青木歯科日誌 2013

07〜08年の日誌 、09〜10年の日誌 、10〜12年の日誌

 高知市青木歯科TOP

 

14/12/04 水曜日 晴れ

 最近、奥歯がしみると訴えておいでになる患者さんの中に、歯間ブラシの使い過ぎで歯肉が退縮し、歯と歯の間がしみているケースが多くなっています。歯間ブラシは歯周病が進行し歯の根元が既に三角に空いている場合には有効ですが、軽度の場合に使うと歯肉退縮や知覚過敏などの問題を起こします。当院ではブリッジなどフロスが入らない場合を除きデンタルフロスの使用をお勧めしています。フロスにもいろいろありますが、いま一番のお勧めはイタリア製のものです。オーラルケア社のHPには歯周病予防のためのブラッシング法(バス法)を提唱したバスは「フロスが主であり、ブラシは従である」と言っていたとあります。

14/11/06 木曜日 曇り

 歯周組織に喫煙が悪影響を与えることは夙に知られていますが、衝撃的な写真がネットに紹介されています。喫煙はコラーゲンを生成するのに必要なビタミンCを破壊するのが老化の原因だといわれています。喫煙 双子 老化 で検索すると、喫煙者と非喫煙者の双子の写真が多数出てきます。

 駐車場周りの小庭の管理に悩んでいたのですが、たまたまある病院の中庭で花の植え付けをしていた娘の同級生に会ったのがきっかでで、ジュジュミツコさんに季節の花を植えてもらうことになり一安心。何でもその道のプロのすることは一味違います。

14/10/30 木曜日 晴れ

 NHKプロフェッショナルに熊谷崇先生が登場しました。歯科医師でこの番組の対象になるのは確かに熊谷先生しかいないなあとおもいます。熊谷先生は80年代半ば頃には歯周治療の分野で有名でした。87年に有楽町マリオンで開催されたM.アムステルダムの歯周補綴の講演会場で白い半そでのシャツを着てくりくりっとした眼をした熊谷先生の姿を見かけたことがあります。96年に虫歯予防についての本が出版され、歯周病のみならず齲蝕予防にまい進されていたことを知りました。今回の番組でその後の歩みを窺い知ることができました。番組では、口腔清掃ができるようになるまで本格的な治療には入らないところが強調されていましたが、大きく崩壊した口腔の場合でこれを実行するのは難しいのが当院の現実です。熊谷先生の御子息は米国で補綴専門医の資格を取っているようですので、番組で紹介された場面は日吉歯科医院の全体像ではないと思います。副院長は日大の学生時代、熊谷先生の講義を二回ほど聴いたことがあるようですが、今回のような内容ではなかったようです。

 それはともかく、多くの人がこの番組を見て、口腔衛生、家庭療法、メインテナンスの重要性を知っていただけたのではないかと思います。

14/09/16 火曜日 晴れ

 ビート・タケシの健康番組で、脂肪肝から非アルコール性肝炎NASHになってしまう原因の一つが代表的な歯周病菌のギンギバリスだといっていました。ギンギバリスは歯周ポケット内面から血管の中に入り、動脈硬化、心臓病、糖尿病をひきおこすことがあるのはよく知られていますが、肝炎まで起こすとは!家庭療法とともに、定期的に歯石をとることが大事であることを知ってもらえる番組でした。

14/09/05 金曜日 雨

 羽生が4連勝で名人に復位した今年の将棋名人戦を、森内前名人の視点から振り返る番組を見て、棋士というのは本当にいい人間が多いと思った。森内が勝ったとプロ棋士のだれもが思っていた第四局の最終盤、羽生の放った角打ちに対し、見たこともない手筋を経験したと感動したように話す森内の口調は、まるで新しい発見をしたときの技術者のよう。その羽生世代が20年以上も将棋界に君臨しているのは何故か?と聞かれた渡辺明王将が羽生さんたちの世代が出てきたときの技術革新が大きかったんじゃないですかね」の見解を述べている。これはどの世界にも通じることだと思います。日々進歩する歯科の技術革新に目配りをしていなければ、10年もすれば、ついていけずに取り残されてしまう。技術革新が大きければ大きいほど先駆者の得るものは大きく、ついていけないものの脱落も早まるであろうからだ。

