青木歯科日誌                         高知市青木歯科TOP

07〜08年の日誌

0910の日誌

10/12/5 日曜日 晴れ

 梅棹忠夫『実践・世界言語紀行』をよむ。盧溝橋事件のおきた橋のたもとには清の乾隆帝の筆になる巨大な碑があり、表は漢字だが、裏面には満州文字がきざまれているという。清が満州族の支配する王朝であったことを再認識させられます。ちなみに岡田英弘著『だれが中国をつくったか』によると、清の公用語は満州語、漢語、モンゴル語と三語あり、歴史書もそれぞれの版があるのだという。

10/11/21 日曜日 晴れ

 徳島大学歯学部口腔外科宮本洋二教授の講演会。テーマは外科の基本手技とインプラントでした。不完全な根の治療の歯が10本程度残っている場合、治療費が高額になってもかまわないとおっしゃる患者さんには、全部抜歯してインプラントにするほうがよい。インプラントはそれだけ信頼性がたかいとのこと。そのとおりなのですが、問題は治療費。当院では全部抜歯してインプラントにしたのはお二人だけです。

10/11/06 土曜日 晴れ

 注文してあった本が届いた。『梅棹忠夫語る』と『高田の歯科矯正の学び方 わかる理論・治す技術』の二冊『梅棹忠夫語る』は、いきなり「自分で見たもの以外は信用できない」との話からはじまります。梅棹忠夫ファンにはたまらない本音の話が満載。矯正の本は関心のある部分をぱらぱらと見ただけ。明日からじっくり読むつもりですが、黙読せずに音読せよと書いてあるのにちょっとびっくり。

10/09/23 木曜日 曇り時々小雨

 狂気は個人にあっては稀有なことである。しかし集団・党派・民族・時代にあっては通例である。」(善悪の彼岸)。このニーチェの箴言がぴったり当てはまる報道が多いのに溜息がでます。大阪地検、尖閣諸島、北朝鮮、そしてテレビや新聞の報道そのもの。集団のなかでは、自己保身、組織防衛、出世欲などがないまぜになって狂気の行動に突き進む。嘘も100回言えば本当になると高をくくっているのか?村木さんの件は、間接的にその人柄を知っていたので、誰かにはめられたのではないかと思っていましたが、そうでなければ、検察庁のリークを信じてしまったでしょう。しかし、あらゆることを自分で調べることはできません。すべてを疑うのもたいへんですが、常に「自分がこう考えるようになったのは、その前提があるはずだ」という態度を保つしかないかもしれません。

10/09/12 日曜日 晴れ

 歯間ブラシの弊害だと思われる患者さんにつづけさまに出会いました。予防歯科のページに書きましたが、ブリッジ以外の部分に歯間ブラシを使うと、歯肉が痩せてブラックトライアングルと呼ばれる黒く見える三角形の隙間ができてしまいます。また、長く歯間ブラシをつかっていて歯の根が露出し知覚過敏(びりっと痛い)をおこすこともあります。歯間ブラシは簡単につかえますが、慣れるとついつい使いすぎる傾向があるようです。フロスに変えるのがよいかもしれません。

10/08/30 月曜日 曇り時々雨

 NTTに申し込んであったHPの開設手続きが済み、20時から利用できるようになりました。無料の検索エンジン登録も申請しました。土曜日の九州歯科の同窓会に来ていただいたF歯科大学出身のY先生に当院のHPを読んでいると聞きました。顎関節症のページをお褒めいただきました。Y先生もHPを開設しており意欲的に歯科臨床にとりくんでいることがわかります。HPでの情報発信はますます重要になるように思います。当院のHPは本日からこちらを中心に更新していく予定です。お気に入りに入れていただいている方は変更をお願いいたします。

10/08/19 木曜日 晴れのち曇り

 『DVD版 包括歯科臨床』筒井昌秀/筒井照子を息子と視聴。アムステルダムが世界一だと絶賛したという日本国際歯科大会(06/10/14)の講演記録と翌年1月に行われた対談。02年に刊行された『包括歯科臨床』と一部内容が重複していますが、その質の高い臨床には驚嘆せざるをえません。なかには毎月東京から北九州にメインテナンスに通っているという患者さんのケースもあり、治療に注ぎ込まれた時間とエネルギーに圧倒されます。こんな治療は誰もまねできないとさえおもえます。

