全身疾患と歯科治療
(1)心臓病の心機能分類と歯科治療 心不全の機能分類にNYHA分類(ニハ分類またはナイハ分類と発音)があります。 NYHAT度 心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの)。通常の歯科治療ができます。 NYHAU度 安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発現するもの。 歯科治療は短時間で終わらせる必要があります。 NYHAV度 300メートルも歩けない。2階に上がることもできない。歯科治療は応急処置に限る。 NYHAW度 安静にしていないと上記の症状がおきる。歯科治療は禁忌。 NYHAU度以上になると麻酔の必要な抜歯などの外科手術は病院歯科(高知大医学部付属病院、医療センター口腔外科)を受診されるとよいと思います。麻酔の必要のない治療は一般の歯科で治療可能です。 (2)狭心症、心筋梗塞と歯科治療 常用薬はいつもどおり服用してください。なお、心筋梗塞の発作があった後6ヶ月は歯科治療は応急処置にかぎるとされています。麻酔を必要とするときはエピネフリンを含まないシタネストオクタプレシンを使用します。 (3)高血圧 安静時の血圧が160/95mmHg以下なら通常の歯科治療を行うことができます。 歯科を受診をする場合、血圧をコントロールする薬の服用を忘れないことが大切です。 (4)デンタルショック 麻酔注射で気分が悪くなったことのある方の6割がデンタルショック(極度の緊張や麻酔注射の痛みが原因)です。表面麻酔を使うなどで痛くない麻酔をすることで防ぐことができます。 (5)過換気症候群 緊張で呼吸が速くなると、血液中の二酸化炭素が減少し、呼吸が苦しくなります。息ができなくなる恐怖感や手足のしびれが特徴です。ゆっくりと呼吸することで防ぐことができます。 (6)アレルギー、喘息 服用中の抗アレルギー薬と相互作用のある抗菌剤があります。現在服用中のお薬をお知らせください。 一番怖いアナフィラキシーショックは、麻酔薬で起きることはほとんどありません。まれに鎮痛剤や抗生剤が原因になることがあるようです。 アナフィラキシーショック:そばなどの食物、蜂刺されなどでも起きる急性のアレルギー。 (7)抗凝固剤療法を受けている場合 プロトロンビンテストが30%以下であると止血処置が困難になります。抜歯などの外科処置を行うときは主治医に照会することもあります。 (8)糖尿病 常用薬はいつもどおり服用し、食事も通常通りにとることで低血糖ショックが防止できます。感染に対する抵抗性が落ちますので、歯科の観点からは口腔清掃がきわめて大切になります。 (9)甲状腺機能亢進症 甲状腺クリーゼの予防のために、常用薬はいつもどおり服用してください。 (10)ステロイドを服用中 副腎クリーゼの予防のため、常用薬はいつもどおり服用してください。 |