準「上顎前歯を基準に診断する」にぴったりと符合していることに驚きます。待合室に置きますので興味のある方はご覧ください。

2016/06/01 水曜日 晴れ

  今週のニューズウイークに、原爆投下時の大統領トルーマンの孫へのインタビューが載っている。近々パールハーバーに行くことになっている息子に読むことをすすめた。原爆投下はルーズベルトの時にすでに決定されていたというが、トルーマンの孫がいたからこそ日米の和解が促進されたのかもしれない。ルーズベルトが急死しなければどうなっていたのだろう。多分歴史は違っていただろう。因みに、私の卒業した九州歯科大のある小倉は広島に次ぐ投下目標だったのだが、当日西隣に位置する八幡へ空襲の影響で煙っていたため長崎に変更になったのだという。小倉に原爆が投下されていたなら、九州歯科はなく私の人生もまた違ったものになっていただろう。その前にこの世に生まれていなかったかもしれない。現在は偶然の重なりの上に成り立っている。

2016/05/28 土曜日 小雨

 徳島市で九州歯科大学同窓会主催の学会。「子供たちの歯列を健全に導くためのコツ」と題して須貝先生の講演。8020を達成した人の中に反対咬合(受け口)、切端咬合(前歯が上下の先端で当たっている)、オープンバイト(上下の前歯がすいている)の人は一人もいなかったとの話が印象的。歯を長持ちさせるためには、口腔清掃に加えて前歯のかみ合わせ(アンテリアガイダンス)が大切であることを再確認。

2016/05/23 月曜日 晴れ

 小泉今日子の『黄色いマンション 黒い猫』を読み終えた。小泉今日子の自伝小説風のエッセイ集。中学校で男の子に「お前ん家、倒産したんだってなあ」とからかわれたとき「そうだよ。それがあんたにどう関係があんの!」と言い返したというエピソードに小泉今日子の資質を垣間見る気がする。ベッキーもこのセリフをつかうべきだったのだ。生き馬の目を抜く芸能界で「私は春子の目指したアイドルになって十六歳の時から大人たちの中でたった一人闘っていた」と自負することができる芸能人がほかに何人いるだろうか。抜群にキュートな容姿に恵まれていたとはいえ、それだけでは生き残ることはできなかったに違いない。能年怜奈に関する一文はちょっと感動的。

30年ぐらい前、好きなタレントは?というアンケートに「小泉今日子、エリザベス・テーラー」と回答し、Y先生に「うちの女の子が面食いやいいよったぜ」と笑われてしまったことを思い出した。

2016/05/12 木曜日 晴れ

 万々のツタヤのサブウエイで昼食をとったあと本を見ていて、『口の体操 あいうべ』を発見。四万十市の新谷先生が紹介していたのを思い出し買いました。当院では舌の位置の重要さを強調してきましたが、その修正はむずかしく効果的な方法を探していました。あいうべ体操が舌の位置の修正によさそうです。自分でも試してみたいと思っています。あー、いー、う〜、べ−をそれぞれ4秒かけて発音し、これを一日30回を目標に行うと、アトピーなど様々な病気がなおるとうたっています。

2016/05/05 木橋日 晴れ

 トランプが共和党候補になることが決定的になった。木村太郎は、クリントンはメール問題など弱点があるので、トランプがえらばれるだろうと予想している。そうなれば、日本にもおおきな影響がでて、世界史の転換期になるかもしれません。サンダースが大統領になるほどではないとしても、アメリカがかわりそう。

 歯科大学では、全身の解剖学もまなびましたが、参考書は分担解剖学金子丑之助の二つが推奨されていました。そのうち分担解剖学のほうは、東大教授の森於兎が著者の一人であり、しらべると森鷗外の長男で、ドイツ人によくあるオットーから名づけられたようでした。鷗外はほかの子供にも、茉莉(マリ)、杏奴(アンヌ)、類(ルイ)とヨーロッパ風の名前をつけています。その鷗外は旧仮名遣いの支持者であったことを『日本語を作った男』でしりました。今の日本語が夏目漱石の『吾輩は猫である』から始まったことは薄々しっていましたが、言文一致の現代仮名遣いは戦後まで実現しなかったし、いまなお、表記の例外やおくり仮名などの問題がのこっているようです。梅棹忠夫は訓読をやめるべきだと提唱して実践しています。ワープロソフトも訓読の変換がでないようなソフトがあればとおもいます。出るや思うと変換されたものを、でるやおもうにもどすのはかえって時間がかかります。

