歯科領域における痛み  高知市青木歯科TOP    2024/0418更新

痛みの原因(細菌感染と過剰な力)

歯科領域における痛みは、多くの場合虫歯とその継発症(けいはつしょう)(歯髄炎、根尖性歯周炎 下図参照)です。むし歯がない場合、歯周病や歯の破折が原因になっていることもあります。いずれも細菌感染による炎症ですので抗菌剤や痛み止めが有効です。その他歯ぎしりなどで強い力が歯にかかった場合も歯が痛くなります。この場合は歯と骨をつなぐ組織(歯根膜)に外傷性の炎症が起きています。痛みはそれほど強くないのが特徴です。

上の奥歯や歯茎がいたいときには、上顎洞炎(蓄膿症)が原因になっていることがあります。上顎洞炎が起きているときの特徴は小鼻の横を押すと痛いことかかと落としなどで振動すると痛いことです。鼻詰まりがあれば上顎洞炎が起きているといって間違いないでしょう。上顎洞炎のなかには、歯が原因の上顎洞炎(歯性上顎洞炎)があります。上の奥歯の治療をしている場合で、風邪症状がない場合には歯性上顎洞炎が疑われます。

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歯科の痛みのほとんどは三叉神経の第2枝上顎神経と第3枝下顎神経を通じて脳に届いています。

下の歯の中には下顎神経(外から頬神経、下歯槽神経、舌神経に分かれているうちの下歯槽神経が入っています。

根管(歯の中の神経が入っている管)は複雑です。写真は大臼歯の根管の複雑さをしめしています。

歯科疾患以外の原因がある場合があります。

 

診断と治療(歯科で治せるのは感染と過剰な力が原因の場合です)

痛みの部位を間違いやすいのはいわゆる神経の痛み(歯髄炎)です。下顎の奥歯の歯髄炎で頭の横まで痛くなることもあります。下の歯の感覚を支配する下歯槽神経と耳の前から頭の横の感覚を支配する耳介側頭神経が奥で分岐しているため、痛みの信号が上下どちらからきているのかわからなくなるようです。

神経を取って一週間程度痛いことがあります、これは神経を取るというのは根の先端で神経を引きちぎることになり、切断面に一種の炎症が起きるためです。そのとき噛んでいたい場合は既に細菌が歯根膜に達していたと考えられます。

問題は神経を取ったのに一か月以上痛みが続く場合です。その中には根の先端近くに神経が残っている場合があり、それは麻酔をして神経を完全に取り除くことでよくなります。歯の中の神経は完全に取れているのに痛みが続く場合はいわゆる神経障害性疼痛になっていると考えられます。この場合は根管治療を繰り返しても痛みは無くならないので、疼痛専門医を紹介しています。

まとめ

むし歯とその継発症(歯髄炎:ジーンと痛いのが10秒以上続く、ずきずき痛い、眠れないほど痛い→根尖性歯周炎:噛むと痛い 腫れる→歯性感染症:骨膜炎、骨髄炎蜂窩織炎、歯性上顎洞炎など

@  歯に強い力がかかった場合(咬合性外傷、歯の破折からの歯髄炎、歯周組織炎など)

A  歯周病の急性発作、親知らず周囲の炎症

B  顎関節症に伴う顎の関節、筋肉、腱の痛み

C  原因不明の疼痛(非定型歯痛)日本いたみ財団HP

テキスト, 地図 が含まれている画像

自動的に生成された説明

むし歯→歯髄炎(いわゆる神経の炎症)→根の先の骨にできる病変と細菌が侵入してゆきます。

銀歯で治療してありましたが、もともと歯髄に近い大きな虫歯があったようです.神経が壊死しそれが上顎洞炎の原因になっていました。

根の先の病気が大きな神経まで達して頤部に違和感が出ていました。強い痛みがありました。

下顎の奥歯の虫歯から重篤な化膿性炎症が顎の下や頸部に広がることがあります。体温の上昇を伴えば入院加療の必要もあります。

 

 