 この10年の歯科医療における技術革新は、レントゲンのデジタル化とりわけ歯科用CTの普及, 根の治療に使うニッケルチタンファイルの改良、技工部門のCAD/CAMによるジルコニアの導入、歯列矯正のスクリューアンカーといったところだろうか。地味だが歯科用セメントとコンポジットレジン(白い詰め物)もすごくよくなった。数年前のインプラントブームは、NHKの番組一発で沈静化したが、適切なケースに適切に使えば、歯を失った場合の治療に劇的な効果があることは確かで、歯科臨床を革命的に変えたことは間違いない。

もちろん、これらの新技術は、生物学的な治療の原則と基本的な技術を伴わなければ、あだ花に終わってしまうことは言うまでもない。

14/08/31 日曜日 晴れ

 九州歯科同窓会主催の学会。スエーデンの歯内療法(根の治療)の考え方を基盤にした宮下裕志先生の講演。ラバーダムの滅菌を行い、嫌気性菌の培養をするという徹底的な感染防止対策。3か月から6カ月かけて完全に清掃ができるようになるまで本格的な治療に入らないとのこと。保険を取り扱わずオール自費の治療とはいえ、そこまで徹底したシステムを作り上げていることに感動。

14/07/27 日曜日 晴れ

 東京都開業の高橋英登先生の講演会。材料の取り入れや、考え方に大いに触発されるところがありました。HPを拝見するとスタッフが90人もいる大型の診療所なので、同じようにはできませんが、取り入れられるところから始めたいと思っています。登山部のご出身とのことで、北海道から屋久島まであちこちのやまにのぼっており、鳥形山にも登られたとか。パワフルさに圧倒されました。

14/07/17 木曜日 晴れ

 『構造と診断』以来、私は、はっきりと岩田健太郎先生のファンになった。今日も『予防接種は効くのか?』を読み、なるほどと頷くところが何か所もありました。歯科でワクチンに相当するのは虫歯予防のためのフッ素だと思います。40年ほど前の歯科大学の学生の頃、宝塚繁斑状歯訴訟や京都の山科で行った水道水のフッ素添加が批判を浴びており、歯磨剤にフッ素を入れることさえはばかられる時代でした。歯磨剤にフッ素が添加されるようになってから20年ぐらいになりますが、水道水のフッ素化は行われているところはありません。歯科医療費の削減にはなると思いますが、ポリオや麻疹のように重大な病状をひきおこすわけではないので、個人の責任で予防に使うことでよいのかもしれません。

14/07/10 木曜日 台風8号接近 雨

 読売新聞にハンドピースの滅菌に関する記事が掲載されました。対応する歯科医院からの注文が殺到し、オートクレーブやハンドピースが品薄になっているといいます。当院の滅菌システムを施設紹介に載せました。

14/05/04 日曜日 晴れ

 こうして(自分の頭で考えず、上級医のいうがままに)2年の初期研修を終え、同じように後期研修を過ごし6,7年経つと一人の藪医ができあがる。可塑性は年々失われ。10年もたつと、たいていの場合、もう取り返しがつかない。手技がうまく、仕事が速い。経験した事象は反復できる。しかし進歩がない。知恵がない。学びもない。情操教育的にも暗い影が落とされ、他人の見解に耳を傾ける可能性も低い。「ぼくは前からこうやっていたんです」の一点張りになってしまうからだ。それ以外に判断の根拠を知らないからだ。一人の愚鈍な指導医の完成である。