 講演の最後で「日本では1980年、森克栄先生がアムステルダム先生に教わって(包括的歯科臨床を)広めた」と述べています。これは九州歯科同窓会主催の大博多ホールでの講演をさしているのだとおもいます。そして「最長で31年、アムステルダム先生の50年には及びません。まだ死ねません」とも。この時すでに体調を崩しており、翌年には亡くなられたことを知っていると何とも切ない一言です。合掌。

10/08/11 水曜日 雨

 『代替医療のトリック』で取り上げられているホメオパシーを信じてビタミンKを投与しなかったため赤ちゃんが死亡したほか、何人もの死亡例があるという。英国政府は、下院委員会が無効だと勧告しているにもかかわらず、患者の選択の自由を妨げるとの理由でホメオパシーを公的医療から外しませんでした。人気取り政策の極みともいえますが、本音は医療費が削減できて幸いだと嗤っているのかもしれません。以前テレビで、京極純一教授が「殿様(権力者)はそれほど庶民のことを考えてくれるものじゃないですよ」といった意味のことを述べられているのを聞いたことがあります。至言です。

10/08/10 火曜日 晴れ

 5月に同窓会主催の学会で高松に行ったときお世話になった先輩の手をみてゴムアレルギーではないかと思い、当院で使っているムツミのニトリルグローブを使ってみてもらいました。先日、指先の切れるのが少なくなったとお礼のメールがとどきました。医療従事者でなくてもゴム手袋で手が荒れている人がかなりおられる気がします。プラスチック手袋に変えると治るかもしれません。

10/08/03 火曜日 晴れ

 今朝のドクターGは、めまい、足が跳ねる感じ、目がかすむ、舌がピリピリ痛いといった症状をもった女性の診断。結論を言うと、これらの症状はいずれも抹消神経の異常でビタミンB12の欠乏が原因だという。なぜビタミンB12が胃の切除をしていなくても起きるかというと、日本人二人に一人が持っているピロリ菌による胃粘膜の萎縮が根本的な原因だとのこと。ピロリ菌の感染率がこれほど高いと、相当広くビタミンB12欠乏による神経症状が蔓延していても不思議でないと思いました。

10/7/28 水曜日 雨

 『口腔顔面痛を治す』を読む。「口腔顔面痛学は1990年代にアメリカで発達し、日本には今世紀になって入ってきたばかりの歯科医学の新しい分野」なのだという。非定型歯痛や非定型顔面痛、舌痛症などの歯科独特の病気に三環系抗うつ薬が効くことがわかっているが、歯科医は抗うつ薬を処方することができないので医師に依頼して抗うつ薬を処方してもらわなければならないのが問題だとも。

 上記の症状で悩んでおられる患者さんのみならず医師、歯科医師にも読んでいただきたい一冊です。なお、同じ著者によるもう少し専門的な『口腔顔面痛を知る』もあります。

10/07/26 月曜日 晴れ

 歯科でパノラマと呼ばれているレントゲンを撮影することがあります。埋伏した智歯や上顎洞炎の疑いのある場合に特に有用です。歯科医はパノラマ無名線と上顎洞後壁も必ずチェックしています。ある重大な病気の可能性を否定するために。母校九州歯科大学の放射線教室がパノラマの見方をインターネットに公開しています。大変わかりやすいので一度ご覧になってください。

10/07/25 日曜日 晴れ

 「問診はものすごく切れの良い武器だ」生坂政臣。激しい腹痛のあるケースで、麻薬系の鎮痛剤の飲みすぎで脳が鎮痛剤を求めて腹痛を引き起こしているとの診断にはおどろきました。歯科口腔領域では薬物乱用頭痛が知られており、顎関節症と診断されてスプリントを入れているケースがあるとの報告があります。(『口腔顔面痛を知る』井川雅子ほか)

10/07/22 木曜日 晴れ

 頭から首にかけて痛いという患者さんがおいでになった。脳神経外科でCTをとったが異常なしと言われ、次に耳鼻科に行ったがそこでも異常はないと言われたという。右の臼歯に打診痛があり、また右の側頭筋(頭の横の筋肉)、顎二腹筋後腹(あごの下の筋肉)胸鎖乳突筋(耳の後ろから鎖骨にかけての筋肉)、首の後ろの筋を押すと痛みがありました。パノラマレントゲンでは右の上顎洞に不透過像がありましたが、鼻の症状はありませんでした。これらの所見から顎関節症T型(筋性顎関節症)と判断し、寝る姿勢(右を下に寝ている)、授乳姿勢(いつも右手に抱えて授乳している)などの態癖の改善を指導して様子を見ることにしました。

