原因不明の歯の痛み・舌痛症・咬み合わせの異常感

 更新歴2016/03/172016/09/13 

レントゲンなどでは異常の認められない原因不明の歯痛を非定型歯痛といいます。虫歯でもない歯が痛いのは、過剰な力のかかった場合(咬合性外傷)によく見られます。しかし、咬合性外傷の症状(かむと痛い、しみる)は、咬合調整でたちまち消えることがほとんどで、かみしめ癖の場合でも一週間程度で消えることがほとんどです。それでも痛みの取れないときは、特定の歯に過剰な力がかかることを防ぐ装置(ナイトガード、バイトプレート)を装着することでよくなります。

 一方、非定型歯痛はナイトガードでも効果はなく痛みが続きます。そのため神経を取る(歯髄炎と診断)→長期間の根の治療→抜歯(歯根破折と診断)という経過をたどることがすくなくないようです。さらに進むと抜歯窩の掻爬(骨髄炎と診断)→星状神経節ブロック(神経痛と診断)という風に経過していくこともあるといいます。

非定型歯痛を含む身体表現性障害は稀なものではなく、一般病院の受診者の20%(WHO)、口腔外科外来患者の9(井川ら)に見られたという報告があります。近年、非定型歯痛にはトリプタノールなどの三環系抗うつ剤やSSRISNRIの使用が推奨されています。ただし日本では、歯科医師がこれらの薬剤を処方することはできません。そのため、非定型歯痛ではないかと考えられる場合は心療内科や精神科にご紹介することになります。なお、歯の神経を取ってから歯の痛みが取れない場合については根の治療のページに記載してあります。

 

 

疼痛研究の世界では「組織の損傷がなくても痛みを感じる」ことが常識になっているといいます。日本歯科医師会雑誌20164、小見山 道 教授による

痛みには

@    侵害受容性疼痛:外傷、炎症、温熱などの刺激が末梢神経→三叉神経脊髄路核(手足や体幹の場合は脊髄)→視床→大脳と伝わることで痛みとして認知される疼痛。一般的

A    神経障害性疼痛:上記の刺激の経路のどこかで損傷、炎症、圧迫などにより活動電位や異常な興奮が生じて痛みとして認知される疼痛。したがって、過去において存在した損傷が、その後も見えない形で神経伝達系の問題として疼痛を発現し続けることで、そこに原因がないように思える痛みとなる。抜髄後の長引く痛みはその一つとされています。

 

また痛みを原因と生じる場所の関係によって次の2つに分類することもあります

@    原発痛:発生源と痛みを感じる部位が同じ場合:一般的

A    異所痛:疼痛発生源と痛みを感じる部位が異なる場合に分類され、異所痛はさらに

(1) 中枢痛:中枢神経系に組織損傷がある場合。脳卒中後痛など

(2) 投射痛:神経系の中枢寄りに原因があり、その神経の末梢に痛みを生じる。三叉神経痛、上顎洞性歯痛など

(3) 関連痛:疼痛の原因神経とは別の神経に痛みを生じる。筋・筋膜性歯痛、心臓性歯痛など

に分類されています。

 

 

※非定形歯痛は現在「持続性特発性顔面痛」と「外傷性有痛性三叉神経ニューロパチー」の二つを併せたものと考えられています。

※抜髄あるいは抜歯後の長引く痛みのうち神経障害性疼痛の特徴を有した場合「外傷性有痛性三叉神経ニューロパチー」と診断されます。治療は抗てんかん薬であるプレガバリン(リリカ)が使用されます。

※咬み合せの異常感は、口の中の違和感の中で最も難治だとされています(口腔顔面痛を治す、井川他)。重症の場合は徳島大学歯学部付属病院松香教授を紹介しています。

※舌の痛み、舌の違和感は歯科心身症の一つだと考えられてきました。現在では「心」の病ではなく「脳」の病であり脳内の電気信号の不調和、あるいは信号を伝達する化学物質の問題だとされています。

※若いときいわゆる頭痛もちであった人は三叉神経領域(歯、舌、歯茎など)の痛みが出やすいとの説があります。

参考

(1)『口腔顔面痛を治す』井川雅子、今井昇、山田和夫著 講談社健康ライブラリー(2009) 1400円。かみ合わせの異常感や原因不明の口腔領域の痛みでお悩みの方はご一読ください。

()『口腔顔面痛の診断と治療ガイドブック』第2 日本口腔顔面痛学会編、医歯薬出版 2016. 

ネット検索 https://www.jda.or.jp/park/trouble/index24.html お口病気治療

 

咬合性外傷と知覚過敏(虫歯はないのに歯が痛い) 2014/04/15更新 

虫歯でもないのに歯が痛い・冷たいものが凍みる原因は、歯に過剰な力がかかっている(咬合性外傷)ことがほとんどといって間違いありません。咬合性外傷とは、歯ぎしりや食いしばりで、歯に過剰な力がかかって歯と歯槽骨(歯の根が入っている骨)をつなぐ歯根膜が傷になっている状態です。歯髄(いわゆる神経)が壊死してしまうことさえありますが、そこまでひどくなることは極めてまれです。咬合性外傷の治療法には@かみ合わせの調整(咬合調整)A特定の歯に力のかかるのを防ぐバイトプレートの装着があります。歯軋りが原因のときは様子見することもあります。凍みていて咬んでも痛いというので、神経をとるのはオーバートリートメント(過剰診療)だと思います。図は『臨床咬合補綴治療の理論と実践』クインテッセンス出版より引用しました。

知覚過敏では、熱心に磨きすぎて歯茎が下がってしまい本来歯茎の中にあった根っこが口の中に露出して風がしみたり、ブラシの時にチクリと痛くなったりします。過剰なブラシで歯茎が下がる原因は、日本人の特に女性は歯茎の薄い方が多いこと、咬合性外傷で薄い歯槽骨が失われていることがあります。薬をぬることや知覚過敏をおさえる薬剤の入った歯磨剤で症状をおさえ、過剰な歯ブラシを控えること、咬合性外傷を除去する咬合調整をすることで落ち着くことがほとんどです。

なお、上の奥歯が痛い場合には、上顎洞炎になっていることがあります。鼻の調子が悪いときは、ほぼ間違いなく上顎洞炎です。かなりの頻度で、根の先の病気が原因で上顎洞炎になることがあり、歯性上顎洞炎と呼ばれます。この場合は歯科の治療が必要になってきます。

 

    

 

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