2016/03/26 土曜日 はれ

 パソコンの使用時などに上下歯を接触させるくせTCHが、歯だけではなく歯周組織、顎を動かす筋肉、顎の関節にまで悪影響を与えているといわれています。この癖をとるために、歯を離すと書いたメモを見たときに歯を離すようにすると効果が高いことを実感してきました。最近はそれに加えて前歯で舌を挟んで微笑む(下川先生提案)と食べ物を前歯で噛み切る習慣(石幡先生提案)を付け加え、3点セットで歯を離し、顔面の筋肉をリラックスさせることを提案しています。お試しください。さらに、上向きでねること、ふろで体を温めることも大切です。食べ物ではセレトニンをつくる栄養素が含まれるバナナがいいかも。ただし、これは週刊誌情報。

2016/03/21 月曜日 晴れ

 顕微鏡下で、切れた神経をつなぐ手術の世界的権威である和歌山県立医科大学藤田教授の講演会。手術は14時間ぐらいかかることもあるが、保険点数は7000点(7万円)しかないという。和歌山では県の条例で自費になったようですが、それでも米国の半分以下だとのこと。米国では手術料だけで200万円。吻合手術でも完全に元に戻るわけではなく事故を起こさないことが大切だが、万一しびれが出た場合は検査をして記録しておく必要があると強調された。

 BSで再放送されていたthe real voice アメリカの本音が実に面白かった。大学で銃乱射事件のあったバージニア州からはじまり黒人暴動のあったミズーリ州ファーガソン、シェールオイルバブルの崩壊したテキサス州、学生が多くサンダースが人気のあるマサチューセッツ州の大衆食堂に集まるアメリカ人の本音が実に面白い。テキサスで石油を掘っていたが、失業した男性の歯がないように見えた以外は皆きれいな歯をしていたのが印象的。医療も含めて貧富の差の大きさに大衆の憤りが充満しており、今アメリカは大きく変わろうとしているように思えた。政治革命が必要だと唱えるサンダースが若い学生に人気があるのがその象徴。

2016/03/16 水曜日 晴れ

 豊福先生の講演で知った『内科医のためのこころの診かた』を読む。「精神疾患さもなければ身体疾患。身体疾患さもなければ精神疾患という二項対立」の考え方は危険であり両方にり患しており、それらが相互に作用して病状を悪化させている可能性がある。(中略)医学的に説明困難な症状(Medically unexplained symptoms;MUS)を有する患者は多くみられる」との記述に納得。それに加えて歯科では三叉神経末端の歯髄をとることによる神経障害性疼痛が加わるためさらに複雑になります。

2016/03/13 日曜日 晴れ

 豊福明東京医科歯科大学教授の歯科心身症に関する講演会。歯や舌に痛みや感覚異常を訴えて歯科を受診する患者さんの中に、かなりの割合で歯科心身症と呼ばれるケースが含まれている。医療センター、高知大学医学部、高知市歯科医師会の共催で行われたが、医療センターのドクターが医師も聞くべきだったと感想を述べていました。

2016/03/10 木曜日 うす曇り

 歯の神経(歯髄)は脳神経(三叉神経)の末端ですので、神経をとると断端で外傷性の炎症が生じてシツコイ痛みの続く神経障害性疼痛が起きることがありえます。また中枢と三叉神経の間は伝達物質が刺激を伝えているため、神経伝達物質の不足をきたして、うつ病の薬が有効な状態になることもあり得ます。この神経を切断したことによる痛みに加えて細菌感染が起きると普通の根の治療では治らない難症例になってしまいます。歯科治療で治せるのは細菌感染による炎症性の痛みだけですので神経障害性疼痛や神経伝達物質の不足による心因性疼痛がある場合は疼痛専門医や精神科医と並行して治療する必要がありそうです。歯科心身症の専門家は、手を付けないのが一番だといいます。3軒以上の歯科で治療を受け治らないケースは歯科治療では治らないという専門家もいます。根の先に暗影がある場合は炎症性の疼痛があると判断し治療にかかりがちですが、それも3か月を超えて痛みが続いている場合は歯科治療単独では治らないと考えて最初から疼痛専門医との連携が必要だと痛感します。ウイルスが関与していることがあるという疼痛専門医もいます。

