(がく)関節症(かんせつしょう) TMD(Temporomandibular disorders)             高知市青木歯科TOP

耳の前が痛い、口が開かない、口を開けると音がする、かみ合わせがおかしい)        

更新歴2014/02/122015/03/102016/09/08

 

顎関節症の治療

東京医科歯科大学顎関節治療部では

病態(痛み運動制限)のコントロールと病因のコントロールをおこなう。

●痛みと運動制限に対しては始まってから2週間以内は安静、2週間を超えている場合は開口訓練。痛みにはカロナールなどの鎮痛薬も使う。

●病因のコントロールはTCHのコントロールを主とし、バイトプレートも含め、咬み合せの治療はほとんど行わない。

という治療戦略で好成績をあげているといいます。

 

当院ではこの治療戦略を参考にして治療にあたっています。原因となっているTCHなどの生活習慣の改善で、顎関節症の症状(口が開かない、関節が痛い)の改善を図り。音がする症状については、音のするメカニズムを説明し、自然治癒を待ちます。

※開口訓練は痛いところまで自分の手であけ1020秒静止。これを45回繰り返す(1セット)35セット/

TCH:(Tooth Contactinig Habit)目が覚めているときに上下の歯を接触させている習慣。思い切りかみしめた強さの7割以下の力で長時間かみしめている現象。

唇を閉じたとき、上下の歯が当っている人はTCHがあるといわれています。舌や頬粘膜に歯列の跡がついているのはTCHをしている兆候だといわれています。

※慢性期の治療の原則は筋肉と関節の血液循環を良くすることです。具体的には、蒸しタオルによる温熱療法と動かすこと(運動療法)が有効です。

※蒸しタオルは、濡らして絞ったタオルを電子レンジで温めることで簡単に作れます。痛みが和らぐまで数回繰り返しましょう。

 

大変良い本が出版されましたのでご紹介します。2013/7/31

『TCHのコントロールで治す顎関節症』 木野孔司 編著 医歯薬出版 

『顎関節症診療ハンドブック 』本田和也 他 メディア株式会社 2016/9/15

 

TCHをコントロールする方法

   歯を離すと書いたメモをパソコンなど作業する場所に張りつけ、それを見たとき、肩の力を抜いて、口を開き歯を離しましょう(東京都木野先生の提唱)

   上下の歯の間に軽く舌を挟んで、微笑みましょう(北九州市下川公一先生の提唱) 側頭部に指を置いて奥歯で噛むと側頭筋が収縮することが分かります。次に舌を挟んでみてください。側頭筋がリラックスすることがお分かりになると思います。

   食べ物を噛むときの一口目を前歯で噛み切りましょう(埼玉県久喜市石幡先生の提唱)

 

いずれも歯を離すことになり、側頭筋、咬筋などの口を閉じる筋肉を緩め、外側翼突筋を動かして顎関節の血流をよくすると考えられます。

この3点セットをお勧めしています。2016/03/19

鑑別診断

 顎関節症と鑑別すべき重大な疾患に側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)があります。Dawson『オクルージョンの臨床』1974年版では言及されていましたが、1989年の第2版、2007年の第3版には記載がなくなっています。日本人には少ないといわれており、ある大学の顎関節症の専門医は講演で「見たことがない」と述べていました。食事の後で側頭部や下顎が痛くなるといった顎関節症と似た症状がありますので、頭の片隅に置いておく必要があります。特に自己免疫疾患の既往のある場合は要注意です。眼に症状がある場合には眼動脈に炎症が波及しており失明に至るといわれていますので、緊急に神経内科などを受診する必要があります。

もう一つの鑑別すべき疾患は舌咽神経痛です。これは大開口時に激痛が舌の奥から耳の奥にかけて走ります。痛みの強いことが特徴であり、「激痛があるなら顎関節症ではない」と言われています。また、顎関節症の痛みは開口やかみしめ時に生じるので、安静時に痛みがあるのは別の疾患の可能性が高いことになります。

 

※側頭動脈炎は日本人では稀な疾患だといわれています(1998年の厚労省疫学調査で690人、0.65/10万人)。しかしながら関連するリウマチ性多発筋痛症の年間罹患率は50歳以上の人口10万人当たり52.5人であり、そのうちの15%が側頭動脈炎を併発するとの説があります。(総合診療・感染症科マニュアル、亀田総合病院編集、医学書院による)。つまり、50歳以上の13000人に一人が発症することになり、高知市にも10人ぐらいいる計算になります。リュウマチ性多発筋痛症の治療で治っているのかもしれません。

 