岩田健太郎『構造と診断』P2728 医師でなくとも拳々服膺したい言葉です。

14/04/29 火曜日 雨のち曇り

 日本の医薬品医療機器の貿易赤字は3兆円にもなるのだといいます。歯科材料に関しては日本の製品にも優れたものもありますが、いいものはやはり米国やヨーロッパのものが幅を利かせています。歯科治療の中で多くの時間を必要とする根の治療に使うレシプロックという画期的な製品が発売されました。一本2500円のファイルが使い捨てで、ランニングコストがかかりますが、治療時間が大幅に短縮できるのと、根の先まできれいに掃除できるため気に入っています。これもやはり輸入品なのです。

14/04/28 月曜日 雨

 娘は2週間入院しましたが、歩行は不自由なままでした。脳神経外科では痛みどめと吐き気止めの服用だけで、痛みは精神的なものだといわれる始末なので、このままでは体力が衰えるだけで治らないと考え、先週月曜日に退院させました。退院時、隣のベッドのNさんに「治ったように見えんけど」といわれるような状態で、駐車場まで車いすで移動しました。脳神経外科的には問題がないとすれば、筋肉から来た痛みであろうと推測し、前日に外泊許可を得て一時帰宅した時、顎関節症の治療に有効な蒸しタオルによる温熱療法を試みたところ、改善がみられため、家庭療法に成算があったのでした。

筋肉の血液循環を良くするため、蒸しタオルに加えて、上半身の血流を良くするという葛根湯を使い、痛みが改善すればカラーを外して姿勢を正し、衰えた首の筋肉を鍛えるという家庭療法を始めました。すると翌日には首と頭の痛みが軽くなり、ふらつきはあるが何とか歩けるようになりました。日に日によくなり、一週間で入院前とほぼ同じ状態まで改善しました。船酔いしたようなめまいと吐き気は残っていますが、頭と首の痛みがなくなったためすっかり元気になり、短い距離なら歩けるようになりました。歯科の治療と同じく家庭療法の重要性を痛感した一週間でした。

※頭痛は頸部の筋肉のトリガーポイントに起因することが多い『クリニカルマッサージ』 医道の日本社、

※首から腰にかけて、背骨を支えている多裂筋という筋肉がある。むち打ち症はこの筋肉が損傷している『むち打ち症のつらい症状は専門家と一緒に治す』現代書林

※もっともエビデンスのある治療法は運動療法交通事故におけるむち打ち損傷問題[第二版]

14/04/15 火曜日 晴れ

 娘が昨年8月に四万十市で右折のため停車中に追突され、いわゆるむち打ち症になりました。車の運転が必須の仕事であるため休職中です。CTMRIでは異常はないといわれていますが、症状は重く、ゆっくりとしか歩けない状態が続いていました。整形外科の主治医から低脊髄圧症候群の疑いがあるので検査を受けるよう紹介され、脳神経外科で検査を受けましたが、脳脊髄液圧は正常範囲でした。しかしながら、そのあと激しい腰痛、頭痛、首の痛みで歩けなくなり、現在入院中です。しかし、治療は安静第一とのことで、ロキソニンなどの痛みどめの服用しかしておらず、入院7日目ですがまだ体を起こすと激しい痛みに襲われ歩くことができない状態です。何とかよい治療法がないものかとネットで調べていたところ、むち打ちは頸部損傷ではなく、脳の損傷のことが多いのだという。しかし日本では心の病気にされ、ひどい場合は詐病扱いされているという。それにつけても、車の運転は怖い。他人の人生を破壊することになる。追突防止装置つきの車に買い替えねばと思っています。

14/02/23 日曜日 晴れ

 4月の診療報酬改定で、小臼歯に対するCAD/CAMによって製作されるレジン冠が導入されることになりました。従来も、類色の材料として硬質レジンがありましたが、強度に不安があったため、比較的噛む力の弱い場合にのみ適応してきました。四月からはもう少し広範囲に適応できそうです。セラミックではありませんので、変色の恐れは残るとおもいますが、見える範囲に金属を出さないという国際基準が、やっと日本の保険診療に導入されることになりました。