原因不明の頭痛、顔面痛は顎関節症のことがあります。非定形口腔顔面痛や自己免疫病の側頭動脈炎との鑑別が必要ですが、側頭動脈炎は稀な疾患であり、筋肉に圧痛のある場合は顎関節症の可能性が高いようです。

10/07/15 木曜日 雨

 朝のNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』にはまっています。ドラマに出てくるゼタ(ガロ)を読んだ世代ですので、ガロの編集長少年マガジンの編集長のその後が気になりインターネットで検索してみました。大作家も周囲に助けられて現在があるのですね。もちろんご本人の才能と努力がなければどうにもなりませんが。家内は三浦太陽の演じている役柄を鬼太郎に出てくる「ねずみ男」だといいます。確かにねずみ男の小狡さ、リアリストぶりを発揮してドラマを盛り上げています。「ねずみ男」は「鬼太郎」のアンチテーゼとして取り上げられていたと思いますが、実は一人の人格の中にねずみ男と鬼太郎が同居しており、その割合とどちらが表に出ているのかが現実の人間だと思うようになったのが、昔と違うところです。

10/07/06 火曜日 晴れ

 梅棹忠夫氏が老衰で亡くなった。40年ほど前、高知大学の図書館で借りた『日本探検』を読んでファンになり、後年、大阪にある民族学博物館に行ったこともあります。家の引っ越しの準備で、若いころ読んだ吉本隆明全著作集も江藤淳も高橋和己全集もすべて古書店に売りましたが、梅棹忠夫著作集だけは残しました。どうして、図書館で日本探検を手に取ったかは記憶にありませんが、当時、ベストセラーだった『知的生産の技術』を読んで、著者の名前を知ったのだと思います。『日本探検』の表紙が黒かったことを覚えています。文明の生態史観はまだ単行本では出版されていませんでした。当時、夢中で読んだ西堀栄三郎の『南極越冬記』は、西堀のメモを元に梅棹が書いたのだということを、ずいぶん後で知りました。今日は久しぶりに『文明の生態史観』を読みなおしたいと思います。

10/05/30 日曜日 晴れ

 大阪大学大学院教授前田芳信先生の入れ歯についての講演会。歯の欠損を拡大しない(今以上に歯を失わない)ためには、インプラントの活用とメインテナンスのための定期的な来院の徹底が大切とのお話であった。臨床ヒントがいくつもあり、大変良い講演会でした。

なるほどと思ったのは、矯正やインプラントをしたあとで顎関節症状の出ることがあるのは、やる前から関節円板の転位が隠れていることが原因だと思われるため、術前に顎関節のMRIを撮影するようになっているとのお話。また、アメリカでは、インプラントで一番問題になっているのは天然歯とインプラントの間に隙間ができることという話も興味深かった。

天然の歯は噛んでいるうちに接触点が擦れあって磨り減るため、生涯で歯列が3ミリほど短くなるといわれています。しかし、天然の歯は奥歯が前方に移動する性質があるため隙間が出来ることはありません。一方、インプラントは移動しないためインプラントと前の歯の間に隙間が出来ることになります。

また天然歯はかみ合わせの部分が磨り減ると延びだしますが、インプラントは伸びださないため磨り減りやすい材料を用いるとかみ合わなくなることになります。インプラントそのものは長持ちしますが、上にのせる補綴物は時々補修や作り直しが必要になるゆえんです。当院ではこれに対応するために、インプラント上部の補綴は仮着用セメントでつける術者可撤式(時々はずすことができる方式)にしています。

※ポッセルトの教科書には10ミリ短くなると書いてあったと記憶にありますが、確かではありません。

10/05/23 日曜日 雨

 昨日から高松で四国地区九州歯科同窓会の会合。今日は筒井照子先生の講演会。演題は「咬合崩壊を考える−歯科界における生活習慣の大事さについて−でした。大変示唆の多い講演でした。まず、患者さんの姿勢と顔をよく観察することが大切であり、そこから歯科には無限の可能性が広がってくると強調されていました。

