親知らずの抜歯、移植 高知市青木歯科TOP
2015/09/14、2019/05/09更新
親知らずは18歳ごろ生えてきます。多くの場合正常に噛みあわず、横向きに生えたり(下顎)、外向きに生えたり(上顎)して周囲の組織に炎症を引き起こします。時にはひどく痛くなることもあります。放置すると大切な隣の歯をだめにするので早めに抜歯することが望ましいとされています。下顎智歯を抜歯する場合、大切な神経と血管の入る下顎管との位置関係を正確に把握しておく必要があります。最近、保険導入されたCT(1170点)は、下顎管と智歯の位置関係を正確に知るために大変有効です。下顎智歯抜歯に際しては治療計画をご説明し、同意書を頂くようにしています。
森克栄先生らの昭和53年の論文に、「第二大臼歯の長期保存をたてまえにした場合、例え智歯は自覚症状がなくても、患者の若く抵抗力のある時期に抜去しておくことが望ましいと考えている」とあります。それから40年以上経過した現在でも、第二大臼歯が深い齲蝕になり、根の先端近くまでの骨が吸収をしてしまい保存が困難になっている患者さんにしばしば出会います。デンタルフロスの普及同様、予防歯科的な概念が浸透していないのが現状です。
※森克栄、丸森英史 『下顎智歯の処置をめぐって 歯周病学的アプローチ』、歯界展望、1978年8月号
親不知が横に生えて、隣の第二大臼歯は虫歯になっています。反対側の根の先は黒くなっています。根の先の骨が溶け病巣ができています。痛みと動揺がありました。
親不知を抜歯しました、根が虫歯になると治療が困難になります
横向きに生えた下の親不知(パノラマレントゲン像)。智歯の根尖周りがもやもやしていまが、下顎管との関係ははっきりしません。
CT像。上下に分かれた下顎管が認められます。上の分枝は智歯の根尖に接触した状態です。
CT像で下顎管(重要な血管と神経が通っています)を確認すれば、安全に抜歯することができます。
上のケースより深く埋まっており、根の先だけでなく、全体が下顎管に接触しています。第二大臼歯の根の先近くまで骨がなくなっています。
下顎管は根のやや頬よりの下方にあります
同じく舌側に偏っています。慎重に歯冠を切断し、抜歯しました。
親不知に違和感を訴えていました。下顎管が根に沿って接触しているように見えます。パノラマレントゲン(一部)
CT像。下顎管がはっきりと映っています。切断部位と下顎管までの長さを測定しています。
根が三根あり、そのうちの一本が下顎管と接触していることがわかります。
下歯槽神経と舌神経を傷つけないよう下部と舌側の歯質を1mm残して切断し、歯冠を除去して抜歯しました。
茹蛸の脚のように曲がった根の親知らず
歯冠はほぼ正常に萌出していますが、遠心根が茹蛸の足のように下顎管に沿って曲がっています。パノラマレントゲン
上からのCBCTではまるで水平埋伏のように見えます
遠心根と下顎管の関係、接触しています。CBCT
近心の根と下顎管の関係。
歯冠を除去し根を分割途中のデジタルレントゲン
左が近心根、右が遠心根
歯根の舌側に下顎管が走る
パノラマレントゲン(一部)。水平埋伏ではありませんが、根と下顎管が完全に交差していました。遠心(左側)と頬側の骨を削除して抜歯しました。CTで歯根と下顎管の関係を把握することで安全に抜歯することができました。
下顎管は根の舌側にあります。根に押し付けられて縦に楕円形になっていました。
下顎管の通っていた凹みができています。
移植
親知らずの移植は保険給付されます。ただし、移植部位の抜歯と同時でなければならない決まりになっています。
歯根が破折していました。2000年9月
10月、親知らずを移植しました
9年後。根の吸収は見られません。問題なく経過しています。
智歯の移植
術前
移植直後。根尖はセメントで封鎖
2か月後
移植後5か月。骨ができています
親不知の弊害(下の親不知が伸びだして反対側で嚙みにくくなる)
左で咬めないとの訴えで来院されました。右下(向かって左)の奥の親不知が伸びだして上の歯に当たっています。この状態では左で咬むとこの親不知が当たってしまいます。
邪魔になっている親不知を削合しました。また、動揺のあった左下犬歯を隣の歯に固定しました。違和感がなくなり、咬めなかった左で咬めるようになったと喜ばれました。
赤い部分が調整するところです(右側が前になります)前に動かそうとすると親知らずが邪魔になることがわかります。調整しただけではまた伸びだしてしまうので、この親不知は抜歯しました。
初診時、親知らずと第二大臼歯の間の骨が三角形に吸収しています
親知らず抜歯後2年。まだ回復は不十分です
親知らず抜歯後5年骨がかなり回復しています
高知市青木歯科TOP