14/02/11 火曜日 晴れ

 10回高知口腔科学研究会(高知大学医学部歯科口腔外科山本教授)の顎関節症シンポジュウムに行きました。徳島大学の中野雅徳先生と東京医科歯科大学顎関節治療部の西山暁先生がシンポジストとして登壇し、顎関節症をひきおこす要因のうち、咬合を重視する立場と持続的に歯を接触させる習癖(Tooth Contacting Habit)を重視する立場からの講演がありました。

咬合を重視する中野先生もブラキシズムなどの癖を考慮に入れており、一方TCHのコントロールを中心に治療を行っている西山先生も極端な咬合異常(臼歯部の欠損など)には咬合の安定をはかるとのこと。

日常的なクラウンやブリッジの治療を行うときには、顎関節症予防のためにも咬合は極めて大切であること。いったん顎関節症を発症し、痛みや開口障害が起きた時にはTCHのコントロールと開口訓練がこれらの症状の解消に有効であること。顎関節症が治った後、クラウンやブリッジが必要な場合には咬み合せに注意を払って治療するという、至極当然の結論でした。

昨年、顎関節症の分類からX型がなくなった理由を質問したところ、X型は精神的な要因の強いものであるというのは誤解であり、T〜Wに組み込まれたとのことでした。西山先生の講演では、従来歯ぎしり(ブラキシズム)は、いわゆる歯ぎしり、食いしばり、タッピングと分類されていたものを、東京医科歯科大学顎関節治療部では、睡眠時のブラキシズムと目覚めている時のブラキシズムに二分し、さらに、Awake Bruxismを強い力で短い時間かみしめる食いしばりと比較的弱い力で長時間接触させるTCHに分け、一番問題があり、かつコントロールしやすいのがTCHだとの説明に、なるほどと納得しました。なお、TCHや歯ぎしりの兆候だとされている頬や舌の圧痕は顎関節症が治った場合消えているのかと質問したところ、みていないとのことでした。顎関節症のページを更新しました。

14/02/08 日曜日 曇り

 岩田健太郎『構造と診断 ゼロからの診断学』を再読。ソシュールの言語学講義の、言葉と言葉の意味するもののアナロジーで、疾患名と症状(現象)の関係を規定し、患者に起きている現象を正しく認識し評価することが大切であると強調。カルテを記載するときのSOAP(Subjective=自覚症状、Objective=他覚症状、Assessment=評価、Plan=治療計画)のうち、大切なのはアセスメントであり、アセスメントを立てるには全体から患者をみること、時間から考えること、帰納法を上手に使うことが大切であるという。この考え方は、歯科の診断、治療方針の決定にも大いに役立ちます。いわく

「正しい診断名があるわけではない、あくまで、正しい認識があるだけだ」P24 。「患者の時間という情報を獲得し、患者に起きた現象を再構成すること、患者の過去に光を当てることで、これらの疾患群をカテゴライズできる。そのために、患者の話を聞こう」P48。「名づけられている疾患名が実は様々な広さをもつスペクトラムとして存在することに、ぼくらは自覚的でなければならない。また、各医療者によって、その意味するところが異なることも自覚しておかなければならない。」P157

14/01/07 火曜日 晴れ

息子に「甘粕という名から誰を思い浮かべるか」と聞くと「上杉謙信の配下の武将で云々」と意外な答えが返ってきた。『釣りバカ日誌』の主人公が勤務する鈴木建設のライバル会社の社長だと言うだろうとの予想は大外れ。しかし、その知識のもとはゲームなのでありました。佐野真一『甘粕正彦 乱心の曠野』を読み終える。当時の指導者の多くが江戸時代の武士の子孫であり、そのまた先祖は戦国時代の武将が少なくない。頭も胆も優れた遺伝子が脈々と受け継がれてきたのであろうか。