顎関節症治療の歴史的変遷

口が開かない、口を開けると音がする、口を開けると痛いといった症状のある顎関節症は、1934年に米国の耳鼻科医コステンが、奥歯欠損や不良義歯と関係が深いと発表して注目されました。その後スカイラ―らが、奥歯の欠損による低位咬合よりも咬み合せの不調和がより問題だと主張し、咬合調整やバイトプレートによる治療が行われるようになりました。1980年頃から、あごの関節の内部の障害がクローズアップされるようになり、顎関節症の症型分類が提唱されました。そのうちのⅢ型(音がしたり、口が開かなくなったりする)に対しては、顎の位置をバイトプレートや外科手術で元に戻して、そのあごの位置に合わせて咬みあわせを再建する治療法が行われるようになりました。ところが米国で、この治療法の後遺症の訴えが多くなったこともあり、1996年にNIHによる声明が出されました。これが顎関節症治療におけるエポックメイキングとなり、2010年には米国歯科研究学会の声明が発表され現在に至っています。TMD Policy Statement:米国歯科研究学会による顎関節症の診断と治療に関する声明 日本語訳(日本補綴学会)

参考:日本補綴学会 特集 顎関節症治療法の変遷(2012年)より

補綴歯科領域における顎関節症治療法の歴史的変遷 

口腔外科領域における顎関節症の治療法 

顎関節症患者における心身医学的な治療の変遷

 

 

顎関節症の病態分類 日本顎関節学会2013の分類を改変)

咀嚼筋障害(顎関節症Ⅰ型):あごを動かす筋肉に痛みのあるもの。(頭の横、耳の前などの筋肉が痛い)

関節包・靭帯障害(顎関節症Ⅱ型):あごの関節に痛みがあるもの(顎の関節の捻挫)

関節円板障害(顎関節症Ⅲ型):関節円板の障害を主兆候とするもの(音がする、あごが外れる、口が開かない)

a型:復位を伴う関節円板前方転移、顎が後ろにずれている。口を開閉するとき音がする、片側の場合口がくの字に開く)

b型:復位を伴わない関節円板前方転移、顎が後ろにずれている。口が2.5㎝程度しかあかない、片側の場合口が斜めに開く、無理にあけると耳の前が痛い

変形性関節症(顎関節症Ⅳ型):あごの関節の骨が変形している(レントゲンで変形がわかる)

 

※臨床では上記のものが併存していることが多い。また、TMD(顎関節症)と診断された70%以上に身体表現性障害、気分障害、不安障害、適応障害などの精神障害がみとめられたという報告があります。

※顎関節症は症状の自然消退の期待できる(self-limiting)疾患です。

顎関節症の自然史(natural history

  咀嚼筋障害(顎関節症Ⅰ型)およびその他については不明である。

  関節包・靭帯障害(顎関節症Ⅱ型)は通常、2〜4週間で緩解することが多い。

  関節円板障害(Ⅲ型)、変形性関節症(Ⅳ型)については、30ヵ月後には43%で症状がなくなり、33%で症状が軽減しており、症状の不変ないし増悪は25%であったと報告されている。

  顎関節症患者の大部分は2年半程度の期間を注意深く観察すれば、2/3以上の例で自覚症状の軽減がみられることが予想されるが、その機序は不明である

⑤治療せずに放置しても自然緩解がある自己限定的な(self-limited)疾患であるが、症状の長い症例では治療成績が悪い。

(柴田考典先生による)

 

 

咬み合せがおかしい(どこで嚙んでよいかわからない)

片側の奥歯が高く感じるため歯科を訪れると、咬合紙(薄いものはフィルム)を数回咬んで強く当たるところを削合することがあります。一見何の問題もなさそうですが、実はそこに落とし穴があります。それは新しい冠や充填を入れたわけでもないのに高く感じるのは、顎(下顎頭)が後ろや横にずれたことが原因かもしれないからです。あごがずれる原因には、強いゴムのマスクの着用、頬杖、横向き寝など数多くあります。

 

顎がずれたために片方の奥歯が強く当たっている場合に歯を削れば、顎はずれたままになり、原因が続いているなら、削っても、削っても高く感じることになります。

これが歯を削ってから「どこで嚙んだらよいか、わからなくなる」原因の一つであると考えられます。関節円板などの生体は粘弾性体であり、瞬間的な力がかかっても変形しませんが、長時間力がかかると変形する性質があります。横向きやうつ伏せで寝ることによって顎が変位するのはそのためだと考えられます。日常生活の中で、関節や歯に持続的な力のかかる習慣を修正することが咬みあわせを治療する前に絶対に必要な所以です。

 

したがって、いきなり歯を削るのは禁忌ですが、例外は伸びだしている下顎の親知らずです。下顎の親知らずが伸びだすと上の第二大臼歯の後ろ向きの斜面と強く接触するようになり、このために顎が後ろにさがってしまいます。すなわち、下顎の親知らずを削合すること(時間がたつとまた伸びだすのでできれば抜歯するほうがよい)は顎を後ろに下げる原因を除去していることになります。自験症例参照)

 

 

参考:

    顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本 木野 孔司 講談社

    アゴの痛みに対処する2012 古谷野潔 他 クインテッセンス出版

    アゴの痛みに対処する2011 古谷野潔 他 クインテッセンス出版

    TMDを知る 井川雅子他 クインテッセンス出版

    顎関節症診療ハンドブック 本田和也 他 メディア株式会社 2016

 

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