2016/02/27 土曜日 曇り

 インプラントは問題がなく経過しているが、その隣の歯が破折し抜歯せざるを得ないケースが増えてきています。インプラントは虫歯にならないことに加え、破折のリスクも根の治療をした天然歯よりもはるかに少ないようです。問題は歯周病とおなじようなインプラント周囲炎です。

2016/01/31 日曜日 晴れ

 学園短大の就職フェアに行く。下川公一先生の『歯科医院の発展とその心技体』が昨日届き読んだばかりだったので、思うところが多々ありました。下川先生は主催する勉強会で、臨床を突き詰めると基礎学問の知識が必要になり、自分の臨床に真摯に取り組まなければ医院経営(自らの生計を立てスタッフと家族を食べさせていく)のできない時代になっていると教えているようです。歯科臨床に対する厳しい姿勢、情熱、迫力、信念が全編にほとばしり、なんとも魅力的な一冊になっています。

 具体的な技法では、上下の歯の間に軽く舌をはさんでスマイルする癖をつけるとクレンチングが収まるとの記述に興味をひかれました。当院では顎関節症や咬合性外傷のある患者さんに歯を離すよう話していますが、単に離すよりもスマイルするほうがさらにいいかも。もっとも職場で知らない人が前にいるときこれをやると誤解を招きかねませんが。

2016/01/21 木曜日 曇り

 かみ合わせの記録をするとき、板状のワックスを上顎全体に渡して行うと普通はに押されて上向きに凹みます。同じことを反対咬合の患者さんで行うとワックスは下向きにへこんでしまいます。舌の位置は上あごに接していて歯列に外向きの圧力がかかっているのが正常ですが、舌の位置が低い場合は上の歯列に内側から舌の圧力がかからず、上の歯列が小さくなって反対咬合になることになります。舌は上にあげましょう

2016/01/04 月曜日 晴れ

 徳島大学歯学部の松香教授が「臨床家への提言」と題してとてもいいことを書いています。「臨床における真実は先生自身の診療室から得られるデータであるので、自身の治療成績をみつめ直されることが必要である。そのためには臨床疫学研究の考え方を少し学ぶ必要があるが、診療室での治療実績をまとめることが重要である」また、非歯原性歯痛や咬合違和感に対する知識を取得されることも重要である。The Quintessence.Vol.34 No3/2015-0576

2016/01/02 土曜日 晴れ

 新年おめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。西秦泉寺に移転開業して今年の3月でまる五年になります。お陰様で大変忙しく、毎年800人以上の初診の方をお迎えしてきました。そのため、根の治療の途中で治療が中断されても、当院から連絡を取ることはせず、待ちの姿勢をとってきました。ところが昨年、23年経過してから再来院され、虫歯が大きく進んで抜歯になったケースがかなりありました。その反省を踏まえ、もう少しNBMNarrative- based Medicine)を心がけたいと思っています。

2015/12/22 火曜日 晴れ 冬至

 Professional Dentistry 5 木原他著で二人の米国人の名前を知りました。一人はダニエル・ピンク もう一人はFrank Spear.大いに刺激を受けましたが、それについては後日。野口悠紀雄『超情報革命が日本経済再生の切り札になる』このままでは日本経済は中国化する!を読む。成長するアメリカと停滞する日本という論旨は少なくとも歯科医療に関してはその通りだといえます。がんの治療に関しても米国では遺伝情報を使い、個々の患者にあった治療法Precision Medicineに向かっているが、日本のがん治療はガイドラインに基づきマニュアル化しているのだといいます。とんでもない治療が跋扈しかねない分野なので仕方がないのでしょうか。遺伝子解読の費用も10億ドルから200ドルまで下がり、医療は大変革の前夜をむかえているようです。

2015/12/07 月曜日 晴れ

 昨日は歯内療法専門で開業されている井澤先生Endodontic Microsurgery(顕微鏡下で根の先を3o切除して病巣を取り除き3o逆根充をする手術)の講演会。上顎第一大臼歯近心頬側根が2根管である確率は80%もあり、そのうちの30%?は根管治療できない根管だとのことに驚く。木ノ本先生の本には50%程度とあったので質問したところ、引用文献によって違うだろうとのこと。そうなると第一大臼歯の根管治療は24%(1/4)は最初から失敗するということになります。また、歯が原因の上顎洞炎は上顎洞炎全体の40%もあるとのこと。