13/12/02 月曜日 晴れ

 亀田総合病院の『総合診療・感染症科マニュアル』の最初のページに患者ケアの目標設定が載っています。

●入院・外来を問わず、患者ケアの最大の目標は「患者のニーズ」に応えることである。

●ただし、患者自身気づいていない隠れたニーズ(hidden needs)も多々あるので、プロとして積極的にこれを掘り起こす必要がある。例:閉経後女性の骨密度測定 例:肺炎球菌のワクチン

歯科はhidden needsのオンパレードと言っても過言でないと思います。たとえば。歯と歯の間の虫歯(虫歯は歯髄に達するまでは痛くない)、親知らずの抜歯(第二大臼歯の虫歯予防)、歯周病(沈黙の疾患、気が付いた時に歯はぐらぐら)、咬合治療(前歯の咬み合せが奥歯に影響する)、笑ったとき見える範囲には金属は出さない、などなど。自分が歯科医でなかったときには、全く知らなかったことばかりです。患者さんの関心のあり方は千差万別ですので、治療の必要性を説明していますが、くどすぎてもニーズの押し付けになってしまうので、どこまでニーズがあるのかの判断が難しいところです。痛みの出る可能性が高い初期の虫歯や、歯を失うことになる歯周病。親知らずの抜歯は積極的に説明するのですが、人間経験していないことを理解し、行動に移すのはなかなか難しいようです。高校で習う徒然草に、なんでも先達に聞くのが間違いを犯さないためには必要だという旨の段があったと思います。

13/11/04 日曜日 曇り時々小雨

 知覚過敏とコンポジットレジン充填についての講演会。講師は岡山大学教授吉山先生。このテーマで面白くかつ高度な話ができることに驚き。楔状欠損は咬合力+歯頚部の酸の存在が必要だとの話は初めて聞きました。コンポジットレジンは日本以外では高価な治療法だとのこと。材料の改良は目覚ましいものがあります。

13/10/26 土曜日 晴れ

 下記の本が大変面白かったので、同じ著者の『神戸大学感染症内科版TBL』と『構造と診断』を読む。前者は、神戸大学の4年生を対象にした5日間の集中講義の記録。これが実に面白い。診断とは何か?病気とは?から始まり、「臨床症状、その期間、患者さんのバックグラウンドを考えて検査をすれば大きな間違いはおかさない」との結論に至る最終講義まで充実した時間の記録が詰まっています。歯科に関係する副鼻腔炎(上顎洞炎)やカンジダ感染症にも言及あり大変勉強になりました。後者は病気の診断に、構造主義の思考法に加えてゲーム理論を診断に活用するなど、医学にとどまらない著者の博識ぶりに驚くばかり。

13/10/22 火曜日 曇り

 99.9%が誤用の抗生物質』岩田健太郎 光文社新書をよむ。大変刺激的な記述があちこちにあり。抗生剤の使い方を見直す必要がありそうです。構造主義的思考による医療の見直しを提唱している点も斬新。構造主義がはやったのはずいぶん昔ですが、いまや構造主義的思考法が医学の分野でも展開されつつあるようです。「普遍的な万人に通じる正しさがあるのではなく正しさの正しさ加減は、その人物が何を求めており、どういった類の恣意(偏見?価値観?)を持っているかにより、変じていく。」116頁。歯周病の進行した複雑な問題を抱えた場合の治療を進めるときにいつも悩むことを構造主義的な思考で言い表すとこうなるのだろうとおもいます。

 偶然、書店で見つけたこの本を買ったのは、製薬会社のMRとして働いている娘が、幡多の森下病院の先生に貸していただいた『抗菌薬マスター講座』の著者だとの記憶があったからでした。