10/05/09 日曜日 晴れ

高知口腔科学研究会主催のドライマウス(口腔乾燥症)の勉強会へ。いい薬がありますが、保険診療では適応に制限があり、口が乾く人全員に出すことはできません。自費ならば出すことができますが、かなり長期間服用する必要がありますので、患者さんの負担が大きくなってしまいます。 

10/05/05 水曜日 晴れ こどもの日

 歯科心身症のサイトにリンクしました。舌痛症に代表される歯科心身症には抗うつ剤が効くようです。抗うつ剤には鎮痛効果があるので、鎮痛剤として抗うつ剤を使うという。このサイトは小倉の藤島先生に教えてもらったサイトを見ていて見つけました。

10/04/19 日曜日 晴れ

 高知市の安心センターで大久保日歯会長の講演を聴く。なかなかよいお話でした。講演内容の一端がのっている日本歯科医師(生きがいを支える国民歯科会議)にリンクしました。

10/04/18 土曜日 曇り

 アトリエMを更新しました。患者さんに頂いた猫の写真をアップしました。猫にも表情があることがわかるとてもいい写真です。ぜひご覧ください。

10/03/08 月曜日 曇り

入れ歯の違和感を訴えておいでになった患者さんの口腔を見ると唾液が少ない感じがしました。目も乾燥しているとのことなのでシェーグレン病の疑いもありました。内科で高血圧の薬と睡眠導入剤を服用されているので、薬を替えられないか相談してもらうことにし、とりあえず唾液腺のマッサージをして様子を見ることにしました。唾液が少なくなったのが原因で、入れ歯の具合がおかしくなることがよくあります。

10/02/28 日曜日 晴れ

 『代替医療のトリック』をよむ。(はり)、カイロプラスティック、ホメオパシー、ハーブ療法のほか、アロマセラピー、指圧、マッサージ療法、スピリチュアル・ヒーリングなどに科学的な根拠はなく、もし有効だとすればそれはプラセボ効果に過ぎないと指摘しています。通常の療法で治らないとき、一種の民間療法に頼ってしまうことはよく見聞きします。しかし、首へのカイロプラスティックが脳卒中を起こした例もあるといった副作用は代替医療にもあることを知っておくべきだと思います。

イギリスではチャールズ皇太子が代替医療に肩入れして、通常医療との統合医療を推し進めているといいます。わが国のリーダーも施政方針演説で統合医療を推進すると言ったとかで、厚生労働省がプロジェクトチームを作ったようです。アマゾンのカスタマーレビューに、「鳩山首相に読んでもらいたい」とありましたが、同感です。

10/02/25 木曜日 曇り時々雨

 「いまの人たちは、原始民族をいちだん低く見ようとしたがる。なるほど、彼らは、集積回路を使った小型コンピュータも作れないし、ジェット機で太平洋をひと飛びにする技術もない。しかし、それらのことができないからといって、原始民族の芸術が現代芸術よりも低い水準に在るときめつけるわけにはゆかない。・・・わたくしは、原始心性に根ざす季語がほそぼそながら活性をもつ俳句に、日本人としての大きい誇りを感じる。」「幸福はそれをもたない人だけに見えるものである」

父母(ちちはは)のしきりに恋し(きじ)の声 芭蕉

(すみれ)ほどな小さき人に生まれたし 漱石

何ごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる 西行

小西甚一『俳句の世界』から、これはとおもう箇所を抜き出しました。すっかり文芸づいています。

10/02/20 土曜日 晴れ

 今週、顎関節症の患者さんが4名もおいでになった。あごの音がする患者さん1人(顎関節症Va)、口が開かなくなり無理にあけようとするとあごの痛い患者さん2人(顎関節症Vb)、あごを動かす筋肉の痛い患者さん1人(顎関節症T型)。日本人の四人に一人は顎関節症だという文献もありますが、これほど立て続けにあごの関節に問題を抱えた患者さんがおいでになった週はありませんでした。