 根尖切除(逆根充)術に顕微鏡を使った場合、根の破折を発見することがあるとのこと。拡大鏡では見えない破折が顕微鏡では発見できることが、顕微鏡と拡大鏡の成功率の差であるように思う。破折を発見した場合は抜歯になるが、拡大鏡では破折に気付かず逆根充をしてしまうことになるのでその分予後が悪くなってしまいます。しかし、根切した断面をメチレンブルーで染め出し、マイクロサージェリー用のミラーで切断面を観察して根尖の窩洞形成を超音波でおこない、逆根充材にMTAセメントを用いれば、昔のエンジンで窩洞形成してアマルガムを逆根充材として使う場合よりは成功率は高い。

顕微鏡は展示されていたもの750万円するので、保険診療には向かないなあと感じました。井澤先生はもちろん保険診療はしていない。しかし、とても率直なお人柄の先生であり、刺激的な講演会でした。一人で何回も質問したのですが、嫌な顔一つせず、明確なお答えいただいたことに感謝です。

@    上顎第一大臼歯近心頬側根が2根管である確率

A    術中に歯根破折が見つかった場合抜歯になるのか?

B    2根管が根尖で一つになっている場合、一根管をしっかり根充すれば治るのではないか?

C    根尖のレッジ形成を防ぐために10のファイルを根尖から1o出して回転させるという方法をどう評価するか?

D    30年以上前になるが、Kim先生がBender先生と一緒に来日したとき、麻酔のあと15分は歯髄の血流が減少するのでその間は歯を削らないほうが良いと聞いたことがあるが、最近話題にならないのは?

E    再植ではときに癒着することがあるが、癒着を防ぐ方法はないか?

6回も質問したようです。ありがとうございました。

2015/11/29 土曜日 晴れ

 中学生のころ地図を見ることが好きでしたが、北アフリカから中東の国境線が直線であるのを奇異に思ったことを記憶している。なぜ直線なのかを知ったのはずいぶん後のことになる。オスマントルコ帝国の解体の原因になった第一次世界大戦から百年が過ぎ、中東・トルコ・ロシア・ドイツなどが第一次世界大戦前の地政学的な状況に戻りつつあるのではないかという気がする。そんなこともあり『大世界史』を買ってきた。現代ギリシャ人は古代ギリシャ人とは関係なく、DNA鑑定をすればトルコ人だといった全く知らなかったことがたくさん書いてあり面白い。しかしイラン(ペルシャ)人がアラブ人ではないことを知らない国会議員がほんとうにいるんでしょうかねえ。いくら何でも政治家を馬鹿にしたエピソードにおもえるのだが。

2015/11/12 木曜日 晴れ

 歯の付け根がくさび状に欠ける症状(楔状欠損)100年以上前から歯磨き粉の使い過ぎだといわれてきました。私が開業した35年前頃から、いやあれは咬合力(かむ力)が強くかかって歯がたわむためだ、歯ブラシで鋭いくさび状に欠けるわけがないという説が有力になってきていました。しかしながら2006年に出た論文で、歯磨剤を使った歯磨きが原因であるとされ、100年前の説に回帰しています。私自身歯磨剤はめったに使わず、縦磨きをしているためか、楔状欠損はありません。また、歯ぎしりをしていた兆候があるにもかかわらず楔状欠損はないので私の歯については咬合力説は疑問です。そこで昨日から歯磨剤を使って横磨きをしています。何年かして楔状欠損が現れれば歯磨剤を使った横磨きが楔状欠損の原因であると実証できると思います。

(1)             Miller: Experimets and observations on the wasting of tooth tissue variously designated as erosion, abrasion, chemical abrasion, denudation, etc. 1907.