13/09/01 日曜日 雨

 土曜日は高知大学医学部歯科口腔外科の山本教授に慢性骨髄炎について、山田准教授に外科的矯正治療についてそれぞれ症例を供覧しながらのお話を聞くことができました。顎の骨を切断しなければならないこともある慢性骨髄炎は不充分な根の治療が原因になっていることが多い。抜髄をしないのが最良の予防法だとのことです。非定型疼痛との鑑別にはシンチグラムが有効とのことでした。また、外科的矯正の予後は手術後のコンプライアンスが大切で、舌訓練などをやらないと後戻りすることもあるとのことでした。

 今日は中四国補綴学会に出席。午前中は松香先生の口腔顔面痛についての講演。3人の医者が診て治らないケースはだれがやっても治らないとのこと。思い当たることがあります。午後は三人の先生によるCADCAMについての講演。精密鋳造方が始まったころと同じく大きな変革が補綴の世界にやってきています。ジルコニア冠について質問したのを聴いておられたのか、帰りがけに徳島大学の細川先生から貴重なアドバイスをいただきました。

13/08/23 金曜日

 フロスや舌の掃除の重要性は以前から強調してきましたが、当院お薦めの家庭療法として順序良くまとめることができたのは、ホノルル歯科医院のHPのおかげです。この家庭療法が普及し、多くの方が実践したならば、当地の歯科疾患は劇的に減少すると思います。ハワイに行った収穫の一つはこのHPを見たことでした。

13/08/11 日曜日 晴れ一時雨

ハワイに行く機会があれば、どうしても訪ねたいと思っていたパールハーバーに行きました。1941128日(ハワイでは7日)はいわば現代日本の起点ですが、米国でどのように取り扱われているのかを確かめておきたいと思っていました。米国テキサス州に2年間滞在した家内の妹によれば、「アメリカでは12月になると、テレビはRemember Pearl Harbor 一色になる」という。

6時過ぎにホテルを出発、日系人と思しきパスの運転手兼ガイドによるホノルルの街の説明を聴きながら30分ほどでミズーリへ。バスの運転手によれば、年間170万人がパールハーバーを訪れるが、日本人は少ないのだという。ミズーリのガイドは3月まで東京の高校に通っていたという日系人の19歳の青年。船首近くの甲板で大まかな説明を受けた後、見学順路にしたがって進みました。最初は194592日に東京湾(ペリーが黒船を接岸したのと同じ場所だとのこと)上で、重光葵外務大臣が降伏文書に署名した場所に行きました。机のあった場所には円い金色の金属がはめ込んであり(グーグルの衛星写真で右舷三分の一あたりに円く写っています)、そばに降伏文書のレプリカなどが展示されていました。説明を聴き、レプリカを見ているうちに、当時の日本の過酷な運命と、日本人の苦難が胸に迫り、不覚にも涙を流してしまいました。家内にはどういた?と言われ、娘には大笑いされてしまいましたが。次に、ミズーリの右舷に突撃して死亡した岡山出身の19歳の青年にまつわるエピソードを聴き、わずかにへこんだ右舷甲板をみました。あとは船内に入り進みましたが、湾岸戦争のために改装されており、1940年代の面影は失われていました。帰り際、案内してくれた青年に「日本人としては、涙なくしては見られない」と感想を述べると、戸惑ったような表情をしていました。進駐軍という言葉が飛び交っていた1949年生まれの私の世代の感情は、若い世代には理解できないのだと思います。