10/01/29 金曜日 曇り

 オバマ大統領が「銀行救済はみんなが嫌だった。私も嫌だった。虫歯の根の治療ぐらい不人気だった」We all hated the bank bailout. I hated it. You hated it. It was about as popular as a root canal.と演説したという。(高知新聞朝刊)。歯科医療の中で最も歯科らしい分野が根の治療(歯内療法)であり、歯を残すために最も大切な分野のひとつです。しかし、患者さんにとっては世界中どこでも最もいやな治療なのだとわかります。確かに時間がかかり口を開けっ放しでつらい治療であることは間違いありません。最近はエンジンを使って効率的に治療できるようになっていますが、早すぎると複雑な根の組織を全部とることができずに問題が起きることもあります。

10/01/28 木曜日 曇り

 一ツ橋保育園で歯の検診。ニコニコしながら椅子に腰掛け大きく口を開けるかわいい子供たち。その未来に幸の多いことを願わずにはいられない。

 家に帰りテレビを見ながら手近にあった山田風太郎の「人間臨終図鑑」をよむ。明治天皇、森鴎外らが今の私と同じ年齢の60歳で亡くなっている。

 09/11/15 日曜日 曇り

 今日は比島にある歯科保健センターの当番医。センターのある歯科医師会館に着くと、駐車場でキジ猫があくびをして日向ぼっこをしていました。あまり目つきのよくない猫でしたが、頭をなでて持っていたパンをやっていると、管理人の奥さんが柚子はいりませんかとおっしゃる。遠慮していましたが、来年4月に歯科医師会館は市民病院跡にできる「安心センター」に移るため管理人さんも来年三月までのことで、ありがたく頂戴することに。物部で取れた無農薬の柚子を絞ったものをご自分で絞ったものだとのこと。夕食は早速これを使った散らし寿司。暖かい気持ちに感謝しながらいただく。患者さんは4名で、虫歯の痛い患者さんが3名。

09/11/05 水曜日 晴れ

 日本歯科医師会雑誌に広島大学の赤川安正先生がいいことを書いています。以下引用です。

 「患者が困っている問題はどのようなことであり、治療に何を望んでいるのか、患者の話す”語り”によく耳を傾けながら共感を持ってそれらを受け止め(これはナラティブベイスド・メディシン、NBMと呼ばれる)、さらに、考えられる治療法のエビデンスを集めて(科学論文を探して、読んで)よく吟味して、患者の問題に当てはめていきながら、患者との話し合いの中で治療法を決定していく(これはエビデンスベイスド・メディシンEBMと呼ばれる)そして、治療法が決まれば、その時点で最も標準的な手技でそれを実行していく。このプロセスこそが、今求められている患者を中心に据えた歯科医療である。」引用終わり

歯科医も日々の勉強が欠かせません。

Narrative-based Medicine  Evidence- based Medicine

09/10/25 日曜日 曇り時々小雨

 立川談春落語独演会から帰りました。江戸の酔っ払いの話と赤めだかに書けなかった修行時代の師匠談志にまつわる話を題材にした名?作「骨壷女」で笑わせた後、後半は紺屋高尾。CDとは幾分ちがいがあり、落語は生演奏と同じで即興的な部分があるのだと知りました。客席はほぼ満員で若い人たちも沢山きており、人気振りがよくわかりました。

09/09/30 水曜日 雨

 木村八段三連勝のあと四連敗で王位のタイトルを逃しました。三連勝の後の四連敗はこれが二回目だとか。一回目は竜王戦の羽生名人。二回とも当欄に書いた後でした。偶然でしょうが気になります。インターネット中継されていましたが、将棋という頭脳ゲームの過酷さを示す大一番でした。

高知新聞夕刊に、歯磨きをする人は口腔がんが少ないとありました。夕刊連載中の村岡マサヒロさんの四コマ漫画はブラックユーモアが見事にはまるときがあり楽しみにしています。昨日の台風銀座の話には笑いました。

09/09/24 木曜日 晴れ

 今日でホームページを公開してからちょうど3年、カウンターは26000をこえました。見ていただいた皆様に感謝申し上げます。また、HPをごらんになって(来院いただいた多くの方々には心より御礼もうしあげます。今後も内容の充実をしてゆきますので、時々ご覧いただければ幸甚です。趣味のページを更新しました。

09/09/21 月曜日 晴れ

 英国人と結婚した患者さんが「英国の歯科医はレベルが低いので診てもらいたい」とおっしゃられておいでになったことがあります。イギリスの歯科医療は質の点で問題があるようです。昔、ベルギーからの留学生の治療をしたことがありました。その数年後、徳島の会社に就職したとのことで再来日したときおいでになり「ベルギーの歯科医に、すばらしい治療を受けているといわれた」とお褒めいただいたことがあります。自慢になってしまいましたが、日本の歯科医もそれほど悪くない仕事をしていると思っています。