(2)             MaCoy: On the longevity of teeth. 1983

(3)             Dzakovich: In vitro reproduction of the non-carious cervical lesion.  2006

2015/11/04 水曜日 晴れ

 外国人が見た日本人の口についてのアンケートがネットに出ています。昔から言われてきたことですが、芸能人を除けばあまり改善しているとは言えません。これは顔を近づけるあいさつの習慣のないことが根本的な原因であるように思います。

2015/11/03 火曜日 文化の日 晴れ

『小泉今日子の書評集』を読む。期待していた以上に中身が濃い。97冊の本を読んで感じたことを自分の体験、記憶と突き合わせながら紹介している。下記の本で、小泉今日子は高度のメタ認知能力があるとあります。確かに小泉今日子は自分を知っている。自分を正しく知ることは「汝自身を知れ」と言った古代ギリシャの賢人を持ち出すまでもなくとても大切だ。この本には、読んだ本に触発されて自分を見つめなおしている小泉今日子の内面が素直に描かれており、それが読者の記憶や感情と共鳴する。ベトナム旅行中の娘にlineで勧めたところ「父、キョンキョン好きすぎる」と返ってきた。

2015/11/01 日曜日 晴れ

 『あまちゃん』で、娘(能年怜奈)が芸能事務所を解雇されたとの電話を受け、事務所の太巻き社長に掛け合うために上野に降り立ち、キャリーバッグをひきながら事務所に向かう小泉今日子は感動的なまでに格好良かった。これに匹敵するのは高倉健と池辺良が、雪の舞う中理不尽な仕打ちを受けた組に向かう昭和残侠伝の有名なシーンしか知らない。もちろん演技だが、ほかの誰がやってもあれほどぴったりハマることはなかっただろう。『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』を一気によむ。小泉今日子の存在そのものが実にすがすがしいことがわかる。読売新聞に10年間書いてきた書評を集めた本が発売された。明日アマゾンから届く予定。

 医療安全の講習会に出席。

2015/10/13 火曜日 晴れ

 Windwos10にアップグレード。今まで通り使えるのかテスト。特に問題はない。

2015/09/07 月曜日 曇り

 同窓会の会議があり、卒業以来37年間訪れたことのなかった小倉に行きました。新幹線は40年前に開通していましたが、駅そのものが大きく変わっており、同行していたO先生がいなければ迷うところでした。昔よく通った金栄堂書店はなくなっており、西鉄電車の線路のなくなった通りは広くきれいになっていました。歩いて一キロ少しの会場のホテルまで歩きましたが、魚町から大門までの通りは井筒屋が唯一昔の面影を残しているぐらいで様変わりしていました。会議のあったホテルのすぐ近くに家庭教師のアルバイトをしたことのある藤島君の父上が開業していた神経内科と循環器科のクリニックがありました。医院は休みでしたが、すぐそばに新しいクリニックが建設中でした。

 同窓会の懇親会では26期の同級生が6名もいて、懐かしく話をすることができました。それぞれ元気で各地で活躍しているようでした。中には子息がGreeNのメンバーだというH君もいました。

2015/091/01 火曜日 雨のち曇り

 九州歯科の後輩からの電話が続きました。一人目は、腰を痛めて数年前に診療所を譲り、悠々自適の生活をしていたF先生。旅行も行き尽くして飽きてきたので、昔務めていた東京のT先生の所で、パートで働くつもりだとのこと。もう一人は大学教授のF先生。31歳のご子息が会社を辞めて、歯科大学に入ることになりそうだが、一般開業医の将来はどうだろうかとのこと。10年ぐらい前から、開業歯科医の苦境が経済雑誌などで取り上げられ、歯科医は年収300万円以下のワーキングプアとまで言われてきました。それに対して、歯科大学の定員削減、国家試験の合格者数の制限。女性歯科医の増加などの対策が少しずつ効果をあらわし、昨年あたりに底を打ったのではという見方もあります。厚労省は国家試験合格者数を2000/年程度に絞っていますが、将来はこれを1600人程度まで減らす方針だといわれています。日本の人口も減少しますので、国民の口腔衛生思想が向上し、家庭療法が隅々までいきわたれば、それでも歯科医は過剰になるかもしれません。技術向上を怠らず、設備を整え、誠実に治療にあたるしかないと思います。

小泉今日子はコーセーのCMに明るい笑顔で出ています。一安心。

2015/08/03 月曜日 晴れ

 NHK BSで再放送されている『あまちゃん』が面白い。二年前に放送されていたときは観たことがなかったのですが、週刊誌の能年玲奈に関する記事を読んでから毎日見ています。小泉今日子、片桐はいり、ピエール瀧、太巻き役の古田新太、薬師丸ひろ子ら私の好きな女優・俳優が、複雑に込み入った人間関係の設定の中で笑わせてくれる。今朝も寿司の親方役のピエール瀧が驚いて握っている寿司を放り投げた場面で飲んでいた茶を吹き出してしまいました。今週は面白くなりそう。