一旦バスで橋を渡って戻り、フェリー乗り場に行き、資料館の説明をききました。日本語のガイドの機械の使い方に不慣れで、英語でしか聞けませんでしたが、説明は想像していたほど一方的なものではなく、ルーズベルトが石油を禁輸にしたため追い詰められたのが直接の原因であるといっているようでした。そして、フェリーで5分ほどの日本軍が撃沈したアリゾナの上の記念館に行きました。撃沈から72年たっていますが、アリゾナから出ているという重油がまだ少し漂っていました。しかし、すでに生々しさは消えていました。見学者はD社の社員旅行の一行が一緒だったため、日本人も15人ぐらいいましたが、多くは金髪の白人でした。しかし、日本人が冷たい視線を浴びるようなことはなく、皆淡々と見学していました。ミズーリが太平洋戦争(大東亜戦争)に参加した時には、米国にとって敵は日本でしたが、1950年の朝鮮戦争に参加したときには、米国の敵は北朝鮮、中国共産党の中国、ソ連であり、92年に参加した湾岸戦争では敵はイラクになっていました。日本にとって幸運だったのは、米国の主たる敵が敗戦後すぐに共産圏の中ソに変わってしまったため、日本は米国の同盟国になったことだったと思います。ソ連崩壊や9.11、中国の台頭で米国の敵はあいまいになりかけていますが、ヨーロッパ文明を背景にした米国の力はそう簡単には衰えないように思います。

歯科の分野でも、多くの治療法が米国で生まれたものであり、日本の貢献はその改良と洗練がほとんどです。もっとも米国の総義歯のテキストを見ると、例えば印象(型取り)では、1975年版のものが最新の2012年版よりも優れており、日本のテキストで見る印象のほうがはるかに上手です。自動車などとおなじく、日米逆転が起きている分野もありそうです。ただし、米国では、総義歯はインプラントの上に作製することが多くなっているようです。

13/06/03 月曜日 曇り

 昨日の朝、三宅裕司の番組で顎関節症を取り上げていました。出演は日大歯学部の本田和也教授。歯を離すことの重要性は医科歯科の木野先生と共通していますが、人生で一番楽しかったことを思い出すようにするという提案には感心しました。なるほどと思い、さっそく取り入れました。他にも、歯を離したままで咬筋をマッサージする方法と水を含む要領で頬を膨らませる運動を提唱していました。

13/05/22 水曜日 晴れ

 19日の日曜日は東京都国立市で開業されている下地勲先生の講演会。歯の挺出、再植、移植に伴う歯根膜と骨の再生がテーマでした。誠実で真面目なお人柄がにじみ出る症例のオンパレードで、副院長は「今まで聴いた講演の中で一番だ」と言っています。挺出、再植、移植は当院でもかなりの数行ってきましたが、平成18年の診療報酬改定で移植再植の適応症が制限されてからはずいぶん少なくなっていました。親知らずの移植以外は自費になってしまうため行っていません。今日注文していた下地先生の本が届いたのを読んで、移植再植をもう少し積極的に取り入れるようにしたいと思っています。

13/04/21 日曜日 晴れ

 診療所の前の植栽が生え茂るのでこれを抜いて桔梗やミニバラを植えました。ところが日頃の運動不足がたたり、ひどい筋肉痛になってしまいました。貼り薬を使っていましたが、よくならず、先週はじめにはとうとう夜中に痛みで目が覚めるようになり、朝は起き上がるのに苦労するようになってしまいました。右の背中の奥が強く痛むので、単なる筋肉痛ではないのかもと不安になり、以前からお世話になっている堀見先生に診ていただきました。検査の結果、胆のうや腎臓に異常はなく、筋肉痛だとわかりました。はり薬をはり、近くの鍼灸院で施術してもらったところ、今日はほとんど痛みがなくなりました。日頃、顎関節症の患者さんには上を向いて寝るように言っていたのですが、腰痛があると上向きで寝るのはきついことがわかりました。顎には横向き寝はよくないのですが、腰痛には横向きのほうが楽だと知りました。

 桔梗はまだ咲いていませんが、菫とミニバラは可憐な花をつけています。小さな花を見ると漱石の「すみれ程な 小さな人に 生まれたし」という句を思い出します。

13/04/12 金曜日 曇り 

 福田和也の『岸信介と未完の日本』が大変面白かったので関連で、太田尚樹『満州裏史』を読んでいます。子供のころ、伯母が満州で夫を亡くしたと聞かされており、生家の近くに墓があったのが、満州に関する唯一のリアルな記憶でした。満州の歴史については、中学生以下の知識しかありませんが、大変面白く読んでいます。いや、面白いというには、ちょっと躊躇する重たさがあります。ところで、「五族協和」「王道楽土」という満州国のうたい文句は、歯科医であった小沢開作の造語だという。奉天で親しくしていた板垣征四郎と石原莞爾から一字ずつもらったのが、長男で指揮者の小沢征爾だとのこと。その他にも、戦後重要な地位に就いた多くの人がでてきます。