09/08/27 木曜日 雨

 阿川佐和子の対談に登場したチャード・ギアに触発され、ダライ・ラマの本を数冊よむ。生老病死すべてが苦だが、どうすればそこから抜け出すことができるかというのが仏教の基本思想のようです。ダライ・ラマの仏教解説は洗練されており、ときには精神分析医のような面影さえあります。※苦=不如意。思うようにならない様。グールドのバッハを聴きながらダライ・ラマの本を読むのが今一番のお気に入りの時間です。

09/08/01 土曜日 曇り時々雨

 将棋の木村八段が王位戦で3連勝、初のタイトル獲得に王手をかけた。羽生名人が前人未踏の七冠制覇を達成した1996年、木村八段は22歳で奨励会三段。少年の日から打ち込んできた将棋でプロになれるかどうかも定かでない、まだ何者にもなれていない若者に過ぎず、親友の野月七段としょっちゅう泣きながら飲んでいたという。先日の棋聖戦では羽生名人を相手に、あと一勝まで迫ったが逆転されてしまいました。今度こそタイトルを取ってもらいたいとおもいます。

09/07/30 木曜日 晴れ

 西原理恵子さんと元外務省の佐藤優氏がコンビを組んで週刊新潮に連載中の「週刊鳥頭ニュース」が面白い。佐藤氏は「外交官は勤務先国の文化の影響を受ける(筆者はロシアの影響を受けているので陰険だ)」と開き直って外務省時代の裏話を暴露し、西原理恵子(土佐女子退学)さんの漫画はここまでやるかというほどハチャメチャ。

イタリア首相のベルルスコーニの問題発言※も佐藤氏にかかれば「ヨーロッパ人の本音を表している。ヨーロッパの連中がわれらアジア人にとってどれほど恐ろしい連中かを知るために、ベルルスコーニ研究が必要だ」となる。※「オバマ氏は若く、ハンサムで、そして日焼けしている」、「毛沢東時代の中国で、赤ん坊は食べなかったが煮て肥やしにしていた」などなど。日本の首相が同じことを言えば、即日辞任に追い込まれるとおもいます。自由、平等、博愛が人類共通の価値観だというのは表向きの話に過ぎないようです。

09/06/24 水曜日 晴れ時々曇り

歯を抜かない矯正治療というのは患者さんばかりでなく歯科医にとっても大変魅力的です。健全な歯を抜歯するのは歯科医にとってもいやなものです。矯正治療に抜歯が必要か否かについては、矯正治療の開祖アングルとその弟子のツイード以来延々と論争が続いています。グリーンフィールドデーモンシステムなど米国発の非抜歯矯正システムが紹介されています。鼻が高くオトガイの発達した白人(コーカソイド)向けに開発された矯正システムをそのままモンゴロイドの日本人に適用するのは疑問があります。非抜歯で矯正できればそれに越したことはないのは当然ですが、乱杭歯を矯正したら出っ歯になったというのではしゃれになりません。非抜歯矯正論と必要抜歯矯正論の論点の比較をアップしました。

09/06/21 日曜日 晴れ

 上下の当たっている歯が少なくなってくると、その少ない歯に噛む力が集中するため破折や咬合性外傷による動揺で抜歯になるケースがしばしばあります。そうなるといわゆるすれ違い咬合(上下の歯がかみ合わない状態)となり義歯による治療が大変困難になります。解決策は噛む力を受け止めるインプラントを入れるか、思い切って上顎の歯を削合または抜歯するしかないのが現状です。まだ使える歯を削合したり抜歯したりするのは乱暴なようですが岩手医科大学歯学部のHPでは@インプラントA削除してオーバーデンチャーBコーヌステレスコープ義歯となっています。