現実の能年玲奈は事務所ともめているとかでテレビで見ることがほとんどないが、それをかばっている小泉今日子も最近出番が少ないように感じるのは気のせいだろうか。あれだけの実績のある小泉今日子がこのまま消えることはないと思うがちょっと心配。

2015/07/30 木曜日 晴れ

 骨粗鬆症の治療薬を服用しているため、抜歯などの侵襲的な歯科治療のできない患者さんが今週だけで3人もおいでになった。そのうちの一人はビスフォホネートからビタミンD誘導体に薬を変更するとの紹介状があった。あとの二人は、骨量は減っていないが予防の為にと言われて服用していた。歯科医の立場から言えば、歯科の治療に差しさわりのない薬で代用できるのなら最初からそうしてももらいたいし、予防の為に骨壊死の可能性の高くなる薬を服用させる理由が理解できない。歯の残っている高齢者はいつ抜歯せざるを得なくなるかわからないのだから。日本以外でこれほどビスフォスホネートが使われているかどうか調べてみたいと思っている。抗生物質の乱用と同じく、医療費が安いことの弊害の一つかもしれません。

2015/07/28 火曜日 晴れ

 やっと梅雨が上がったようです。長雨で、当院の芝生の駐車場は雑草と黒いキノコみたいなもので覆われてしまいました。芝生の管理が難しい為、8913日を夏休みとして、その間にセメントにする工事をすることにしました。よろしくお願いいたします。

2015/07/12 日曜日 雨

 妊婦の歯周病予防対策研修会。歯周病のある妊婦の早産リスクが上がることが問題になっており、熊本では産科と歯科の連携でデータを集めているとのこと。妊婦に対する薬について高知大学医学部の渡邊先生は、当院でも使っている抗菌剤(サワシリンやジョサマイシン、ジスロマック)や痛みどめ(カロナール)麻酔液のキシロカインは安全。ロキソニンは注意が必要とのこと。レントゲンも問題なしとのこと。

2015/07/07 火曜日 曇り

当院の取り入れている技術や材料についての話題を二つ発見。一つは、星野歯科駒沢クリニックの星野先生のブログ。(大変面白いので密かなファンとして、毎日のようにチェックしています)昨日はモリタのホームポジションの研修会の話が載っていました。ミラーを見ながら歯を削るテクニックを京都の小佐々先生に教わりました。おかげで背中を曲げて口の中を覗き込む診療とは無縁で、腰を痛めることもなく診療できていることは誠にありがたいことです。診療者の体が楽なだけではなく、仕事の質にも関係します。上の奥歯の噛み合わせ面や歯と歯の間もミラーで見ながら正確に削ることができます。上顎の奥の詰め物が外れて来院された患者さんが持参したものを見ると、広く薄い詰め物(インレー)がほとんどです。最低1.5mの平行した面のあるインレーでないと接着性セメントでも外れてしまいます。また上顎大臼歯の根の治療をするときの根管の入り口の探索もミラーなしでは困難です

もう一つは、モリタのデンタルマガジンに載っていた山崎先生とChiche先生との対談、Chiche先生は大臼歯補綴の80%セントにオールジルコニアを使っているといいます。その理由は歯の削除量が少なくて済むこと、強度があり、セメントが簡単なことの二つをあげています。当院もオールジルコニアを導入してから3年になりますが大いに気に入っています。なおセメントもSAセメントプラスオートミックスを使っています。ただし、保険のCAD/CAM冠は外れやすいので3Mのアルティメイトセメントを使っています。

2015/06/18 木曜日 雨

 日本人の女性の歯ぐきは薄いので強い力で磨くと歯ぐきが痩せて根が露出し、知覚過敏で凍みることがあります。ブラシを当てると痛いので清掃が不充分になり根の虫歯になることもよくあります。やわらかめの歯ブラシで100g程度の力で磨くのがよいとされていますので、家庭用の秤で100gのブラシ圧を経験してみるのもよいと思います。そしてブラシはペングリップで握ることが大切です。パームグリップではどうしても力が入りすぎるようです。磨けていない場合が多いのですが、磨きすぎで歯肉が痩せてしまうのも将来的には問題があります。難しいものです。