13/03/10 日曜日 曇り一時小雨

 午前中は医療安全関係の講演会。2時からバッハ カンタータフェラインの演奏会に行く。今日の会の演目は教会音楽でした。信仰心の薄いというよりほとんどない私などは、心地よいBGMとしてバッハを聴いてきたが、バッハの本質はむしろ教会音楽にあり、西欧人(キリスト教徒)はまた違った感性でバッハを聴くのだろうと思いながら聴く。それでも音楽の力というのはすごいもので、出だしの器楽をきいたときからジーンとくるものがありました。一方たとえば『男はつらいよ1』の焼き鳥屋の場面でバックに流れていた演歌を耳にすると胸に何とも言えない懐かしさがこみあげてくる。所詮日本的情緒、日本庶民の感性にどっぷりとつかっているというのが本当の姿なのであろう。

13/03/06 水曜日 晴れ

先週スルメを噛んだあとで、なにか口の中に残ったので吐き出してみると歯のかけらでした。30年近く前、義妹に治療してもらった奥歯のインレーの周りの一部が破折したようでした。息子にコンポジットレジンを詰めてもらいましたが、かなり歯髄(神経)に近く、23日冷たいもの熱いものがしみていました。それも、月曜までには次第におさまってきていましたが、火曜日に懲りずにスルメを噛んだのがまずく、一種の咬合性外傷になったのか、風を吸っても凍みるようになってしまいました。咬合力によって歯が痛むことを、身を以て実証してしまいました。昔、神戸の学会に後輩のO先生と日帰りで行った夜、疲れたのか歯ぎしりをして小臼歯が虫歯じゃないだろうかと思うほど凍み、かつ噛んでも痛くなったことがありましたが、それ以来の体験です。歯ぎしり、硬いものを食べるなど、歯に強い力がかかるのは歯にはよくありませんね。紺屋の白袴、医者の不養生といわれても仕方ないことでした。

13/02/24 日曜日 晴れ

 高知大学医学部でインプラントの講演会。講師は広島大学の久保隆靖先生と衛生士、技工士さんのチーム。かねがね疑問に思っていた、上部構造の連結、咬合力の強いケースでのインプラントの適応、光機能化の評価、インプラント周囲の付着歯肉について質問し先生方に答えていただいた。また、ブローネマルクの教科書では、チタンのアレルギーは報告されていないと記載されているが、一例ほどアレルギーが原因で失敗したというお話が合った。使用しているインプラントの違いで臨床における問題点が異なることがよくわかり意義深い講演会であった。

12/12/26 水曜日 晴れ

 東京医科歯科大学の小林千尋先生の『クリニカル エンドドントロジー』をよむ。根管の中をよく洗うことが大切だと強調。一度高知にもおいでになったことがあり、講演を聴いたことがあるが、さらにパワーアップされている。さっそく根の先に詰めるプロルートMTAセメントを買おうとしたところ、1グラムで1万円以上もする。保険点数はなく、これだけで手術料13000円が飛んでしまうので注文を取りやめる。成分は建築用のセメントと同じだというがいったいどうしてそんなに高くなるのだろう。顕微鏡の導入も、こちらの記事をみて様子見することに。ニッケルチタンも一本2500円のものがすぐに駄目になるので、エンドの点数を考えて使うケース限定している。歯科の世界に入った時、同じようなもの(たとえばプライヤー)が市販のものの10倍はするので驚いたことがあるが、相変わらず高い。