09/06/09 火曜日 曇り時々雨

 今年の日本歯科医師会の生涯研修セミナーのテーマは「インプラントによる咬合再建」です。配布された小冊子の中で、東京医科歯科大学の塩田真准教授は「米国では2002年に発表されたMcGill Consensus Statementで、下顎無歯顎症例の第一選択は従来型の全部床義歯ではなく、2本のインプラントを支台としたオーバーデンチャーであると述べられています。これに対して日本では、保険制度の違い等もあって、必ずしも円滑なインプラントの導入がなされてきたとはいえないかもしれません。しかし、平成19年度に東京地裁で、インフォームドコンセントが不十分なまま行った抜歯処置により生じた欠損に対して、歯科医師側の主張するブリッジによる修復ではなく、インプラントによる修復が妥当であるとの判決が下されました。」と書いています。歯を失ったときの治療はインプラントでという時代が到来したようです。インプラントの進歩で歯科医療は大きく変わろうとしています。

09/05/24 日曜日 曇り

 岡山大学病院認定口腔インプラント講習会で岡山へ。講師は林揚春先生。林先生の講演を聴くのは3年連続になりますが、毎回新しい発見があります。後ろの席で若い先生が「今までの常識からすれば、驚愕の話だ・・・」と話していました。最小限の外科的侵襲、治療期間の大幅短縮という画期的なインプラント治療についての講演でした。

09/05/21木曜日 晴れのち雨

 義歯が痛い・外れやすいとき、唾液分泌が減っていることがよくあります。高齢者がしばしば服用している高血圧治療薬、睡眠薬、抗アレルギー剤、精神安定剤などで唾液の分泌が減ることが知られています。唾液分泌に関係しない薬剤に変えるかやめてしまわないと義歯の痛みが取れないことがあります。薬剤をかえるだけで義歯の具合がよくなるケースを何回か経験しています。

09/04/26日曜日 晴れ

第一回高知口腔研究会に出席。講師は徳島大学歯学部大学院の有田憲司准教授。プロフェッショナルクリーニングの効果やグラスアイオノマーの利点から小児の下顎間接突起骨折をFK0で見事に治したケースまで、研究者としてのみならず臨床医としても超一流であることを証明するすばらしい講演会でした。

09/04/11土曜日 晴れ

 森克栄先生の「包括歯科医療における歯内療法」を再読。19802月、小佐々先生の勧めで福岡の大博多ホールで開かれた講演会に出席し、そこで録音したテープを繰り返し聴いたことなどを思い出しながら。

「私たちは常に一つの考え方が常識として支配する偏見の時代を生きている」というのが構造主義のもたらせた最も重要な切り口だといわれています。ここ30年の歯科医療においても、いくつもの治療のコンセプトが現れては消えてゆきました。現在の支配的なコンセプトはminimum interventionだとおもいます。何がbona fideであるか?何がminimum interventionであるか?は時と場所によって変わるとしても、臨床医が、いま行っている治療がbona fide therapyであるかを自問して診療に当たらなければならないのは間違いないことだとおもいます。

09/04/09木曜日 晴れ

 ダリル・ビーチ先生は歯科医療における4つの目的とともに資源の節約の大切さを唱えておられました。京都で勤務していた30年ほど前、京都ホリデーインでビーチ先生を囲んでお話を聞く機会がありました。記憶に残っているのは「自分は左上の第二大臼歯が少し欠けているが、もし歯髄症状がでて歯内療法が必要になったときは抜歯する」とのお話。驚いた私が「患者さんにコミュニティのためにと抜歯を勧めても納得してもらえないのでは?」と質問すると「医療における資源の節約という観点から説明すれば理解してもらえる」との御神託でした。腑に落ちたわけではありませんでしたが、強く印象に残っています。

その後しばしばお話を伺った森克栄先生は、やりすぎでもなくアンダートリートメントでもない適切な治療 Bona Fide Therapyの大切さを強調されていました。当時頭角を現し始めていた某先生(現在大きな勉強会のリーダー)について「やりすぎ、いくら言ってもわからないんだよな」とおっしゃられるのを聞いたことがあります。

09/03/11水曜日 曇り

 サルがフロスをする?読売新聞電子版に面白い記事が載っていました。「タイ中部に生息する野生のカニクイザルの母親が、子どもの前では普段より大げさなしぐさで「歯磨き」をすることが、京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)の正高信男教授(霊長類行動学)らの研究でわかった。」人間の髪の毛をフロス代わりに使うのだという。

 