2015/04/21 火曜日 晴れ

 当院がインプラントを取り入れてから20年以上になります。最近、インプラントは何ともないのに天然歯が破折や虫歯で抜歯に至るケースを時々経験するようになりました。インプラントの最大の特長は虫歯にならないこと(モートン・アムステルダム)ですが、歯周病と同じく、インプラント周囲の骨が溶けていくこと(インプラント周囲炎)になる可能性はあります。しかし、インプラント入れた患者さんはしっかりとしたプラークコントロール(家庭療法)を身につけている方が多いため、インプラント周囲炎になることは珍しいのが現実です。そのため、臨床の現場では、インプラントが天然の歯よりも長持ちするのだと思います。徳島大学の宮本教授は講演で「東京歯科大の小宮山先生のセミナーで、天然歯よりもインプラントがよいという話を聴いたときはとんでもない話だと思ったが、最近では、破折や齲蝕のリスクを抱えた歯は抜いて、インプラントにするほうがよいと思っている」とおっしゃっていました。インプラント治療の最大の欠点は、高額な治療費です。

2015/04/12 日曜日 曇り

 先日の高知新聞に予防の記事が載っていました。それに関連するネットの記事がありますので紹介します。高知新聞の記事にあった「歯をカバーする装置に薬剤を入れる予防法」は、しっかりとした家庭療法の実践が前提になっています。特に舌が歯周病菌の巨大な供給源になっていると述べられている点にご注目ください。

2015/03/29 日曜日 雨

 根の治療の途中で来院が途絶え、12年経ってからおいでになった時には、根の中の虫歯が進行し、抜歯せざるを得なくなっていることが時々あります。補綴物の型取りの後、来院が途絶えている場合には電話連絡していますが、それ以外の場合は、事情があって他院で治療をされているかもしれませんので、連絡を取ることはしていません。他院で治療を続けている場合は問題ないのですが、そうでない場合、根の中は虫歯が進行しやすい為、中断の期間がながいと抜歯になってしまうことがあります。残せたはずの歯を失うのは何とも残念なことです。

2015/13/15 日曜日 雨

 小笠原諸島近海に赤サンゴを盗りに来た中国漁船は引き上げました。赤サンゴは土佐湾で最初にみつかったため、ヨーロッパでは赤サンゴのことをTosaと呼んでいたといいます。高知は赤サンゴの名産地だったようです。30年ほど前、森克栄先生が講演で来高した時、奥様用に赤サンゴを求められて、福井にあったサンゴの加工場に行ったことがあります。その工房で加工に使うエンジンがドイツのカボ社の歯科用のエンジンだったので、森先生と工房のご主人が、カボじゃないと駄目だと語り合っていました。昨年、当院の技工室で使っていたカボのエンジンが不調になり、買い替えることになりました。日本のエンジンも検討しましたが、結局またカボのエンジンにしました。診療室で使う5倍速エンジンもカボのものです。自動車はドイツ車に引けを取らないと思いますが、歯科用器具の分野ではまだまだ追いついていないようです。

2015/03/12 木曜日 晴れ

 米国の医療費はとても高く、重い病気になると破産してしまうほどだといいます。歯科治療費も当然高く、根の治療費が一本10万円以上かかるようです。そのためか、予防の意識が高く、口腔清掃は極めて良好です。当院で治療をした米国人は数人ですが、皆とてもきれいな歯をしていました。自費治療を受けた患者さんの口腔清掃がよくなるのはしばしば経験します。その結果、口腔の健康が長期間保たれるとすれば、その時は高いと感じても、長い一生の歯の健康という観点からすれば、かえって安上がりだとも言えます。審美性だけでなく、清掃しやすく、奥歯を守るアンテリアガイダンスのある歯列を作る矯正治療や、精度がよく、見た目も自然で、アレルギーの心配もないジルコニアなどの自費治療がおすすめかもしれません。

2015/03/08 日曜日 晴れ

 『エンド難症例への挑戦』小林千尋『よい義歯 だめな義歯』鈴木哲也とを読む。昭和40年代以降米国の歯科医療を取り入れてきた日本の歯科医療は、国民皆保険という米国にはない医療保険制度のなかで、米国で行われている標準的な技術では治すことが困難な症例を多数作り出してしまった。一つは治療がなされているが、根の先に病巣ができている根の治療であり、もう一つは極端にあごの骨が吸収してしまった無歯顎(歯の一本もない)患者だという。※