咬合性外傷と知覚過敏(虫歯はないのに歯が痛い) 2019/12/4更新 

虫歯でもないのに歯が痛い・冷たいものが凍みる原因は、歯に過剰な力がかかっている(咬合性外傷)ことがよくあります。咬合性外傷とは、歯ぎしりや食いしばりで、歯に過剰な力がかかって歯と歯槽骨(歯の根が入っている骨)をつなぐ歯根膜が傷になっている状態です。歯髄(いわゆる神経)が壊死してしまうことさえありますが、そこまでひどくなることは極めてまれです。咬合性外傷の治療法には@かみ合わせの調整(咬合調整)A特定の歯に力のかかるのを防ぐバイトプレートの装着があります。歯軋りが原因のときは様子見することもあります。凍みていて咬んでも痛いというので、神経をとるのはオーバートリートメント(過剰診療)だと思います。鑑別診断が必要なのは、歯の破折と歯髄炎・歯髄壊死です。強い力がかかるため歯にひびが入っている場合があります。また、むし歯の治療の既往がある場合は気づかないうちに歯髄の炎症や壊死が起きていることがあります。

知覚過敏では、熱心に磨きすぎて歯茎が下がってしまい本来歯茎の中にあった根っこが口の中に露出して風がしみたり、ブラシの時にチクリと痛くなったりします。過剰なブラシで歯茎が下がる原因は、日本人の特に女性は歯茎の薄い方が多いこと、咬合性外傷で薄い歯槽骨が失われていることがあります。薬をぬることやシュミテクトなどの知覚過敏をおさえる薬剤の入った歯磨剤で症状をおさえ、過剰な歯ブラシを控えること、咬合性外傷を除去する咬合調整をすることで落ち着くことがほとんどです。

なお、上の奥歯が痛い場合には、上顎洞炎になっていることがあります。鼻の調子が悪いときは、ほぼ間違いなく上顎洞炎です。かなりの頻度で、根の先の病気が原因で上顎洞炎になることがあり、歯性上顎洞炎と呼ばれます。この場合は歯科の治療が必要になってきます。

 

 

原因不明の歯痛

レントゲンなどでは異常の認められない原因不明の歯痛を非定型歯痛といいます。虫歯でもない歯が痛いのは、過剰な力のかかった場合(咬合性外傷)によく見られます。しかし、咬合性外傷の症状(かむと痛い、しみる)は、咬合調整でたちまち消えることがほとんどで、かみしめ癖の場合でも一週間程度で消えることがほとんどです。それでも痛みの取れないときは、特定の歯に過剰な力がかかることを防ぐ装置(ナイトガード、バイトプレート)を装着することでよくなります。

 一方、非定型歯痛はナイトガードでも効果はなく痛みが続きます。そのため神経を取る(歯髄炎と診断)→長期間の根の治療→抜歯(歯根破折と診断)という経過をたどることがすくなくないようです。さらに進むと抜歯窩の掻爬(骨髄炎と診断)→星状神経節ブロック(神経痛と診断)という風に経過していくこともあるといいます。

非定型歯痛を含む身体表現性障害は稀なものではなく、一般病院の受診者の20%(WHO)、口腔外科外来患者の9(井川ら)に見られたという報告があります。近年、非定型歯痛にはトリプタノールなどの三環系抗うつ剤やSSRISNRIの使用が推奨されています。ただし日本では、歯科医師がこれらの薬剤を処方することはできません。そのため、非定型歯痛ではないかと考えられる場合は疼痛専門医にご紹介することになります。

非定形歯痛には筋筋膜痛、神経障害性疼痛(帯状疱疹の後遺症、歯髄炎の後遺症を含む)、心臓病の関連痛などがあります。

抜髄あるいは抜歯後の長引く痛みのうち神経障害性疼痛の特徴を有した場合「外傷性有痛性三叉神経ニューロパチー」と診断されます。治療はリリカが使用されます。

※咬み合せの異常感は、口の中の違和感の中で最も難治だとされています(口腔顔面痛を治す、井川他)

※舌の痛み、舌の違和感は歯科心身症の一つだと考えられてきました。現在では「心」の病ではなく「脳」の病であり脳内の電気信号の不調和、あるいは信号を伝達する化学物質の問題だとされています。

参考

(1)『口腔顔面痛を治す』井川雅子、今井昇、山田和夫著 講談社健康ライブラリー(2009) 1400円。かみ合わせの異常感や原因不明の口腔領域の痛みでお悩みの方はご一読ください。

()『口腔顔面痛の診断と治療ガイドブック』第2 日本口腔顔面痛学会編、医歯薬出版 2016. 

()原因不明の歯痛の原因(非歯原性歯痛) 日本口腔顔面痛学会のHP

    

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