09/02/09月曜日 雨

 「ハイジーン、ホース、アピアランス」。九州歯科大学クラウンブリッジ(歯にかぶせる治療)講座の松浦智二教授の口癖でした。歯科医療は「口腔衛生、咬合力、審美性」に配慮しなければならないということですが、まったくの素人の学生であった私は「電車に乗っていると、前にいた若い女性が笑うと前歯に金が光っていた、(歯科医の)犯罪ですね」と具体的なエピソードを聞いても、いまひとつピンと来なかったと記憶しています。当時(1974年ごろ)はまだ伊達歯(だてば)と称して前歯に金を巻く治療が珍しくありませんでした。松浦先生の口癖の歯科臨床における意味がわかったのは京都の小佐々先生からダリル・ビーチ先生の歯科医療の四つの目的を教えてもらってからでした。

  歯科医療の四つの目的 (D. Beach)

(1)  口腔衛生の確立と維持

(2)  組織抵抗力の増強または維持

(3)  口腔内の好ましい力関係の確立と維持

(4)  日常ほかの人に見える口腔範囲の魅力的な外観の創造または維持

09/02/05木曜日 晴れ

 昨夜NHKの「ためしてガッテン」で、インフルエンザの予防法として@ワクチン=Aソ連型、A香港型、B型のいずれにも効果があるAタミフル、リレンザの抗ウイルス薬=予防としても有効B隔離Cマスク=他人に感染させない効果もD歯磨き=口腔清掃が取り上げられていました。ある施設で口腔清掃を実施したところ、インフルエンザにかかる人が1/10になったというのは驚きですが、そこはやはりテレビで、もうすこしデータを積み重ねる必要がありそうです。それなりに理論的な根拠もあるようですけれど。今年は四年ぶりにインフルエンザが大流行しているようです。歯科関連のリンクを更新しました。80歳以上で残っている歯の数は米国15本に対し日本は7本。治療費が高いので歯の手入れに熱心なことが原因ではないかと思います。

09/01/29木曜日 曇りのち雨

 198710月、米国フィラデルフィアのカリスマ歯科医モートン・アムステルダム先生が初来日し、有楽町マリオンにあふれんばかりの聴衆を集めて講演会が開かれました。会場で、当時の高名な臨床家を何人も見かけました。歯周病の進んだケースの治療(歯周補綴)の大家として有名であったアムステルダムの治療は「根の治療、歯ぐきの治療に加えて歯周病で移動した歯を矯正で治してから歯冠補綴をする」という大掛かりなもので、治療に数年を要したケースもありました。どこまでも続く治療のスライドに会場からため息がもれ「こんな治療は一生できないないだろう」と一緒に聴きにいった友人と話したことでした。

90年代に入ると北九州の筒井先生が包括診療と称した見事な症例をこれでもかというほど発表しつづけました。その臨床は次々と変化し、はるか先頭を驀進しているような印象がありました。06年の講演会で、アムステルダムが「世界一だ」と絶賛したといいます。まさにスーバーGPでした。

今世紀に入ったころから、インプラントの歯科臨床に占める地位が徐々に大きくなってきました。今や、大きく崩壊した口腔の治療は、インプラントなしでは満足していただけない場合が少なくありません。「せっかく高い費用を出すのだから取り外しの義歯でない方法で治したい」と希望されるのは当然のことかもしれません。歯科医療が高度になるのと同時に、患者さんもより快適で審美的な治療を求めるようになって来ています。歯科医が一人前になるために長い修練の期間が必要な時代になってきました。

09/01/23金曜日 晴れ

 骨粗しょう症などで使われるビスフォスフォネート系薬剤によるあごの骨の壊死が300例を超えたという。壊死する確率はそれほど高くないようですが、抜歯などの外科処置を行うばあいには3ヶ月前から服用を中止するというガイドラインがあります。

  米国口腔顔面外科学会によれば、ビスフォスフォネート製剤の静注薬での顎骨壊死発現率は0.812、経口薬で0.104、経口薬と抜歯との組み合わせでは0.93.4とのことである。

[出典}CLINICAL CALCIUM 20072月号(Vol.17 No.2

※一週間に一度服用するタイプが発売され、急速に発現率が高くなっているという話があります。

09/01/06火曜日

 ノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士が、NHKの番組に寄せた言葉は『学んで思わざれば則(すなわ)ち罔(くら)し思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し』でした。番組の雰囲気にぴたりとはまる至言でした。高度な学問だけではなく、何事にも当てはまるとおもいます。

07〜08年の日誌

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