米国においては根の治療や固定式の冠は治療費が高いこともあり、治療費が払えない場合、比較的早期に抜歯し義歯にするので、日本で見られるような極端にあごの骨がなくなったケースは見られないとのこと。また、根の治療も日本の10倍程度の治療費をかけて確実な治療が行われるか、治療費が出せない場合は抜歯になるため、不完全な治療による再発は少ないようです。治療費が高いので、予防意識が高いのも米国の歯科医療の特徴だと言えます。

日本では、米国の専門医が行っている、米国でも裕福な人たちに行われている歯科治療が目標になってきました。しかしながら、その前提となる医療制度、そこから派生した難しい症例に対処する必要があり、それがこれらの書物が出版される背景にあるとおもいます。

実際のところ、総義歯については鈴木の本にある技術をまねて経験を積めば、保険診療でもかなり良い義歯ができると思います。しかし、根の治療に関しては、小林の本のようにCTで診断し、実体顕微鏡を用い、時には専用の器具で根尖をかきとり、MTAで根充するという治療を保険診療の範囲で行うことは困難です。

当院では、再治療の必要のない治療を行うこと、再治療に関しては抜髄よりは大きく拡大し、次亜塩素酸ナナトリウムでよく洗浄し、水酸化カルシウムを少し押し出す方法で対処しています。

※難治症例(ほとんどは再治療症例)は、日本では非常に多い。また、臨床症状はないものの根尖透過像のある症例は実に多い。日本では保険診療下で安易に抜髄し、不完全な治療をされた症例が多いからである。『エンド難症例への挑戦』小林、戸田より引用

※現代の無歯顎者は高齢であり、何らかの全身疾患をかかえ、複数の薬を服用している。早期に抜歯をすることがなくなったため長く残存歯を有している場合が多く、著名な骨吸収、菲薄な床下粘膜、唾液の減少など、総義歯製作には不利な条件が多い。さらに、フラビーガム症例や顎関節に問題がある症例もしばしばみられる。『よい義歯 だめな義歯』鈴木哲也

2015/02/21 土曜日 曇りのち雨

 アメリカンスナイパーを観に行く。今の日本人にはとても耐えられないような荒っぽく厳しい映像。『硫黄島からの手紙』を作った後のインタビューで、イーストウッドは「戦争は嫌いだと」言っていたと記憶しています。これはイーストウッド流の反戦映画だと思います。

 最近、骨粗鬆症の治療薬を服用しているため、歯の根が割れている場合など抜歯が必要な場合でも、顎骨壊死のリスクがあるため、抜歯できないケースが増えています。整形外科で治療する前には、歯科での治療を終わらせていただきたいと思います。その際、数年のうちには抜歯になるような、根の先に大きな病巣のある歯や親不知、歯周病で動揺している歯などは、予め抜歯をしておけば、整形外科の薬を休薬する必要がなくなります。

2015/01/18 日曜日 晴れ

 医療安全管理の研修会。「安全優先のインプラント」昭和大学歯学部尾関雅彦教授、「HIV診療の現状」高知大学医学部中村美保看護師長、「顎骨壊死について」高知大学医学部山本哲也教授、「歯科医療従事者のための接遇とケア・コミュニケーション」金山九里子先生のご講演。

尾関先生の講演では、骨幅の狭いケースでは、骨造成手術ではなく、骨幅拡大手術を行うとのこと。インプラント同士の噛み合わせと天然歯の咬み合せが混合しているケースでは、天然歯は咬耗すると伸びだすがインプラントは動かないので、インプラントの上部構造が咬耗し上下が当たらなくなったことはないでしょうかと質問しましたが、そのような経験はないのでわからないとのことでした。ただ最近はインプラントの上部構造に破折しにくいジルコニアを使っているとのことでした。当院もこの二年ぐらいはジルコニアにしています。

山本教授の講演では、ビスフォスフォネート製剤の服薬期間が4年未満であれば休薬の必要はないこと。また。4年以上服薬している場合で休薬する期間は2か月と従来より一カ月短くなっているとのことでした。